逃避行 三月なのに雪が降るとは、これいかに。
朝起きて、妙に外が静かな気がして、スマホで天気予報を開く。午前中いっぱい、雪の予報だった。薄い布一枚着込んだだけの上半身が外気に晒されて寒く、またのそのそと布団の中に戻る。
隣に寝転ぶ大きな図体に額を寄せた。彼は体温が低いけれど、寝ていると流石にあたたかい。腹の方に腕を回してみようか考えているうちに、大きな身体はごそりと寝返りを打ち、こちら側を向いた。見上げると、眠たそうな眼が僕を見つめている。
「おはようございますー」
「随分早起きだな」
「寒くて起きちゃってー。雪らしいですよー」
「ああ、なにか外が眩しいと思った」
この家のカーテンは陽をよく通す。寝つきが悪いのなら遮光カーテンにしたらどうだと言ったことがあるけれど、朝日を浴びたいのだ、明るい部屋の方がいい、と言われてしまっては返す言葉もない。キングサイズのベッドの上で、僕らは甘いまどろみを楽しむ。
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