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    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    漣タケ/ワードパレットお題:頬にキス・髪を撫でる・空き缶

    #漣タケ

    空き缶 ふと、夜中に目が覚めた。覚めたというより、いったん睡魔に身を任せて、それが過ぎ去っただけにすぎない感覚。
     射精後というのはどうにも眠くなる。全身から欲求が抜けた途端、泥に片足を突っ込めば最後、あっというまに引っぱりこまれてしまう。がくん、と沈んでいくのは一瞬だ。自分が息をしているのすら不思議なくらいの気絶。これだけはどうにも抗えない。
     自分と世界の境目がゆっくりとはっきりしていき、輪郭を帯びていく。暗闇の中でも目は冴え冴えとして、このまま電気を付けずとも歩き回れそうだ。
     隣ですうすうと寝息を立てているチビをちらりと見たのち、起き上がる。うすらかいた汗に、喉の渇きを覚えた。飲み物が何かしらあるはずだ。起こさないようそろそろと歩く。全身を気怠さが包んでいた。冷蔵庫の前で、大きく伸びをする。
     襲うように押し倒すたび、チビは一度は抵抗する。やられっぱなしが嫌なのか、もっとゆるやかに甘く囁かれたいのかはわからない。本気で嫌がっている時はさすがにわかるためそのまま続けると、チビはある一瞬を境に抵抗を断念する。その瞬間のために息継ぎを忘れることがある。支配する至福の瞬間。チビと交わるのは好きだ。
     冷蔵庫の中に、缶のスポーツ飲料水があるのが目に入った。駅前で、何かのキャンペーンだと言って配っていたやつだ。その時は別のペットボトルが飲みかけだったので、飲まずにカバンに入れっぱなしだったのを、チビが見つけて仕舞っていたらしい。ちょうどいい、これにしよう。
     カシュ、とプルタブを開ける音が響く。爽やかな甘い香りを吸い込み、誘われるように口をつけた。身体が求めていた潤い。ごくごくと喉を鳴らして飲んでいたら、ごそ、とチビが寝返りをうった。
    「……あれ、どこ……」
    「こっち」
     オレ様を探して手をウロウロさせているチビに声をかけ、残りを一気に飲み干す。生き返る心地とはこのことだ。
    「……おれも、のむ」
     よたよたとこちらに歩いてくるチビを抱きとめるために、空になった缶を握りつぶした。シンクに放り投げ、チビに腕を伸ばす。
    「んー」
    「麦茶か水か」
    「麦茶」
     眠気眼のままコップを受け取ったチビは小さな口でちまちまと麦茶を飲む。まだ覚醒に至っていないのだろう。いつも気を張って凛としている、いわゆる「しっかり者」の風格が今だけはちっともない。コイツのこんな気の抜けた姿を見られるのはオレ様だけだ。
    「身体ダイジョブかよ」
    「んん……」
     まあ、気怠いわな。腰を摩る手を取り、もう一度布団の中に誘うべく歩き出した。起きるにはまだ早すぎる。世界もどっぷりと寝ている。
    「漣」
    「……んだよ」
    「なんでもない。呼んだだけだ」
     チビは布団にもぐる前、そっとオレ様の頬に唇を寄せた。それは親しみを込めた友愛のキスのようで、ペットの犬のようでもあって。決して二回戦がしたいわけではないのはわかったが、満足げに微笑む様子に心臓が跳ねた。さっき、さんざん搔き乱したくせに。
    「おやすみ」
    「ああ」
     きっと、起きたら今のことは忘れてるんだろうな。いい気なもんだ、まあ人のことは言えないけれど。うつらうつらしてるチビの髪を撫でた。なんとなく、今この瞬間が愛おしかった。
    「……オマエの手、好きだ」
    「……そーかよ」
     暗闇の中で、しばらくそうしていた。この時間を慈しむことが、睡眠と同等の価値に思えた。指の間で柔らかな髪の毛を遊んだ。毛先が少し跳ねる、チビの癖毛。梳いても梳いても流れの変わらない髪を飽きるまで撫でまわし、チビの寝息が聞こえた頃、オレ様も眠りについた。
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    DOODLE雨想♀。一人称は僕。2人で温泉に行く話
    小春日和 しなびた胸だなあ、と思ってしまった。
     僕の行く末かもしれないのに、他人にそんなこと思ってしまうのは失礼だ、そんなことはわかっている。だけど、自分の若々しい張りのある肌が、いずれああなると思うと、どうしても途方もない時間が心を通り過ぎていく気がするのだ。
     雨彦さんと温泉に来たのは、別に商店街の福引があたったわけでも、プロデューサーの提案でもない。僕から言い出したことだった。電車で一時間くらいのところにスパ施設があるので、平日の昼間ならと誘ってみたら、意外にも彼はくいついてきた。メインイベントの風呂自体は別行動になるにも関わらず、二人でのそのそと出かけることとなった。
     のそのそと言うと亀のような、巣籠の熊のようなイメージがあるけれど、実際そんな感じだったので、言い得て妙かもしれない。乗り換えの駅で買い食いをしてみたり、あえて各停に乗ってみたり、僕たちはとにかく、のそのそと言うほかないほどのんびりと目的地に向かった。いつもは雨彦さんかクリスさん、プロデューサーの車に乗っての移動が多いから、こうして電車でゆっくり移動すること自体が久しぶり。僕は大好きな一人旅の時と同じような心地よい高揚感に包まれていた。
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