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    かわな

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    かわな

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    運命後によりを戻すディアミリ。ご都合主義

    #ディアミリ
    ##ディアミリ

    運命後によりを戻すディアミリ帰還信号が打ちあがった。
    いくつもの眩い光を、美しいと思うよりも安堵を覚えるようになったのはいつのころだっただろう。家に帰り着いたあと、部屋の電気を点けたときに感じる、ほっと息を吐きたくなるような心地。体中に張り巡った緊張が一気にほどけて、大事なものがいくつもいくつも頭の中を駆け巡っていく。死ぬ間際に走馬灯というのをみるというけれど、大切なものを思い出すのはいつも戦闘が終わってからだ。会いたいという気持ちが際限なく膨らんでいく。
    赤いパイロットスーツに身を包んでいたころは、戦闘が終わることに対して一種の不快な感情を心に抱いていた。
    もっとやれる。
    追撃をすれば、相手を追い詰めることができる。
    と、そんなことをよく考えていた。それはまだ現実を現実として見ていなかったからに違いなかったけれど、それなりに成長した今でもまだモビルスーツに乗っている。それは、自分にはまだこれに乗って出来ることがあると思ったからだ。
    宇宙に光がともっては消えていくのを眺めていると、ますます「会いたい」という気持ちが増してくる。会いたい人物はいつも一緒で、思い浮かべる表情はだいたい決まってつんとした怒り顔だ。それでも会いたくなるのだから、自分の気持ちもよっぽどのものだと思う。
    乗っている機体が降下に耐えられるのなら、今すぐ地球に降りてしまいそうだなと大真面目に考えていたとき、ザザッとノイズがコックピット内に響いた。通信ボタンを押すと、聞きなれた声がはっきりとした口調で告げる。
    「ディアッカ、ボルテールはお前に任せる」
    親友兼、隊長であるイザーク・ジュールだった。
    彼が戦闘の真っただ中に「あれはザフトの艦だ!」と上手にへりくつをこねて少数の兵とともにエターナルへと向かっていったのは、ザフトの行おうとしていること、いやギルバート・デュランダル議長の行いを正しいと思えなくなったときだった。だれが乗っているかなんて疑うことなく進んでいく親友を好ましく思いながら送り出したのは自分だったし、自艦であるボルテールを任せられるのが自分の役目だとも分かりきっていた。
    「オーケー。なにかあったら連絡してくれ」
    ボルテールからも帰還信号が放たれていた。ディアッカ・エルスマンは軽い口調で、くるっと宙を旋回しながら答える。眼前に映る自分の国であるプラントも、今一番会いたい彼女のいるであろう地球も無事だったことがなによりうれしかった。
    「いいか! くれぐれもムチャはするなよ。馬鹿なやつはいつでもいるんだからな!」
    「それをお前が言うのかよ!?」
    「うるさいっ! とにかく油断はするな。命令だからな」
    「はいはい、了解しましたぁ! 隊長どのぉ」
    「お前は本当にこんなときばかりっ!」
    プツッと通信が途切れる。くくっとかみ殺しきれなかった笑いがもれた。
    ザフトに役職がないとはいえ、艦内において二人はしっかりと隊長と隊長補佐だ。それでもこのやり取りが容認されているのは、先の大戦において二人が英雄であったのと同時に、正しいことは正しいと言うし、間違っていることには疑問を呈する関係であることが周知されているからだ。
    らしいというか、らしすぎるというのか。まだ停戦したばっかなんだけどな。
    口元に笑みを浮かべながらディアッカもボルテールに帰還する旨を告げた。短い了解のあと、出撃していたモビルスーツや戦闘機たちがそれぞれの艦に吸い込まれていくのを横目で見つつ、しっかりと操縦桿を握る。
    ザフトも連合も関係なく、それぞれが帰りたかった場所へと戻っていくことは悪い気持ちではない。それは先の大戦でバスターガンダムに搭乗していたディアッカにも言えることだった。あのときは被弾してしまったけれど、アークエンジェルに戻ったとき、彼女の声をまた聞くことができて心底安堵したものだ。
    「そういや、あいつら無事だよな?」
    気にはかけていたものの堂々と援護に向かうことはできなかった、かつて戦争をともにした戦闘艦アークエンジェルを探すと、宇宙のまばたきの中にその艦はしっかりとした佇まいで泳いでいた。そこに、見慣れない金色の機体が戻っていく。カタパルトが開き、慣れた様子で戻っていく機体にはだれが乗っているのだろう。そして、あそこに自分の知っているものはどのくらいいるのだろう。
    「あいつ、いないよなぁ……?」
    停戦を迎えたからか、まさかと思うような考えが頭をよぎる。
    今現在の優先順位を間違えるつもりはないけれど、心のど真ん中に居座っている彼女の存在は一秒ごとに積み重なっていて、あらゆるものに面影を見つけてしまう。かつて、アークエンジェルには彼女がいて、泣き虫なくせに大切なものを守ろうと戦っていた。
    会いたい。
    会いに行きたい。
    瞬きを、呼吸をするたびに気持ちは大きくなっていく。相手といえば、一年近く前にケンカしたきり会っていないし、連絡にも出やしないのに。
    「……あー、クソッ」
    頭を掻きむしろうとしてヘルメットをつけていたことを思い出し、自分に呆れる。アークエンジェルを見つめる自分に、数年前の自分の姿が重なった。はぁー、と吐いた息に諦めの悪さが滲んで、格好悪いなと考える。こんなに必死になって馬鹿みたいだと思うのに、必死にならなかったらもっと馬鹿だ。
    「さっさとやることやって、会いに行くか」
    深呼吸をして、首を鳴らす。いくぶん、頭はスッキリとしていた。
    ――あんただって軍人じゃない!
    通話のモニター越しに言われた彼女の最後の言葉を思い出しながら、視線をボルテールに向け、機体を進める。アークエンジェルが遠ざかっていく。けれど今、ディアッカが帰る場所はボルテールなのだ。
    お互いが出来ることをする。
    そうやって彼女とは繋がっていると信じているから、ディアッカは今でもモビルスーツに乗っている。



    「お久しぶりね。本当は、あなたの近況を聞きたいところなんだけど」
    オーブの軍服に身を包み、穏やかな声でマリュー・ラミアスは言った。声に似合った柔らかな表情は、先の大戦に比べてずいぶんと余裕と貫禄があるように感じる。オーブに亡命し、モルゲンレーテで働いていると聞いていたが、やはりというか当然と言っていいものか、二年前と変わらず、アークエンジェルの艦長席に座っているのは彼女だったらしい。
    視線で確認すると、オペレーター席にはだれもいないようだったが、操舵席、管制席に座っているのは見慣れ過ぎた人たちだった。しかし、なにより驚いたのはマリューの隣に立っているムウ・ラ・フラガの存在だ。彼は、先の大戦で戦死したのではなかったか。それを自分も見たのではなかったか? 目を丸くして彼にくぎ付けになっていると、アークエンジェル内の空気が和やかなものに変わる。それを複雑な気持ちに感じてしまったことを、ひどく申し訳ないと思った。
    「いや、こっちも聞きたいのはやまやまだし」
    ディアッカはそういった気持ちを悟られないよう、肩をすくめながら答える。あえて気軽な言い方をしてしまったが、彼女は気にしていないようだった。言葉の端々にねぎらいの色を感じる。
    「これからが、また大変ですものね」
    「まあね。それで、エターナルからこっちにも連絡はあったんだけどよ、そっちの一人をプラント本国に連れていくってことでいいわけ?」
    「ええ。一時的な措置になるはずだから、そう長くも時間は取れないと思うわ」
    はあ? なんだよ、それ。ディアッカは内心で顔をしかめた。
    ――一次的な措置。そう長くも時間は取れない。
    イザークから聞いていた指令ととくに齟齬は感じないのに、この奇妙に嚙み合わない会話はなんなのだろう。
    目的と意図することは聞いているし、納得している。ただ、それらが今必要なのかと言われると分からない。停戦したとはいえ、戦争をしていた国に中立国の軍人が出向するなんてことは今必要なのだろうか。ザフトからも一人、ミネルバ所属のメイリン・ホークがオーブに出向すると聞いているが、なぜ彼女が選出されたのかも不明だ。理由は定かではないが、まるで時間稼ぎをしているみたいに感じる。
    「どうせなら、俺が行っても良かったんだけどなぁー!」
    イザークが聞いたら怒り狂いそうな言葉を冗談めかして言った。もちろん、まごうことなき本音だ。プラントと地球、オーブがこれからどういった関係になるのかは正直なところ分からないし、いつ行き来が復興するかも不確かだ。ならば、自分が任務で地球に降りたほうがぐっと心の内を占めている彼女と会うチャンスが巡ってきそうだ。それに、一度ゆっくりと彼女の国を見て回りたいとずっと思っていた。
    「それは止めといたほうがいいと思うぜ?」
    ちょっとした淡い夢を、それまで黙ってやりとりを聞いていたムウが笑い混じりに遮った。隣に座っているマリューでさえ「そうねえ」と笑みを浮かべ、同意を示すように周りを見渡す。なんだか誑かされているような気分だ。
    「なんか知ってんのかよ?」
    モニターにむかって眉をひそめると、答える気はないとばかりにムウはニヤついた表情を隠しもしない。
    「まあまあ、あと十分ほどでそっちにアークエンジェルも並ぶんだし、そうしたら分かんだろ。迎えにはお前が出るんだよな?」
    「はぁ? いや、俺はここ離れらんねーんだけど? そもそも、そっちがMSでもMAでも使ってこっちに連れてくりゃいい話だしよ」
    「そう言いなさんなって。こっちは人手不足でさ。アカツキも整備中だし、俺しか戦闘員いないから離れられねーんだわ。な、分かるだろ?」
    こっちにいたんだからさ、と言外に言われているような心地だった。たくよぉ、と零したくなる気持ちを飲み込んで、肩を落とすだけで勘弁しておく。
    「……はぁ。あいかわらずだな、そっちは」
    ディアッカがアークエンジェルにいたときもそうだった。整備班はそれなりに数がいたと記憶しているが、ブリッジにいるのは最低限だったし、エターナルがフリーダムとジャスティスの専用艦というのもあって、戦闘員に至ってはディアッカとムウの二人だけだった。少数精鋭といえば聞こえはいいが、あきらかな人手不足だ。
    「そっちの人達は良いって顔してるぜ?」
    ムウがあごをしゃくる。視線の先を追いかけ振り返ると、たしかに見ようによっては「良い」という表情に見えなくもなかった。けれど、今のやりとりをみて、むしろ拒否の顔ができるのだろうか。どうみたって、向こうの勢いに気おされているようにしか見えない。
    首を振る。今日、何度目かのため息を吐いた。モニター越しに、「あんまり言ってはだめよ」と彼をたしなめる声が聞こえる。そうだ、もっと言ってやれ!
    「これよりボルテールはアークエンジェルとのランデブーを開始する。俺の機体は出せるか?」
    「はい! ザクウォーリアなら、すぐに出せます!」
    MS管制の元気のいい声が聞こえた。停戦したからだろうか。心なし艦の雰囲気も柔らかく穏やかだった。相手はオーブ軍所属のアークエンジェルだというのに、ぞんがい悪くない空気を感じ、今までやってきたこと、わずかながらに積み重ねてきたものが無くなってしまうわけじゃと安堵した。
    「サンキュ。さっそく準備してくれ」
    MS管制の女性にはウインクを、そしてモニターの向こうに適当な敬礼をして通信を切る。アークエンジェルのオペレーター席にだれも戻ってこなかったのが最後まで気にかかっていた。いなければそれでいい。むしろ、いなくていいのだ。ぽっかりと空いた席を何度も見てしまったことが、向こうに気づかれていなければいいなと思う。
    「少しのあいだ頼んだぜ」
    艦の乗組員のきちんとした敬礼が後押しされ、ディアッカはMS格納庫へと向かうために床を蹴った。扉が閉まったあと、やっかいなもん引き受けちまったぜ、と盛大にため息を吐いた。

    ランデブーとは、宇宙空間において二機以上の宇宙船などが速度を合わせ、同一の軌道を飛行して互いに接近することだ。互いの艦がドッキングし、資材や人材を移動させる。昔は頻繁に行われた動作だったが、MS、MAが発展してからは艦同士の移動や宇宙での艦外活動でこれらを使うことが多くなり、自然となくなっていったと記憶している。
    「それにしても、ここでそのまま射出なんて信じらんねえ」
    ディアッカは軍服のまま専用のザクウォーリアに搭乗すると、起動シーケンスを開始したモニターを見ながらぼやいた。外から、「その格好で行くんですか?」と声を掛けられ、短く肯定の返事をする。パイロットスーツを着ておけばアークエンジェルから射出される人間をコックピットに迎えることもでるが、パイロットスーツを着ているとはいえ生身のまま宇宙に飛び出すような無謀な人間はそのまま手にでも乗せて運ぶ方が早いと判断したからだ。
    通信機からアークエンジェルとランデブーを開始したことが告げられた。整備班たちがMS発進時の定位置に散っていく。数秒後、管制の合図とともにカタパルトが開き、機体のモニターに広々とした宇宙が広がった。
    一応、規則ではあるので名乗りを上げた。
    「ディアッカ・エルスマン。発進する」
    信号がともる。ぐっと推進力がかかり、体に押さえつけられるような負荷がかかる。それも慣れたもので、宇宙に出てしまえばMSは自分の手足のように簡単に動かせるから不安なんてない。それは積み重ねた経験があるから言えることだ。だからこそ、数百メートル、すぐに回収されるとはいえ、生身で射出を希望した人間が信じられなかった。
    「アークエンジェル。いつでもいいぜ」
    オープン回線を使い、アークエンジェルへと呼び掛ける。ダリダ・ローラハ・チャンドラⅡ世が「ああ、エルスマン。うまくやれよ」と返事をよこした。うまくやるもなにも、そっちが無茶なことさせるんじゃねーよ! と言いたい気分だった。
    互いの操舵手が優秀なのか、ボルテールとアークエンジェルはぴったりと並んで進んでいる。両翼のあいだはわずかにしか隙間はなく、互いが少しでも進路がずれてしまえば接触してしまいそうな距離を位置取り、ディアッカはアークエンジェルの射出機に目を向ける。
    しばらくして、一人の小さな人間がポポポポポンと音を立てながら勢いよく飛び出してきた。
    「うそだろ!? なんだよあの飛び方はっ!」
    慣れていないのか、それとも単純にへたくそなのか。
    判断はつかないけれど、飛び出してきた人間は左右にぶれながらディアッカを目指して進んでいるようだった。チッと舌打ちをして、どうやって回収するかを即座に考える。変に動いて機体にぶつかったら大怪我じゃ済みそうにない。
    「ほんとう、どうかしてるっつーの!」
    機体を慎重に動かしなるべく着陸面を広くとって構える。
    ここに降りてこい!
    ディアッカの考えが通じたのか、わずかに軌道が下がっていく。まじでなんなんだよ! 内心ごちりながら、飛んでくる命知らずの顔を一目見ようと照準をあわせたそのとき、呼吸をするのを忘れてしまった。
    「ミリアリア」
    無意識に呟いた名前がコックピット内に響く。モニターをさらに近づけると、艦の装甲を弾いて表情は見えなかったものの、ヘルメットの下にずっと会いたかった顔が映っていた。
    どうして俺はパイロットスーツを着てこなかったんだとか、どうしてこんな無茶なことをするんだとか、そもそもなんでこんなところにいるんだよ、だとか。言いたいことはたくさんあったし、言わなければならないこともたくさんあって、さっそく後悔もしていたけれど、全部飲み込んだ。すべてささいなことだと思えてしまった。
    「おまえ、ほんっとう危なっかしいよなぁ」
    ふらつきながらも進んでくる彼女に聞こえるよう、音声を外に放つ。
    呆れと歓喜の滲んだ笑い混じりの声に手を引かれるように、広げた手のひらに小さなミリアリアが降り立った。両手を回したところでMSの親指を抱きしめることさえできないのに、彼女の声はあいかわらず強気で口元が緩んでしまう。
    「おまえって、言わないで!」
    「はいはい、すみません。あなた様」
    久しぶりの彼女は、いつも思い浮かべるつんとした表情をしていた。


    つづく
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