アディリムでお化け屋敷(現パロ)お化け屋敷
夏祭りの夜も更け、ふたりは出店の賑わいから少し離れた場所に立っていた。目の前には、赤い提灯がぼんやりと照らし出す、古びたお化け屋敷が静かにそびえ立っている。
「お化け屋敷か…」
アディオは少し困ったように眉をひそめたが、その表情はどこか楽しげだ。
「アディオ、行きましょうよ!怖いの平気でしょ?」
リムは少し興奮気味にアディオを見上げている。
「ま、別に怖いってわけじゃねぇが…」
アディオは苦笑しながらリムの手を取る。「本当に入りたいのか?中は真っ暗だぜ」
「もちろんよ!こういうの、一度は経験してみたかったの」
リムはアディオの手をしっかり握り返す。その手は少しだけ汗ばんでいたが、リムの顔は期待に満ちていた。
アディオはリムのその様子に微笑みを浮かべると、入り口の重たい布を持ち上げた。「じゃあ、行くか。何が出てきても驚くなよ?」
「ふふん、私を誰だと思ってるの?絶対に驚かないわ!」
ふたりは暗闇の中に足を踏み入れる。お化け屋敷の中は、外とは違いひんやりとした空気が漂っていた。古びた床が軋む音が、耳に不気味に響く。
「リム、手、離すなよ」
アディオはリムの小さな手をしっかりと握り、彼女を守るように歩を進める。リムは前を見据え、少し緊張しながらも勇敢な顔をしていた。
突然、何かがガタガタと動く音が響き、壁の隙間からひょっこりと白い顔が飛び出してきた。
「ひゃっ!」
リムは思わず声を上げたが、すぐに口を押さえ、無理に笑顔を作った。「び、びっくりしただけよ!」
アディオは少しだけ笑みを浮かべ、リムの肩を軽く叩く。「リム、怖ければ帰ってもいいんだぞ」
「だ、だめよ!もう少しだけ進みましょう。次は絶対に驚かないわ」
リムは気を取り直し、アディオの手をさらに強く握る。そして、二人は再び奥へと進んでいく。
今度は、真っ暗な廊下にかすかな風が吹き抜け、どこからか低いうめき声が聞こえてきた。リムは少し怯えた様子で、アディオに寄り添うように歩いている。
「アディオ…なんだか、さっきから誰かが見てる気がするわ…」
リムの声は小さく震えている。
「気のせいだろう。お前が気にしてるから、そう感じるだけだ」
アディオはそう言って、リムの肩を優しく抱き寄せた。
しかし、次の瞬間、突然真横から骸骨が飛び出してきた。
「きゃああっ!」
リムはついに耐えきれず、アディオの胸に飛び込んだ。アディオはしっかりとリムを抱きしめながら、笑いを堪えるようにして言う。
「大丈夫だ。ほら、これもただの作り物だぜ」
リムは顔を上げて骸骨を見つめると、少し落ち着きを取り戻して小さくうなずいた。「ごめんなさい…驚いちゃったわ…」
「無理すんなよ。帰るか?」
アディオはリムの髪を優しく撫でた。
リムは少し考えたが、すぐに首を振った。「ううん、大丈夫。アディオが一緒だから、もう少し頑張れるわ」
アディオは少し感心したようにリムを見つめ、再び歩を進める。やがて、二人はお化け屋敷の出口にたどり着いた。外の明るさに一瞬目を細めながら、リムは大きく息を吐いた。
「やっぱり、ちょっと怖かったけど…楽しかったわ」
アディオは軽く笑いながらリムの肩を抱いて歩き出す。「それなら良かった。ま、次はもう少し明るい所に行くか」
「そうね。でも、アディオが一緒ならどこでも平気よ!」
リムの言葉に、アディオは少し照れくさそうに微笑んだ。