ポロアディ(雰囲気)で見張りと眠気夜が更け、冬島付近の海上の風が冷たく肌を撫でる頃、アディオは一人、見張り台に立っていた。いつもならこの静かな時間を愛し、風に身を任せるのが好きだったが、今夜は違った。まぶたが重く、眠気が全身に広がっていく。前日の戦闘が朝まで続いてしまったせいか眠くて仕方ないのだ。

「……ん…、くそ…眠い……」

息も白く凍るような寒空の下、アディオは目をこすりながら、月明かりに照らされる遠くの海を見つめた、薄くモヤがかかったようにぼんやりとしとしており、眠気で視力も低下しているようだった。ポロロッカが交代を申し出てくれたが、彼に負担を掛けたくなかった、問題ないと断った、が…、アディオは目を閉じるたびに、意識がどんどん引きずり込まれそうになる。何度か船が揺れるたびに、ふらりと身体が揺れたが、彼はなんとか踏ん張った。

「しっかりしろ、おれ…！…眠くない…眠く…ない…ね…む…」

口元でつぶやいてみるが、効果は薄い。考え事をすれば、少しは眠気が飛ぶかもしれない。そう考え、ここ最近ポロロッカがが見つけたワフルドという自分達の故郷のことを思い浮かべた、しかし眠気の中では思考もまとまらず、むしろ脳がふわふわともやに包まれるばかりだった。

「このままじゃ……ダメだ」

アディオは覚悟を決め、身につけていた防寒着を脱ぎ始めた。寒さで少しはシャキッとするだろうと期待していたが、逆に疲れが一気に押し寄せてきた。まずい、これじゃ寝てしまうかもしれない。より視界は霞み、ぐわんぐわんと頭が揺れる。今にも意識が落ちそうになったその瞬間――

「おい、アディオ！」

突然の声に、彼は飛び上がるようにして目を覚ました。そこにはポロロッカが立っていた、

「……ん！？な、なんだよ、寝てねェぞ！」

アディオは寝ていたことを指摘されたのかと思い慌てて誤魔化したが、ポロロッカはそうじゃないと床に落とされた防寒着を拾った

「なんて格好してるんだよ、アホ、風邪引いたらどうする」

ポロロッカは呆れながらアディオにそれを着せてやる、アディオは眠たい頭を上手く動かすことができず、ん、と短く返事をするとされるがまま素直に袖を通した。

「こんな事するくらいならもうおれと交代だ、役に立たねェ見張りは休んでこい」

アディオはポロロッカの言葉に反論したが、言葉を交えてるその間にすら眠気で言葉が上手く出せず、諦めたように肩を落とす。

「……すまない、頼む」

その言葉を聞くと、ポロロッカは微笑みアディオを見張り台から連れ出し、船内へ戻るよう促した。

「お前のお陰で十分休めたから大丈夫だよ」

その言葉に安心し、へらりと笑い「なら良かった」と返事をすると、ふらふらと覚束ない足取りで寝床へと向かった。ベットを目の前にするとアディオはまるで倒れ込むようにして潜り込む。先程までポロロッカが休んでいたそこは暖かく、眠りにつくまでの時間は、ほんの数秒だった。