ポロアディ(風味)でおんぶ激しい戦闘の喧騒がようやく静まったころ、アディオたち彷徨える一族は、何とか海軍の猛攻を耐え逃げ切った。息を切らしながらも、彼らは仲間の無事を確認し合い、安堵の表情を浮かべる。しかし、その戦闘でアディオは仲間をかばい、足に怪我を負ってしまった。

「すまない、俺が油断したばかりに…大丈夫か？」仲間の一人が、申し訳なさそうにアディオに声をかけると、無理に笑顔を作り「この程度、大したことないさ」とおどけてみせる。しかしその額には冷や汗が流れており、怪我を庇いながら歩く姿は痛々しかった。

そのやりとりを見ていたポロロッカは、アディオの足元にしゃがみこむと足を無理やり掴み怪我の様子を確認する。太ももを銃で撃たれたようで酷く出血しており、更に足首にも違和感があるようだ、折れているのか捻ったのかまだ分からないがかなりの痛みを伴っている筈。
そんな状態だというのに「大丈夫だ！」と笑って無理に歩こうとするアディオに、ポロロッカは呆れ深くため息をついた。
「ほら、乗れ」
ポロロッカはしゃがんだままアディオに背を向け、背中に乗れ、というジェスチャーをする。意味に気づいたアディオは、少し顔を赤くし「おいおい、そんな大事にするなよ、大丈夫だぜ」と、問題ない事を証明するために2、3歩歩いて見せたが負傷した足に激痛が走り、その場に崩れ落ちてしまった。

周りにいた仲間たちは慌ててアディオを支え、左右から腕をつかんで足に負担がかからないよう立たせると「ポロロッカ、団長を頼む！」と持ち上げ、いやいやと抵抗するアディオを背中に乗せた。ポロロッカはそのまま軽々と背負い上げると、仲間たちに助かったと一言礼を言い、そのまま船医室へと向かう。
アディオはもがきながら「降ろせって…！」と抗議するものの、痛む足と体が浮く感覚に思わずポロロッカの首に腕を回し、しっかりとしがみついてしまう。その瞬間、ポロロッカの重厚な背中や足を支える大きな腕がいつも以上に頼もしく感じられ、この安心感と温もりに、等々抗議の声を挙げることは出来なくなり、観念したアディオは大人しく船医室へと運ばれた。

「レヴィーナにだけは出くわしませんように…」

そうこっそりと願うも虚しく、船医室には彼女が待ち構えていたのだった。