PA星の海をこねこねしてるやつ 静かな宇宙艦の中から望める広大な濃紺の内で、星たちが宝石のように光り輝いている。
空の向こうの、星の世界。つい先日その存在を知ったばかりの場所に立っている事実に、アスター四号星のある者は驚嘆し、ある者は目を輝かせ、ある者は決意を新たにしていた。
アベラルドもそのひとりで、方角の道標とされるほど永久に存在すると考えられてきた星々が目の前で死に絶え、そして新たに生まれる瞬間の光に、つい先ほどまで魅入っていた。
再び部屋にひとりとなった今は、反省の真っただ中にいる。
いつの間にか後ろにいたレティシアに驚きこそすれ、アベラルドが姫を邪魔になんて思ったことなど、刹那のかけらもない。姫の気配に気づかないほど星に夢中になっていたことも、その姿を見られた気恥ずかしさに負けてまともな返事ができなかったことも。そして、
――姫さえよろしければ、ご一緒にいかがですか。
再び星の海を前にして、そんな考えがよぎった。しかし、振り返っても既にレティシアの姿はそこにあらず。
機を逃した願いは静かな時間がどれだけ経過しても収まることはなく、むしろ胸の内で占める面積を徐々に増していく。言葉として紡がれることはなくただ胸の奥底に残って、嵐雲のように渦巻いている。
一緒にいる間も、離れている間にもなぜか積もっていく一方のレティシアへの愛情に幾度もしてきたように。遅すぎた願いにも、ひとまず折り合いをつけてやらなければならない。
彼女がいた場所に心の中でそっと投げておこうとして、横を向くに留まった。さっきまでただの空間であった場所。明かすぎる星が照らす隣が、やけに広く寂しい。
アベラルドは聞かせる相手のいない願いの代わりに、ふうっと大きく息を吐き出した。重たい頭を持ち上げ、また窓の外の星に顔を向ける。手折ることにはもう慣れているだろう、と星を見上げながら強く言い聞かせた。
(そういえば、姫はなぜ私の部屋に)
何か用があったのではないか。どこかに行こうとして声を掛けたかったのではないか。なぜすぐに思い至らなかったのか。
新たに生じた反省点に、胸中の嵐の渦にまた別の雲が加わる。このままここにいても何も変わらない、と背筋に力を入れ直して、アベラルドはレティシアを探すべく、自室を後にした。