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    noupura

    @noupura

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    noupura

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    進捗さらし。深夜にドライブしてラーメン食べて次の日牧場で遊んでお土産持って帰ってくる村来が書きたいのになんか全然違う。
    1秒後には解釈違いで死んでそう。

    進捗晒し「実際やるかは置いておいて、やってみたいかっこいいこと?」
    「はい。この前荒船たちとその話題で盛り上がったんです」
    例えばビルから窓ガラスを割って飛び降りること。
    例えば車から車へ飛び乗って移動すること。
    映画やアニメなどでしか見られないような、しかしトリオン体であれば可能であるような案がいくつも挙げられた。
    「その中で逃避行ってかっこいいよねという話になったんです」
    「逃避行?」
    「花嫁を連れ出したり、夜中に列車に乗って日本を縦断したり。アクション映画よりは現実寄りですが、やるかと言われるとやらないな。と」
    「確かに」
    「さすがに式を台無しにして連れ出すのは周りに迷惑をかけすぎだと犬飼が口を出して、じゃあ実際いくらの損失になるのか計算してみようってなったので、そこから話は脱線してしまったんですが」
    「それはそれで興味あるなぁ」
    寝る前にホットミルクを飲みながら、お互い話をしたり聞いたりする。風呂から上がって眠る前の穏やかな時間が村上は好きだった。
    「ちょっと外すね」
    来馬はそう言ってソファから移動して充電コードに繋がったスマホを取り、画面を眺めてからしばらくして村上の隣へ戻ってきた。
    「鋼、ぼくと今から逃避行しない?」

    「いきなりでびっくりしました」
    「面白そうって思ったらやってみたくなっちゃった。さよなら逃避行ーって少し昔流行ったよね」
    「すみません、流行りに疎いので……」
    来馬は逃避行だと言ったが、言い換えれば夜のドライブだ。それでも来馬が一緒に逃げようと誘いをかけてくれたことが村上は嬉しかった。別にお互い何から逃げたいということは無いとしても。
    「ながす?Bluetoothでぼくのスマホと繋げられるよ」
    来馬は運転をする傍らポケットからスマホを村上へ渡す。当然のように委ねられた個人情報の塊だが、村上はパスワードを知っていた。そのままBluetoothを接続して来馬の言った曲について調べる。
    有名な曲らしく、すぐに該当の曲は見付かった。柔らかい男性ソプラノが車内に流れる。
    「明日の予定はいいんですか?」
    「大丈夫。鋼も大丈夫だよね?」
    「木曜は全休なので」
    オフの日も設けた方がいいという来馬の方針で、村上や今の講義の少ない日に合わせて隊のシフトが組まれている。それでは来馬の休みがないのではないかと指摘したところ、3年からは一般教養科目が無くなり余裕が出るため問題ないと来馬は答えた。そのため、木曜は村上にとって授業もなく防衛任務も基本的には無い完全なオフの日になっている。
    「どこまでいく?」
    「できるだけ遠くがいいです。逃避行、なので」
    「いいよ。あ、でも車中泊ができる場所がいいな」
    「俺調べます」
    「ありがとう」
    来馬とならばどこまででも行ける。ただ、それをそのまま来馬へ伝えるのは村上には少しハードルが高かった。
    BGMを来馬のプレイリストから流れる曲に任せ、村上は目的地を探す。車中泊をすると来馬は言った。毛布や寝るために必要なものは一通り揃えられているため、そこは問題ない。格好もそのまま外に出ていけるように着替えている。走っている高速道路沿いにある地名を検索しつつ、車中泊ができて近くに寄れる何かがある場所を探した。
    「先輩」
    「なに?」
    「動物はお好きですか?」
    「好きだよ」
    「ではこの先に車中泊が出来てその近くに牧場もある場所があるのでそこに行きましょう」
    「調べてくれてありがとう。さすが鋼」
    来馬の反応を見てから、村上はカーナビに目的地を入力した。たとえ何もない場所でも、来馬は村上の決めた目的地に意を唱える事はないだろう。だが、どうせ一緒の時間を過ごすなら来馬の喜んだ顔が見たかった。
    「いえ。車も運転も先輩に任せきりなので」
    「鋼は今度の長期休暇に合宿で取るんだっけ」
    「隊に穴を開けてしまうことになりますが、その予定です」
    来馬は入隊前に免許を取っていたらしい。家族を乗せて出かけることもあるし、同い年のボーダーのみんなでドライブへ行くこともあるという。
    「しばらくボーダーで活動ができないって理由で免許を取ってる人は多くないみたいだね。太刀川とかも持ってないって」
    「太刀川さんは運転席より助手席って感じがします」
    「そうそう。よく隣からガムを口に入れてきたり飲み物を飲まそうとしてくるんだ。で、静かになったと思ったら寝てる」
    来馬は微笑ましそうに話すが、太刀川らしいといえばらしいし、その振る舞いを許さない人間も一定数いるだろうなと村上は想像した。
    「二宮とか堤はETCのない場所ですぐに現金を渡してくれるんだよね」
    「来馬先輩はよく運転されるんですね」
    「運転慣れしているし、わざわざレンタカーをする必要がないからね。運転自体嫌いでないし、乗せてもらうより乗せる方が多いかも。あ、でも堤がいる時だと半々かなぁ」
    実際、来馬は雨がひどい日などは予定が空いていれば今や別役も含めて学校までの行き帰りに車を出してくれる。飲み会に行くときはハンドルキーパーを進んで務めているとも村上は聞いたことがある。
    「免許を取ったら俺が運転します。なのでそのときは好きなだけお酒を飲んでください」
    「嬉しいこと言ってくれるね。なんだか親になった気分」
    「親じゃなくて恋人ですけどね」
    「それに今は秘密の逃避行中」
    「日帰りですけど」
    「帰るまで誰にも連絡とっちゃだめだよ?」
    ハンドルから片手を外して、来馬は村上の頬を柔く摘んだ。来馬は基本的に規則正しい生活を送っているため、深夜になんの用事もなく出かけることに対して、少しテンションが上がっているらしい。悪戯っぽく笑う表情は村上でもあまり見ることのないものだった。
    「今や太一は心配するんじゃないですか?」
    「大丈夫。位置情報はトリガーでわかるし、ぼくと鋼が近くにいればみんな安心すると思うよ」
    事前に連絡をしておいたから、と来馬から返ってくると予想していた村上は驚きで沈黙する。
    「……不安?」
    「いえ、ただ来馬先輩がそう言うのは意外だなと思っただけで」
    村上の言葉を受けて、代わりに来馬が沈黙する。答えを考えているようだった。
    「鋼はここに来てから結構経ったよね」
    「そうですね」
    来馬は音楽を切り、窓を開けた。閉じられていた空間に風が流れ込む。穏やかで優しい気候だった。
    「こうして誰にも内緒で遠くへ行っても居場所は常に筒抜けだし、不自由さが嫌になったりしない?」
    「考えたこともありませんでした」
    「免許だって普通の子は好きに取りに行けるのに」
    「……言われてみればそうかもしれませんが」
    「だから一緒に逃げちゃおうよって言ってみた。別に何から逃げたいとか、ボーダーが息苦しいとかぼくも鋼も思ってないんだけど」
    窓から吹き込む風が来馬の髪を揺らす。剥き出しになった額と静かな眼差しが、普段より来馬を大人に見せた。
    「ごめん。堅苦しい理由は置いておいて、こんな夜中に鋼と2人で出かけることができて楽しいって思ってるよ」
    「これから何度だって誘ってください。付いてきいます」
    「鋼からも誘ってくれる?」
    「それはもちろん」
    「楽しみだな。あ、次のSA止まっていい?」
    来馬は次のSAまでの距離を示す標識を横目に村上へ打診する。もちろん、来馬の問いに村上は是と答えた。
    しばらくして来馬はSAの駐車場へ車を停め、鍵とカードを抜いてからシートベルトを外し鞄を掴んだ。
    「鋼、ラーメンを食べよう」
    「行きます」

    食券を購入し、引き換えにワンタッチコールを受けった来馬はブザーが鳴るのを待ち遠しそうな様子で村上へ打ち明けた。
    「やってみたかったんだよね……!深夜にラーメン」
    「俺もこういうところのラーメン好きです」
    来馬は基本的に間食を取らない。その上深夜に味の濃いものを食べる習慣も無いのだろう。育ち盛りの村上はどうしても空腹で眠れそうにないときはカップ麺などを食べてしまうことが無くはなかった。
    「飲み会の後にシメのラーメン?とかみんなは言うんだけどぼくはお腹いっぱいで行けなくて。いつももどかしく思ってたんだ」
    「先輩は食が細いので」
    「飲まない分手持ち無沙汰で食べ物を摘んでしまうのもあるんだけどね」
    来馬はそう言うが、摘むといっても枝豆やトマトなどの軽い食べ物を好んで食べることは村上も知っている。酒を飲まずにそれだけで満腹になることは村上には難しい。
    「じゃあ今度は俺と飲んで帰りは歩きかタクシーにしましょう。ラーメンも食べれるように加減してください」
    「頑張る」
    次の計画を話しているところでブザーが鳴ったため、来馬と村上は席を立った。

    「ありがとう、重くない?」
    「これぐらいは全然です。先輩こそ水ありがとうございます」
    「いえいえ」
    ラーメンを2人分受け取り席まで戻ると、ちょうど来馬が机を拭いて帰りに水を取ってきたところだった。
    「鋼は味噌にしたんだ?」
    「どこで食べても大体美味しいので」
    「なるほど。参考になるなぁ」
    来馬は感心した様子で村上を褒めたが、ここにいたのが同学年の誰かであれば冒険心が無いと言われてしまいそうだと村上は思った。
    食事を終え満足そうな来馬と、再び車内へ戻る。途中コンビニで飲み物も買い足した。時間はまだ日付が変わって少ししたくらいだ。目的地にはあとどれくらいで着くだろうか。
    「寒くない?窓閉めようか」
    「ありがとうございます」
    村上自身は寒さを感じていなかったが、来馬が風邪をひいては困るため村上は来馬に賛同する。風に当たり続けた頬は冷たそうで、運転中でなければ触れてしまいたかった。
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