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    智美。

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    智美。

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    【PWPR】こんな感じのもしも話妄想。14の鈴本と聖の終わりがもどかしかったのでみずき乱入させてみた()。ただの妄想です

    #パワプロ14
    powerPro14
    #六道聖
    #鈴本大輔
    daisukeSuzumoto
    #橘みずき
    mizukiTachibana

    パワプロ14聖√if(聖、みずき、鈴本/みずきバルカンズ移籍済)


    カランコロンーー
    鈴本大輔は自身のイメージによく合う、けれど自らの意思で進んで行くことはないであろうお洒落なカフェに足を踏み入れる。水色の髪の毛が特徴的な女性が既に待っていた。女性プロ野球選手の先導者である早川あおいを慕う、かつてキャットハンズに所属しトレードを経て現在は津々家バルカンズに在籍している左腕投手の橘みずきだ。
    鈴本は周囲を見回す。みずき以外の客は見当たらない。二人とも知名度はある。そんな男女が二人きりで一緒にいるところをタチの悪い記者に目撃でもされたらゴシップ誌のいいカモだ。そんな鈴本の心理を見抜いてみずきは微笑む。みずきとて易々とカモになるような人間ではない。そこら辺の心構えは聖よりもしっかりしているのだ。
    「いらっしゃい。貸し切りにしてあるから安心して」
    「お気遣いありがとうございます」
    鈴本も飲み物を注文し、しばらくは無言の時間が続いた。店員は鈴本に配膳を終えるとそっと裏へ去っている。ジャズ調のBGMが店内に響き、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。鈴本はみずきの真意に薄々気が付きつつも、自分からは言わない。連絡は突然だった。どこからか電話番号を入手して、直接鈴本へ電話を入れたのだ。親密な関係ではないが、お互いに存在は知っている。
    「聖のことでちょっと聞きたいことがあって。どうしてあんな嘘をあの子についたの?」
    「(来た)その情報は本人の口から? 聖は嘘だって知ってる?」
    「女の勘ってヤツ。アンタの話題が出たときの反応がおかしかったからね。ちょっと身辺調査してもらったわ。……あぁ、正確には聖にそう匂わせるような言葉を並べたってところかしら。あなたの身内に近々結婚する人がいた。その人を使って聖を自分から遠ざけるように仕掛けた。聖は多分気が付いてないわ」
    みずきはジュースを飲んでひと息入れる。みずきのことを深く知らない鈴本でも、彼女が怒っていることが手に取るように理解出来た。みずきの言葉は刃のように鋭利だ。それでも鈴本はテレビの前で見せる爽やかな笑みを絶やすことはない。
    聖に近い人間に責められるのは覚悟していた。間違いなく褒められた行為ではないことを自覚している。それでも聖ならいつの日か乗り越えられると信じて。中学の出来事は思い出の一ページに綴られるだけで良い。ふとしたときに思い出すだけで良いのだ。彼はそう信じていた。
    「流石です。高校生からの黄金バッテリーは伊達じゃないですね」
    「はぐらかさないで」
    「…………」
    「…………」
    みずきは険しい表情を浮かべている。マウンド上で見せるそれとも違う。鈴本は覚悟を決めた。彼女なら、聖を支えていける。みずきが聖を想う気持ちは本物だ。鈴本は数秒瞳を閉じる。押し付けるようで申し訳ないと思いつつも、彼は聖タチバナ時代からの黄金バッテリーに本心を吐露した。実姉以外にはさらけ出さないと思っていた、真実を。
    「聖は聖のために野球をしてほしいんです。彼女にオレはもう必要ない。オレを追い続けても、聖のためにならない」
    「…………満塁のピンチにした上にワイルドピッチでサヨナラ負けね」
    「聖には悪いと思ってる。彼女を傷付けてしまっ、」
    「バッテリーだったんでしょ? そんな押しつけで試合が上手くいくと思う?」
    みずきは鈴本の言葉を遮る。高校生の頃から鈴本は大きく変わった。しばらくの間、みずきは鈴本大輔があの鈴本だと気が付かなかった。聖と会話することがなければ、みずきの中の鈴本像は高校生で止まっていたことだろう。中学生のときに大暴投をしたあの少年が、今やすっかりライバルチームの柱となっている。実力はレ・リーグでもトップクラスだ。
    「聖のモチベーションの源はほかの誰でもない、かつてバッテリーを組んだあなた、鈴本大輔。悔しいけど、鈴本さんの代わりは誰も出来ないの」
    「っ……」
    そう言われると、鈴本は何も言い返せない。第三者からそう指摘されても素直に喜べない。すべてが遅かった。氷が溶けて、バランスが崩れる。カランと音を立てて今いるべき場所へ収まった。いつから歯車がズレ始めたのか、彼には分からない。気が付いたらこうなっていた。
    みずきは高校時代を思い出す。聖と鈴本のバッテリーを見たみずきは、鈴本の球を受けるキャッチャーの聖に一目惚れした。彼女となら、憧れの舞台に行ける。そう感じたみずきは高校の進路先を聞いて聖タチバナに誘った。
    聖とともに過ごした二年間は濃い時間だったとみずきは自負している。それでも、鈴本には割り込めない。いつでも彼女の中には鈴本がいたのだ。みずきの決め球であるクレッセントムーン捕球に煮ずまった際にも彼の存在が彼女に発破をかけた。
    「聖を大切に思うなら、せめてあの子が求めてる間は柱になってよ……」
    「……聖は優秀なキャッチャーだ。バッテリーを組んだことがあるならよく分かってるはず」
    「えぇ。聖のキャッチングは球界随一」
    「橘さん、ボクは聖を駄目にしないですか? 彼女を、潰してしまわないか不安で」
    「いつか潰れるでしょうね、今のままじゃ」
    「…………」
    鈴本は言葉を失う。メディアの前で見せるような余裕はもうなくなっていた。家族の前でも滅多に見せなくなった表情を、ほぼ初対面の相手に見せている。鈴本が考え抜いた末に出した結論を全否定されたのだ。ショックと同時に、聖を助ける手立てが見付からない自分に絶望した。ましてや、空回りして最悪な方向へと向かっているとは思ってもいなかった。そんな彼の表情を盗み見て、みずきは安心する。眉間の皺はなくなり、彼に向ける眼は柔らかいものになった。
    「あなたも聖も不器用ね。一気に変えれるほど聖も強くないの。積み上げたものが高ければ高いほど崩れたときの衝撃が大きい。だからゆっくりと時間を掛けて崩さないといけない。まだ大丈夫、鈴本さんの本心を話してあげて?」
    「……聖が橘さんを信頼してる理由がよく分かりました」
    「これでも鈴本さんの次に聖を支えてるつもりなので。別に鈴本さんの意見を否定はしないわ。鈴本さんなりに考えたんでしょ?」
    「……橘さんには敵いそうにないです」
    シーズン中でもみずきと聖のバッテリーは非常に厄介な相手だった。みずきも聖も優秀な選手であり、個々でも充分バルカンズの優勝に貢献している。高校から別々の道を歩み始めてからは鈴本と聖はすっかり疎遠になっていた。社会人になり鈴本と聖が会話をしても多くは語らない。挨拶程度がほとんどの会話にみずきの話題は出てこない。鈴本は野球人として、橘六道バッテリーの空気を感じ取ったに過ぎなかった。
    「まぁあなたたちより先輩だしね。あ、聖にここに来いって連絡したわよ。私はおいとまするけど。次は試合で会いましょう」
    「!!??」
    「(なーんだ、良い顔するじゃない)」
    去り際に見た鈴本の顔は過去最高に情けない顔をしていたそうな。とっとと店から出たみずきは、別の店で飲むことにした。恋人ごっこが終わりを告げたあのとき、みずきは人知れず失恋をした。みずきにとって、あの時点では生憎ごっこだけで済むような感情を持ち合わせていなかった。そして薄々気が付いていた。橘という存在の大きさに。だから、少し苦い思い出として割り切ることが出来た。今でもキャットハンズにいる彼とは良好な関係を築けている。
    「(あの二人も難儀なものね)」
    野球人である前に一人の人間だ。男女であるが故に、本人も知らないところで異性として意識していた。好きなものを諦めざるおえない状況の中に現れた手は聖を助け、そして囚われる。それは当時の鈴本が出来る精一杯助け舟だった。多少の下心もあったかもしれない。でも、野球の上手な聖が女だからという理由だけで埋もれるのは幼心にもったいないとも思った。
    「久々にあいつでも呼ぼうかしら」

    後日、聖と会う機会があったみずきは彼女の雰囲気が変わったことを察した。元に戻った訳ではない。それでも鈴本に振られる前のような、野球に希望を見出している。みずきは余計な詮索はしない。その雰囲気だけで今の時点で収まるところに収まったのだろうと推測出来た。みずきは親指を上げる。聖はあまり他人に見せない穏やかな笑みを浮かべた。
    「みずき、わざわざありがとう。完全に整理出来てはいないけど、すっきりした」
    「どういたしまして。今度何か奢ってね」
    「分かった」
    「(あんたたちが終わるにはまだ早過ぎるのよ)」
    聖はまだ野球人としてやっていける。高校生から変わらない瞳の輝きが戻ってきていた。オフシーズンも終わり、野球の季節が始まる。なんの因果か、開幕戦のカードは津々家バルカンズ対シャイニングバスターズとなった。シャイニングの先発はもちろん鈴本。安定のピッチングで打者を苦しめる。聖が打席に立ったとき、シャイニングのキャッチャーは二人の圧に飲み込まれかけたという。鈴本の放ったボールを聖は捌く。
    「(積極的に打ちに行くなんて珍しい)」
    普段四球も視野に入れて打席に立つ聖も、今回は積極的に振りに行く。塁には誰もおらず、2アウトのピンチ。ノーボール2ストライクが続く。聖のパワーと足では長打は期待出来ない。ある意味鈴本を信頼して、すべての球を際どいながらストライクに決めてくる前提で動いていた。かつて大一番の試合で大暴投をしたこともある少年が、ここまで成長した。聖は的確に捌きながらも彼の成長を素直に喜ぶ。
    「本当に成長したな……」
    鈴本は間を置く。帽子を取って汗を拭った。
    「はは、ここまで粘られるとキツいな……」
    ゴロやフライを狙っても、すべてカットされる。聖はキャッチャーの視点に立って球筋を読み、見極めていた。捕手らしく時々配球にケチを付けながらもなかなかスリーアウトにならない。このままでは埒が明かない。鈴本は間を置く。不敵に笑って見せたその顔はどこかあどけなさを残す、聖とバッテリーを組んでいた頃の面影が濃い。聖もより一層気合いを入れる。鈴本は一番得意な球を聖に投げ込んだ。
    「……来い!」
    「(最高の球を)ッ!!」
    白球は鈴本の思った軌道に流れていく。断じて甘い球ではない、滅多にお目にかかれないシーズン中でも何度も見れない好投だった。聖のパワーではアウトになってしまう、綺麗で力強い球。聖は深みを増した緋色の瞳で一番効率の良い打撃を瞬時に計算する。ボールはバットに当たり際どい所に転がった。それはセーフとなり、聖はファーストベースへ駆ける。技ありでヒットに持ち込んだ。ベンチではみずきがガッツポーズをする。バルカンズベンチは盛り上がった。
    「聖やるぅ!!」
    結局この日は鈴本相手に良いようにやられた。オフシーズン中にトレーニングを積み重ねてきたのはバルカンズのメンバーだけではなく、鈴本も同じだ。しかし、みずき、芦谷などの投手陣も負けじと好投し延長戦の末にフルのHRでなんとかバルカンズが勝利を収めた。バスターズに分があると思っていただけに、鈴本は悔しそうな表情を浮かべる。聖と目が合い、彼女は勝ち誇った笑みを浮かべた。この日の鈴本は野球少年のようだったと一部のファンは語る。野球の果てに待つ結末は、まだ誰にも分からない。結局その日は聖と鈴本は直接話すことがなかった。
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