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    kohiruno

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    元勇者と地底魔城で育った子供が、天才無免許医と旅先で出会う話

    橙✕BJクロスオーバー。  
    タイトル通りのお話です。誰でも一度はこの時点の和解を願うのではと思い、私の心の供養のために書きました。
    手塚神に寄せたパロディ絵の漫画で描ききって完成されればこそ意味があるので、アイデア供養。ご自身の記憶の中の間黒男先生とともに再生してくださる、何でも許せる方に見ていただければ嬉しいです。

    川辺にて※医療に関する記載は、ファンのBJ愛の代物として寛容に見てくださると幸いです。

    曇り空の昼の宿場町。豪雨による増水で渡し船が欠航になっていて足止めを食らう旅人たち。混み合う宿屋の食堂。眼鏡を掛けた青年と銀髪の子供が食事をしている。子供は一礼して席を立つ。そこに相席をするBJ。
    「失礼。お気を使わせましたね。弟さんですか」
    「いえ、彼は弟子なんです。世間を知る旅の途中でして」
    「へえ、では武者修行の先生だ」
    「まあ、そんなところです」
     ワインを酌み交わす二人。
    「賢そうなお子さんですね」
    「彼はね、私の敵の根城で育てられた子供なんです。父親代わりの幹部を見逃す際、託されました」
    BJはじっと青年を見つめる。

     宿屋の裏で、剣の稽古に励む少年。
    「ぼうや、熱心だね。オヤツ食うかい」
    「遠慮します」
    素振りを続ける少年。BJは倒木に座る。
    「おかげで食事にありつけたんだ。お礼をさせてくれよ」
    手を止め、「失礼します」と隣に座る少年。BJからパンを受け取る。
    「先生は、優しいかい」
    「先生……あいつは俺の父さんの仇なんだ!」
    「なんだって!」驚くBJ。
    「だから俺は明日、あいつを倒すんだ」
    しばし黙るBJ。
    「私は母親を事故で亡くしてね。死にものぐるいで犯人を探したことがある」
    ハッとする少年。
    「そいつら、ころしたの?」
    「いや、でも十分懲らしめたさ」
    「俺はそれじゃ気がすまない!!
    暗い目で剣を握りしめる少年。背後の森でカラスが鳴く。

    夜、宿屋の階段。
    「先生」 
    階段を上がるBJ。
    「ああ、昼間はどうも。あのあと、弟子がお菓子を頂いたそうで。ごちそうさまでした」
    2階には青年がいて会釈する。
    「あの子はあなたを親の仇と勘違いしている。なんの理由がわかりませんが、正直な話をしたほうが良いんじゃないんですか」
     目を閉じる青年。
    「わかっています。でもその気持ちが今の彼を生かしているんです」
    階段を下りる青年とそれを見下ろすBJ。

    翌朝、増水が続き暇そうな船着き場の船頭たち。
    「あの二人なら、朝早く川沿いの森に出たよ」
    BJ、駆け出す。
    「嫌な予感がするな」

    切り立った川辺に佇む青年と少年。
    「あなたには卒業の印にこれをあげましょう」
    激しく川の流れる描写と、揺れる木々。
    「あなたは、バルトスという男を知っていますか?」
    鋭い目つきで青年の背後に襲いかかる少年。
    「やめろーーっ!!」
    飛び出すBJ。メスが少年の手に刺さり、手元がそれるものの、その切っ先は青年の胸元を斬る。カウンター攻撃を受けて吹っ飛んだ子供を間一髪BJが受け止める。振り返ると青年が倒れている。
    「これで、気が済んだか!」
    息荒く剣を取り落とす少年に、BJの平手打ちが飛ぶ。膝を付き地面を打つ少年。
    「あいつは父さんの仇なんだ。俺が倒すんだ。でも、何故だ、心が、少しも……」
     青年の容態を診るBJ。
    「……その子を責めないでやってください」
    「今はものをしゃべりなさんなッ」
     青ざめていく青年を抱え、山小屋に移動する。
    「先生を助けたかったら、いうことを聞くんだ。火を起こして、溜まっている雨水を沸かせ」
     ベッドに青年を寝かせるBJ。
    「チャンバラごとはわからんが、ここからは私の出番だ」
     小屋で傷を塞ぐ手当をするBJ。
     何も言わずに、湯を沸かし続ける少年。傷は浅く、無事に手当が終わる。
    「先生は……」
    「命はとりとめた。父親の話は直接先生に聞くんだな。あとで宿屋の主人に必要なものを運ばせておく」
     そこで、目を覚ます青年。
    「ヒュンケル、ごめんなさい。ずっと苦しい思いをさせましたね。私はあなたに謝らないといけません」
    「アバン先生。俺……」
     師の傍らによる少年。目には涙が溢れている。手にはしずく型の石がついたペンダントが握られている。
    「話しましょう。あなたのお父様のことを……」
     静かに小屋を立ち去るBJ。空には星が輝きはじめる。

     穏やかな流れの川辺で、凛々しく眼差しで、師と剣術の手合わせを行う少年。逆手に持った剣からは眩い光が溢れている。

    《おわり》
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