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    utsuhiyo

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    utsuhiyo

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    間に合わなかったドフ誕の全然間に合ってない書きかけドフ鰐。
    壮大に何も起こらない。序の中の序。
    空飛びデートするドフ鰐の予定です。今のとこ一番セリフ多いの元帥殿だけど。

    #ドフ鰐
    DofuWani

    空飛ぶ自転車、地に墜ちる 世界政府のお膝元、聖地マリージョア。天竜人が住まう地として有名なその場所は、世を動かす要となる政治の中心地でもある。
     社会の要人達が集まるこの地では、世界のため、日々様々な合議が行われる。その内の一つ、世界の均衡を保つための治安維持を目的とした会議も、マリージョアにて極稀な不定期に開かれている。海軍と王下七武海が中心となって行われるその会議は、厳かに執り行われる他の政治の場と違って、少々特殊な空気が漂っていた。

     それはそうだ。会議に参加しているのは、世の治安維持に真摯に取り組む海軍の重鎮達だけではない。政府と契約を交わし協力の取り決めをしているとはいえ、本来は世界の治安を脅かす立場であるはずの海賊達もいる。
     特に、王下七武海の称号を授かるような海賊は、いずれもその道で名を轟かせて政府に目をつけられた過去のあるならず者ばかり。絶対的な強さが七武海加入のための条件である以上、強い海賊≒筋金入りのロクデナシという図式は容易に成り立つ。
     そんな選びぬかれた厄介者達が、素直に席に付き真面目に配布資料に目を通し、議題に沿った道理の通る発言をする。そんなお利口な奴らであるのなら、召集の度に海軍が頭痛に悩まされる事もないわけで。



    「おい、ドフラミンゴ。何をしている」

     こめかみを指で抑えながら、この場の議長を務める男、海軍元帥センゴクは低い声で窘めた。諦めと軽蔑の感情でもって荒らげそうになる声は抑えたが、それでもヒクツく目尻を隠す術はない。細めた目で睨みつけた視線の先にいるのは、キツいピンク色をした羽毛の塊、それに包まれた大男。
     椅子に凭れかかって浅く座り、両足を卓上に投げ出した下品な体勢。背凭れの頂点を枕にして頭を逸らしたまま、こちらを見る気配もない。苛立つセンゴクの声を聞いているのかいないのか、男は愉快そうに口元を歪め、窓の外を眺めている。

    「……」
    「おい! 聞いているのか!」
     呼びかけを無視する男の態度に、センゴクは先程よりも大きな声を上げた。その声にようやく男は顔を持ち上げ、センゴクの方を見た。だが男がかけている濃い色のサングラスが、男の視線をはっきりとは明かさない。
     男──ドフラミンゴは会議が始まってよりずっと、椅子に座って窓の外を見ていた。こちらでどんな議事が交わされようとも、まったく関心を払おうとしない。どう見ても会議に参加している姿勢ではなかったが、それ自体はいい。腹立たしい事ではあるが、この会議においては──もちろんそれは七武海の穀潰し共だけの事ではあるが──よくある事だ。面子が足りないながらも一応顔を並べてはいるが、他の海賊側の参加者達も、碌に話を聞いているのか怪しいものだ。

    「フッフッフ、そう大声出すなよセンゴク。話ならちゃんと聞いていたさ。レッドライン周辺に新勢力の海賊がのさばりつつあるって話だろう? それなら、ナワバリが近いおれが潰しておいてやる。それでいいだろうが」
    「それはこれから詰めていく話だ。貴様が勝手に決める事じゃない。……私が聞いているのは、貴様が今何をしているのか、だ」

     センゴクが怪しんだのは、ドフラミンゴの態度だった。
     会議に参加しない男は、ただ暇つぶしに外の風景を眺めているという風には、どうしてもセンゴクには見えなかった。外に視線を向け続ける男の不愉快なニヤケ面には、どうにも何らかの意図が含まれているように思えたのだ。少なくとも、男の隠されて捉えられない目線は、窓の外にある何かを追っているようだった。

    「ああ、いやいや……気になったか? そりゃ悪かったな。別におれは会議の邪魔をしようってんじゃねェんだ。本当だぜ?」
     クツクツと喉の奥で笑いながら、ドフラミンゴはヒラヒラと手を振る。その振られた手の先、指先がくりんと曲げられたのを、センゴクは見た。嫌な予感がする。
    「ただ、あいつはどこまで耐えられるのか。それがおれはつい……気がかりでな」

    「報告します!」

     何を企んでいる。そうセンゴクが問い詰めかけた矢先、扉が開いて慌てた様子の海兵が現れた。つんのめる勢いで部屋に入ってきた海兵は、余程慌てていたのだろう。足をもつれさせながらも部屋中央の円卓まで進めると、その場にいた人間全員に聞こえるような声量で自分がここに来た理由を発表した。

    「海兵が、空を飛んでいます!」
    「⁉︎」

     異様な報告を聞いた海兵達は、どういう事か確かめようと次々に部屋の窓に張り付いて外を見た。センゴクも、席を離れないまま窓の外を注視し様子を伺う。
    「あっ、あれ!」
     一足早く報告内容を見つけた海兵が、窓の外の一点を指差す。その先には、遠くてあまりよくはわからないが、確かに人が一人、宙に浮かんでいた。白い制服に身を包んでいるらしきその人物は、確かに海兵のように見える。
     ゆっくり徐々に高度を上げて小さくなっていく若い海兵。その表情は、遠く見えづらいとはいえ、恐怖に固まっているように見えた。

    「ドフラミンゴ!」
    「フフフフフッ」

     センゴクは鋭い声で、海兵飛行騒ぎの元凶であると思われる人物を叱責した。ドフラミンゴは、ちょっとした可愛いイタズラが成功したかのように、嬉しそうに笑い声を上げる。しかしその指を緩める様子は見られず、こうしている内にも段々と窓の外の海兵は高く昇っていく。
    「オイオイ、そうおれだけが悪いと決めつけるのはよせよ。フフフッ」
     ドフラミンゴが肩を震わせて笑う度、その動きに釣られて指先から伸びる糸が揺れる。その手元だけの小さい動きが、糸が伸びた先、宙に浮かべられた男の元に届いた時には大きな波となって男を揺らす。
    「あの男は、おれにちょっとばかし無礼を働いたのさ。おれはただ、躾のなってない海兵を、お前らの代わりに教育してやってるだけだ」
     頼る先もない空中で、落ちたら死ぬような高度で。細い糸一本に好きに振り回されて、海兵の男は恐怖に引き攣れた悲鳴を漏らした。だけれど高度が高すぎるので、漏らした悲鳴は誰に届く事もなく宙に掻き消えていく。

    「黙れ。今すぐ彼を解放するんだ」
    「だがなァ、気にならねェか? これはおれの能力の実験も兼ねてんだ。おれは、糸をかけて辿ってどこまでも高く飛ぶ事ができるが……おれじゃねェ普通の人間は、どこまで昇っていく事ができるんだろうな? 果たしておれと同じ世界まで到達できるのか…………それがおれは、フッと興味が湧いちまった訳だ」

    「なんだ、空を飛ぶってェ? キシシシシ、偉そうに言ってるがンな事できんのはお前だけじゃねェ。空を跳躍できる能力者なら、お前よりもっと素早くやれる奴もいるだろうよ。なァくまよ」
    「興味ないな。どうでもいい事だ」
     自身の力で宙に舞う哀れな男を眺めながら、ドフラミンゴは笑み混じりにそう言った。そこにはこの状況を余興的に楽しんでいる軽さに、子供のような探究心が加えられているようにも見えた。ドフラミンゴの軽口を聞いた、会議に参加していた他の七武海の海賊達は笑って横槍を入れてくるが、ドフラミンゴは気にした様子もなく笑うばかりだ。

     センゴクは、スウとドフラミンゴを見る目を据わらせた。
     本当に、これだから海賊という人種は碌でもない。コイツらには、この海を預かる者達の一角であるという意識が欠片もない。有事の呼び出しにもまともに応じないばかりか、珍しく顔を出したと思えばこの調子。ドフラミンゴだけではない。他の七武海の海賊共も、ドフラミンゴの悪戯を傍観するか、囃し立てるばかりで止めようともしない。
     七武海制度は、この海の均衡を守るために存在する。その実態がどうであれ、海賊を狩ることが公的に許された海賊であるという事実それそのものが、七武海の存在意義である。重要なのは奴らが持つ権威と影響力。そこに必要なのは他の海賊達を抑えることができる実力のみ。人格は考慮されない。
     だからと言って、勝手気ままな横暴が許される訳ではない。特権に食いつくだけで義務を果たそうともしない寄生虫共め。遊びの感覚で他者を弄ぶコイツらに、海の平和など任せられる道理はない。

    「貴様の卑小な好奇心など、こちらは知った事ではない。兵の教育も、結構だ。実験したいのであれば、自分の国に帰ってから好きにするんだな」
    「おれの国の国民達をこんな目に合わせろって? そりゃああんまりだ。いくら海賊を嫌ってるからって、袈裟まで憎いってのはねェだろう」
    「貴様といつまでもくだらない言い合いをするつもりはないという意味だ!」

     センゴクは今度こそ声を荒らげて、ドフラミンゴを叱り飛ばした。このようなわかりやすい挑発にいちいち怒鳴っていてはキリがないが、今は人の命がかかっている。今頃事態を知った部下達が彼を助けようと動いているだろうが、結局は彼の命はこの男の気分一つ、胸三寸に委ねられている。ドフラミンゴがちょいと糸を振るだけで、哀れな青年は明後日の方向に飛ばされ、地面に叩きつけられる。センゴク自身が直接ドフラミンゴを抑えようとも、距離が離れた場所にいるあの海兵までは如何ともし難い。
     いくらドフラミンゴとはいえ、よりにもよって聖地で、海軍所属の人間を殺めるような真似はしない──とは言い切れないのが苦々しい。この男は、七武海随一の“イカれ海賊”なのだ。

    「ドフラミンゴ。貴様が神聖なるこの場で、そのような罰当たりな態度を続けると言うのなら、場合によっては貴様の七武海としての資質を疑わざるを得んだろう。剥奪、されても知らんぞ」
    「怖ェなァ、ちょっとしたお遊びだろうに。怒らずとも、後であの若造は解放してやるつもりだったさ。検証としては、少し物足りないが……」
     ドフラミンゴはやれやれと肩を竦めると、腕を持ち上げて糸が繋がる指を構えた。緩めるように動くかと思われた指に注目していれば、男の口端が、意地悪く持ち上げられる。


    「だが元帥殿が望まれるのだったら、“今すぐ”にでも」


    「やめろ」、そう言うより前に、ドフラミンゴが持ち上げた指を払った。それと共に中空に釣られた海兵が降下を始める。勢いの良すぎるそれは、落下以外の何物でもない。糸が切られたと悲鳴をあげる海兵の声が、低くなる高度に今度こそセンゴク達のいる会議室まで届いて響いた。
     センゴクは、ガタリと音を立てて椅子から立ち上がる。窓の外、青年が落下するであろう地点には、まだマットの一つも準備されていない。これでは間に合わない。センゴクが我が身を顧みず飛び出していこうとした時だった。

    「⁉︎」

     そのまま断末魔になると思われた青年の悲鳴の語尾が、奇妙に掬われて疑問符を成した。センゴク等、彼を助けようとした海兵達も、唐突な目の前の現象に一瞬時を止めた。
     墜落していたはずの青年が、突然再び浮き上がったのだ。糸に突き落とされて、このままでは地面にぶつかっていたはずの身体は無事。重力に逆らった彼の身体は、先程とは異なりゆっくり降下を始める。与えられた救済に、当の青年自身も何が起きたかわかっていないようで、キョロキョロと驚いたように辺りを見回している。
     そんな青年の髪を、砂混じりの風がふわりと撫で上げた。青年の視点ではわからないだろうが、遠くから見るセンゴクからは、青年の身体を覆うように小さな砂嵐が発生しているのがわかった。


    「貴様か……クロコダイル」


     咳払いをして席に座り直すと、センゴクはフウと溜息をついた。本日集まった円卓に座す七武海、そこにたった今来た人物を見遣る。
     先程までは何者もいなかった椅子に、やって来た気配すら見せずに、いつの間にか不敵な笑みを浮かべた男が座っていた。男は黒髪のオールバックを撫で付けて、両手を机の上で組む。ニイと上げた口角に、顔を横断する傷跡が歪んで、目立っていた。

    「どうやら、間に合ったみてェだな」
    「間に合ってはいない。遅刻だ、クロコダイル。会議始まりの定刻はもうとっくに過ぎている」
    「そうだったか? これは失敬。つい遅れてしまっていたみてェだ。通りがかりに空を飛んでいたノロマな海兵が見えたものだから……余計な事だったかね?」
     窓の向こうでは青年が無事地面に降り立って、担架を抱えた同僚達に囲まれているのが見えた。青年は恐怖の名残に震えてはいるが、大きな怪我はなかったようで、その足取りはしっかりしている。センゴクはそこで、ようやく安堵した。
    「……いや、助かった。先程私は、所詮海賊などクソの役にも立ちはしないと思っていた所だったが……この件に限っては撤回してやろう。だがそもそもは、貴様と同じ七武海が招いた厄介事だ。こちらが特別に感謝するという事はない」
    「構わねェさ。そんな暇があるなら、さっさと会議とやらの続きを始めろ。何分こちらも忙しい身でね」

     軽口を叩きながら、クロコダイルは手元に配られた資料を拾い上げる。資料に視線を落として口を閉ざすその姿は、既に資料内容に集中しているようだった。
     他の七武海の海賊達も、余興は終わったとばかりに次々と窓から視線を逸らす。騒ぎを起こしたドフラミンゴ本人はと言えば、つまらなそうに伸びをして椅子に座り直している。興味を失ったようなその表情には、悪戯を邪魔された癇癪を起こすような気配はない。


    (クロコダイルさんだ。クロコダイルさんが海兵を助けてくれたぞ。流石、良い人だなあ)
    (まさか。いくら七武海とは言え、海賊だぞ? 海賊からしたら、海軍なんて敵だろうに。ドフラミンゴみたいのが普通だ。そんなお人好し、いるはずないだろ。ただの気まぐれだ)
    (いやいや、クロコダイルさんは違うって。あの人は民衆を救うヒーローだ。おれは以前アラバスタ周りの基地に赴任してたから知ってるんだ)
    (ふーん、そんなもんかね)

     背後にいた、部屋を警備する海兵同士の囁き話が聞こえてきて、センゴクは顔を顰めた。
     クロコダイルは、地味ながらも確実に海軍の中で支持を集めはじめている。
     確かに奴は優秀な男だ。仕事を振ればきっちりこなすし、呼び出しへの応答率も高い。今の行いのような人助け、のような事も多くやってみせて、上層部からの信頼も厚い。奴がナワバリとしている国では、今の海兵が言っていたように、奴を英雄として崇める動きも強い。
     サー・クロコダイルは立派な男。ロクデナシ揃いの海賊共の中でも珍しい、例外。そういった声はセンゴクにも聞こえてきている。

     だがそれでも所詮奴は、海賊なのだ。海賊に全幅の信頼など、誰が置けるものだろうか。

     センゴクは強い力でこめかみを揉んで、頭の鈍痛を和らげた。やはりこのクズ共の動きには、気を配っておかなければ。どちらであろうと、海軍は海軍として己の正義を果たすだけ。とりあえず今日の所は、まだまともに話ができる人物が来てくれて良かったと考えよう。まだまだ頭痛には悩まされそうだが、これでようやく会議を進める事ができそうだ。

     センゴクは毅然とした態度で顔を上げ、議題の進行を再開した。
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