ぼんやりとした頭、そしてぼんやりとした視界が最初に認識したのは、空間を彩るピンク色だった。
壁に設置している蜘蛛の巣をモチーフにした照明からゆっくりと天井を見上げ、そこから枕に埋もれるように壁とは反対へと顔を向けると、照明がついたままのドレッサーが目に入った。
部屋を満たすピンク色を邪魔しない程度に淡く光を放つ照明に照らされた小瓶たちはどれも見覚えがあるが、いまいちハッキリと思い出せない。
エンジェルはそのままぼんやりとドレッサーの上に転がっているいくつもの小瓶や櫛、そして玩具を見つめていた。
「……」
何かが頭の片隅に引っかかる。けれど靄がかかったように上手く働かない頭には何も浮かんでこなかった。
時間ばかりが無為に流れていく。
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