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    やまだたろー

    @masikakuyukine

    二次創作とかの色々供養

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    やまだたろー

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    不穏なカンジの宮兄弟ssもどき。
    前〜のやつだけど供養供養🥳🥳🥳🥳🥳
    ⚠️死ネタなので注意〜ッ⚠

    #宮兄弟
    theImperialFamily
    #死ネタ
    newsOfADeath
    #宮侑
    courtNoble
    #宮治
    miyaji

    4
     あの日から1年。夏真っ盛りの、7月の下旬頃だった。あの日は普段よりも蒸し暑く、蝉が一段と煩かったのを覚えている。それも、今日はやけに静かに感じた。足元には蝉の死骸が転がっていた。
    ――――
    『あっついなぁ……。』
    「さっきから暑い暑い喧しわ……さっきアイス買ったやろ。」
    『せやけど……暑いもんは暑いやん……。』
     そんなどうでもいい話をしながらの帰り道。さっきじゃんけんで負けて買うことになったアイスはもうとっくに溶けていて、生温くなっている。
    『こんなとこに公園あったんやな。』
    「おー、俺もしらんかった。」
    『……ブランコ乗りたい。』
    「……暑いんやなかったの。」
    『ブランコの前に人は無力や。あれはな……目が合ったら乗るしかないねん。』
    「訳が分からん……。」
    『ほら、行こ!』
    「俺もう帰りたいわ……。」
     何となく見かけた公園で遊ぶ。ちびっ子数人がサッカーをしていた。
     ブランコなんて久しぶりに乗った気がする。小さい頃は全く気にしていなかったが、こんなに不安定なものだっただろうか。
    「お前立ち乗りは危ないやろ。」
    『良い子は真似しちゃダメやで。』
    「お前、何目線なん……。」
     何もしてない間もジリジリと太陽が照りつける。脳の奥の奥まで溶けてしまいそうだ。ちらりと横を見ると俺と同じ顔した片割れが、太陽に照らされてきらりと眩しく見えた。
    『腹減ったわ。』
     急に漕ぐのをやめた片割れは、唐突にそんなことを呟いた。なんてことの無いいつもの会話の延長線。
    「……お前さっきから我儘か。」
    『今日の夕飯なんやろなぁ。』
    「ハンバーグ……」
    『マジか!』
    「……食べたい。」
    『ちょっと殺意わいたわ。』
    「理不尽やな。」
     さて、と立ち上がる俺を見て、彼もブランコから飛び降りた。
    『帰るか。』
    「おっ、もう満足したんか。」
    『ブランコ欲に食欲が勝った奇跡的瞬間や。』
    「訳が分からんわ……なんやねんブランコ欲って……。」
     公園を後にし、また家へと歩きだした。その時だった。子供たちが遊んでいたボールが道路に転がって行ってしまった。それを追う子供に近づく暗い影と、大きな音が――。
    『あぶない!』
    「――?!」
     鉄の匂いと、スッキリしない夏の空気。不快な蝉の声が、サイレンと不協和音を奏でていた。
    ――――
    「じゃ、またな侑。」
    「おー、また明日な!」
     チームメイトと別れた後に、ひとつため息をつき、今までは二人で歩いていたはずの道を1人で歩く。道はこんなに広かっただろうか。
    「今日の夕飯何やろ……な、」
     答える人は誰もいない。赤く染まり出した空と静かすぎる公園。電柱の近くには萎れかけた花束とアイツの好きだった缶ジュース。
     またひとつ、ため息をつく。俺は3年生になっていたあれからもう1年は経っているのだ。
    ――――
    「……ただいま。」
    「おかえりなさい、侑。さっさと手洗っておいで。今日はハンバーグよ。」
    「おー!ハンバーグ!サムも喜ぶやろなぁ。」
    「じゃあ自分で食べる前に、治にも持ってってあげてね。」
    「おー、分かったわ」
     自分たちのよりも少し小さめのハンバーグ。こんなもんで足りるんだろうか。
    (……まぁ俺じゃあるまいしな。足りるやろ。)
    「……侑、持ってきたで。」
     仏壇に飯を置いてやる。
    「なぁ、ツム。」
     遺影に映る自分の顔は、何を問われても、清々しい笑顔のまま。まるで今日の暑さなんて全くものともしないような。
    「俺、本当にこれで良かったんよな。」
     今までずっと一緒にいた彼はもう既にここにはいない。もう話すことも、顔を合わせることもできない。
    「俺、ちゃんとお前みたいに笑えてるんかな……?」
     宮侑は語りかける。
    「もう1年も経ってんのに、いつまでもお前に縛られてる俺はなんなんやろなぁ。」
     しばらく沈黙が続く。
    「……また後で、飯取りに来るからな。」
    ――――
     パタン、と扉が閉まる。
    『……ほんっと、阿呆やなサムは。』
     あの日ほんとに死んだのは宮侑だった。生きているのは、宮治の方だ。
    『……俺もあいつが先に死んだら、お前に成り代わってたのかもしれんな。』
     あいつの気持ちはよくわかるような気がする。耐えられない気がするのだ。生まれてこの方ずっと一緒だった片割れが急にいなくなってしまう喪失感。いっその事、そいつになってしまえたら、なんて。
    『阿呆サム。』
     音にならない言葉が、部屋の空気に溶けて混じった。外では蒸し暑い夜の闇に何事も無かったかのように蝉が鳴いていた。
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    ❤❤❤❤❤😍😍😍😍
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    MOURNING夏油傑×五条悟 死ネタです。
    9月の初め頃、宿儺戦で悟に負けるフラグが立ってきた時に保険で書いたやつです。だって!最強だから負けるわけない……確かにここで悟が勝ったら味気無さすぎるかもだけど、戦線離脱六眼が使えなくなるくらいで死にはせん…だって最強だよ?って思ってます。でもターミナルって生死の狭間表現有り得るので諦めてない。可能性はまだある……生きて。万が一の万が一の話でした。
    序章「悟、本当にお疲れ。頑張ったね」
    目の前にいる傑が顔を綻ばせた。
    あの日と同じ言葉を同じ表情で。
    「あ……すぐ、る」
    だけど、知っていた。ここが現実なのか妄想なのか、それくらい。だってこれは夢の中で何百回、何万回と想像した光景で……
    「悟、こっちへおいで」
    傑はそう言って両手を広げる。目の前にいるのは最後に見た袈裟を着た傑じゃなくて、高専の、あの3年間の傑だった。少しの違和感を感じながらも、吸い寄せられるように傑の方へと歩みを進めれば懐かしい温もりに包まれた。
    「傑」
    「なに?」
    「コレ現実?」
    「そうか違うかで聞かれたら、そう、だよ」
    「そうか……俺、ははっ。そっか」
    傑の言葉に目を閉じれば一気に記憶が蘇る。生前の記憶、ってやつ。
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