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    風呂_huro

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    風呂_huro

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    D坂/わたあけ

    上を向いて歩こう「うえーを向ーいて、歩こーうぅー」
    「明智君、あまり上を見るものじゃないよ」
     瓦礫の上に座った明智は、私を見て手と足をぶらぶらするのを止めた。何だか惜しいような表情で、口をへの字に曲げた。
    「どうしてですか、こんなに綺麗な夜空じゃありませんか」
    「まだ君の身体は地上に慣れていないんだ、信号に弱いんだよ」
     明智は、私が着せた気圧適応型の棒縞着物をぱたぱたと手で動かした。そしてピョンと瓦礫から飛び上がって、念入りに計器を調べている私にくっ付いた。
    「何をなさっているのです」
    「座標を調べてるんだ、次の都市に行くにはどうするか―もう食料も少ないから、明日からは携帯珈琲を半分こしなきゃいけないよ」
     明智はそれを聞いて頬を少し膨らませた。
    「大変ですね」
    「大変なんだ。明智君は休んでていいから…もう少しで都市側と接続できそうなんだ。入国許可が下りさえすれば、僕達も受け入れてもらえるよ」
     そう言いつつ、計器から放つ回線を探りながら奮闘していると、明智は少し離れたところに座って、また上を向いた。そしてぼうっと瞬く星空を眺め、嘆息した。
    「こんなに広い宇宙の中で、君と僕は遭難しているのですねえ」
    「君は怖くないのかい?」
    「怖くありませんよ。君が居れば、僕はどこだって構わないのですよ」
     にこり。明智が笑うと、心寂しい私はいつだって元気が溢れてくる。
    「ヨシ、僕もガンバって交信してみるからね。都市に着いたら、明智君に新しい光学迷彩の下駄も買ってあげるよ」
    「では、僕は場を盛り上げましょう。また歌いますから、聞いてて下さいな」

     うえーを向ーいて、歩こーうぅー

     明智の透き通るような声色は、綻びた大地と瓦礫の上で、電波と一体になってハーモニーを奏でていた。


     (おわり)
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    recommended works

    sika_blue_L

    DONE幼なじみ345で5だけ♀。三十歳になってフリーだったら結婚しようって言わせたかっただけなのにこんなに膨らんだ
    十二年後の君たちへ 初めて彼氏が出来たのは、高校一年の夏だった。
     
     蝉の鳴き声が一層喧しい夏休み前の放課後、呼び出されたのは日陰になっている校舎裏。噂で聞いた話だが、どうやらそこは定番スポットというやつらしい。
     
     こんなことを言いたくはないが、正直なところまた?というのが感想だ。目立つ容姿をしているのは自覚している。
     
     肩甲骨まであるゆるくウェーブのかかった髪、甘い印象の垂れた目じり、形の良い桜色の唇。あまりいい思い出はないが発育もそれなり。生まれた瞬間から、今まで片時も途切れることなく可愛い可愛いと他者から愛でられて生きてきた。
     
     雪宮剣優は可愛い。かなり可愛い。これは嫌味でもなんでもない。事実そのもの。
     
     これまでに、容姿をめぐった人間関係のトラブルは色々あった。一悶着どころの話ではない。特に思春期が花開く中学時代。地獄をくぐり抜けてきた、と言っても過言でない。仲の良かった友人から、好きな人を取った、信じてたのに! なんて難癖を付けられたのも一度や二度のことではない。箱を開けたら、日直で話したことがある男子生徒が私のことを好きだと友人に打ち明けた、ただそれだけのことだった。私に非はないと訴えるも、ティーンの恋は盲目。彼女とは縁が切れ、卒業するまで不快な居心地の悪さを覚える羽目になった。
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