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    みしま

    @mshmam323

    書いたもの倉庫

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    みしま

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    ヴィクターとジョニーとVとタバコの話。短い。夜想曲直後想定。

    #cyberpunk2077
    #サイバーパンク2077
    cyberpunk2077

    灰の残り香 目蓋を開いたジョニーは周りを見渡し、そこが幾度となく訪れたヴィクター・ヴェクターの診療所で、とりあえずこの体はまだ生きているようだと安堵した。処置台から蹴落とした先客はいつの間にかいなくなっている。
     Vはしばらく目覚めそうにない。今はまだそのほうがいいだろう、とジョニーは思った。彼が表に出ようとすれば、体は途端に反発しだすはずだ。
     ジョニーの覚醒に気づいたヴィクターは、デスクをぐいと押して椅子のキャスターをガラガラ言わせながら処置台の横へと滑ってきた。胸元からペンライトを取り出してVのオプティクスの調子を確認し、次に聴診器を胸に当てる。
     リパードクは淡々と診察をするばかりで、一向に口を開こうとしない。ジョニーはしびれを切らして言った。
    「何か言うことあるだろ」
    「何も」とヴィクターは静かに返した。「礼でも言ってほしいか?」
     ジョニーは憮然としてヴィクターを睨みつけ、そして気づいた。彼が目の前の相手が友人の皮を被った別人だとわかっているのだ、ということに。その声色は落ち着いているが、硬い頬や些細な仕草が隠しきれない怒気を滲ませている。
     ジョニーはこっそりと肩をすくめた。それから懐へ手をやって、シガレットケースを取り出した。だがライターが見つからない。ここへ来るまでの道中で落としてきたに違いない。
    「先生、火ぃくれよ」
     ジョニーがタバコを掲げる。ヴィクターはタッチディスプレイに顔を向けたまま、色の入った眼鏡の奥で目をすがめた。
    「ここをどこだと思ってやがる?」
    「いいだろ。おれたちしかいねえんだし」
     そう言って、挑発するかのようにタバコを指先で揺らす。ヴィクターはVの形をしたジョニーしばし見つめ、そして何の断りもなしにシガレットケースから一本抜き取った。それを咥えてデスクの上に転がっていた携帯バーナーを取り上げ、やはり無言で火を入れる。それからやっとジョニーのタバコにも火をつけた。
     その様子をぽかんとして見つめるジョニーの前で、ヴィクターは深々と一口吸った。
    「吸わないもんだと思ってた」
    「ああ。でも嫌いなやつがいるときは別だ」
     にこりともせずに言うヴィクターに、ジョニーは思い切り苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

     そのまま、Vは帰ってこなかった。
     考えをまとめる時間が必要だろう、とミスティがVをビルの屋上へ案内した。結論を伝えに一度は戻ってくるものとヴィクターは期待していたが、それはやはり一方的な期待に過ぎず、望み薄だともわかっていた。そしてその通りになった。
     同じ屋上の上、ヴィクターは手すりに寄りかかり、手にしていたタバコをゆっくりと吸った。ビル風に散る紫煙の向こうに、あの日Vが見たであろう景色を透かし見ながら。闇夜を照らすナイトシティ。カラフルなネオンサインに色づいたスモッグ、絶えることのない窓明かり、遠い喧騒。皮肉なことに、ここからならば数ブロック向こうのビルに設置された〈Relic〉の壁面広告がよく見えた。
     きっとあの坊主も見たんだろう。ヴィクターは思った。そして彼が何を思い、何を思い返し、あの亡霊と何を話し、どんな結論に達したのかを。
     その結論に意義を唱えるつもりはない。そんな権利もない。おれはできるだけのことをした。
     できるだけのことをしても、得られないものもある。現実とは、ナイトシティとはそういう場所だ。ヴィクターはそれを知っていた。だからと言って、それがあの若者に降り掛かってもいいとは思っていなかった。
     風向きが変わり、タバコの煙が顔に吹き寄せる。吸い込んだ紫煙の香りに、あの困ったように笑う笑顔が蘇った。本来、彼の体臭にタバコの香りは無かった。硝煙とガンオイルが後を引く、体温の高い生き物を彷彿とさせるような、柔らかく暖かな匂いがしていた。そのはずなのに。
     ヴィクターは小さく咳き込んだ。
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    みしま

    DONEiさん(@220_i_284)よりエアスケブ「クーパーからしょっちゅう〝かわいいやつ〟と言われるので自分のことを〝かわいい〟と思っているBT」の話。
    ※いつもどおり独自設定解釈過多。ライフルマンたちの名前はビーコンステージに登場するキャラから拝借。タイトルは海兵隊の『ライフルマンの誓い』より。
    This is my rifle. マテオ・バウティスタ二等ライフルマンは、タイタンが嫌いだ。
     もちろん、その能力や有用性にケチをつける気はないし、頼れる仲間だという認識は揺るがない。ただ、個人的な理由で嫌っているのだ。
     バウティスタの家族はほとんどが軍関係者だ。かつてはいち開拓民であったが、タイタン戦争勃発を期に戦場に立ち、続くフロンティア戦争でもIMCと戦い続けている。尊敬する祖父はタイタンのパイロットとして戦死し、母は厨房で、そのパートナーは医療部門でミリシアへ貢献し続けている。年若い弟もまた、訓練所でしごきを受けている最中だ。それも、パイロットを目指して。
     タイタンはパイロットを得てこそ、戦場でその真価を発揮する。味方であれば士気を上げ、敵となれば恐怖の対象と化す。戦局を変える、デウスエクスマキナにも匹敵する力の象徴。
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