臆病者の大誤算『…………で、次のシーン。「寧々が台詞を言いながらはける」だな』
「……うん。こんなものかな。ごめんね司くん、迷惑をかけてしまって」
『迷惑かけた、というのであれば、もう少し綺麗に字を書くように心がけた方がいいんじゃないか?』
「うーん、痛いとこを突くねえ」
司くんの言葉に、思わず苦笑してしまう。
今は10時半。
普段であれば、こんな風に電話したりすることはないのだけれど、今回は事情があった。
僕は台本に、演出関係のメモをひたすら書いている。それこそ、台本が真っ黒になってしまうほどに。
あまりに酷い時は新しい台本を用意して、そこに現在確定している演出を書いているのだが。
たまに急いで書いてしまい、自分でも読めない時が発生してしまうのだ。
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