バスティン・ケリーの日記 ○月◇日
今日も主様が屋敷に帰ってきてくれた。嬉しい。
「主様が帰ってくる前に、部屋の掃除をして換気をする。そうすれば屋敷に帰ってこられた時、気持ちよく、快適に過ごしていただけますよね」
シャンデリア、窓、棚・机の上、小物、そして床。窓を開けて、外の新鮮な空気を入れる。ベリアンさんの指示通り、部屋の掃除を全て完了させた。
俺が誰かのために尽くすなんて意外だ。机の上に飾ったピンクのアネモネの花を見ながら、そう思う。俺が花言葉を知っているだなんて意外だと、あの人は思うだろうか。主様の笑顔が見たくて勉強した。それを知ったら、あなたは喜んでくれるだろうか。
部屋の扉が軋むような音を立ててゆっくりと開いた。扉の向こうに立つ人影を見て、きちんと姿勢を正してから、その場で礼をする。
「お帰りなさいませ。主様」
ただいま。
聞こえた愛おしい声に、俺は胸を弾ませた。