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    kototo7777

    @kototo7777
    二次創作、小説、クロイン中心。短め、供養、没案、なんとなくこっそり置いておきたいという作品をアップしています。

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    kototo7777

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    ED後夫婦になったクロイン。クロードの「本名」と「偽名」の話。

    呼び名「……ってことがあったんだ」
    「そうだったのですね、それは災難でしたね、クロ……いえ、カリード」

     ついつい、彼の本来の名前ではなく偽名の方を口にしかけて、イングリットはやはり慣れないなと眉尻を下げる。もう何度目だろうか。しかし、致し方ないではないかと思う。出会ってからずっとその「偽名」の方で彼を呼び続けていたのだから。そしてそのことは彼も承知してくれている。2人だけの時は以前の名前で呼んでくれていいとは言ってくれていた。そして、今は王城の2人の寝室。2人でベッドに腰かけ、今日あった出来事について色々話をしつつ、そろそろ寝ようかといった頃合いで誰もいない。2人きりの状態だ。

    「わざわざ言い直さなくてもいいんだけどなあ」
    「いえ、普段から呼びなれておかないと。お義父様やお義母様、家臣の方達の前でうっかり言ってしまうのはさすがにまずいでしょう」

     自分は今はパルミラ国王の妻で、そして王妃だ。その自分が公の場で国王の名前を間違えることなどあってはならない……イングリットはそう考えていた。そんな彼女に対してクロードは「お前が思っているほど皆気にしないって」と苦笑する。

    「また、適当なことを。いいですか、クロード、こういった些細なことでも積もりつもれば信頼を失うことに……あっ」

     言葉を詰まらせるイングリットのしまったといった感情が露わになった顔に、クロードがぷっと、大げさなほどに吹き出す。

    「ほら、無理すんなって。ただでさえ普段は色々と気を張り詰めてる状態なんだ。俺といる時くらいは気兼ねなく過ごして欲しいんだがな」

     確かにパルミラに来てから新しい環境に慣れるのに日々、四苦八苦している状態ではある。彼の言う通り不本意ではあるが彼の提案に甘えてしまおうか、という考えに傾きかける。そして「それにさ」とさらにクロードが言葉を続ける。

    「俺は偽名で呼ばれることも嫌いじゃないんだ。素性を隠すのが目的だったが、今では自分でも不思議なほど愛着が湧いちまっててな。お前や先生、フォドラの皆からは『クロード』って呼ばれた方がしっくりくる」
    「そう……なのですか」

     懐かしそうに目を細めるクロードの表情が意外だった。フォドラからパルミラに旅立つ時、彼はフォドラに何も未練がないように見えた。自分のやることは全てやった……そんな、清々しい顔つきだったのが印象に残っている。そのことをイングリットは思い出し束の間考えた後に「わかりました」と、笑顔で頷いた。

    「では、あなたと過ごす時は日替わりで呼び方を変えたいと思います。今日のところは『カリード』で」
    「?なんだって、そんなまぎらわしいことを?」

     不審げに眉を顰めるクロードに、イングリットは薄っすら頬を染めながら理由を口にする。

    「あなたは『クロード』と呼ばれたほうがしっくりくるとのことですが……。私としては『カリード』でもしっくりくるようになって欲しいのです。本当の名前のあなたともっと親密になりたい、といいますか」

     これは自分の気持ちの問題でもあるかもしれない。名前が違っても彼は彼だ。どちらの名前で呼んでも実際のところ変わりはないだろう。それでも、イングリットの中でなんの違和感もなく彼の本名を呼ぶことが出来るようになった時、より彼との関係が深まるのではないかと思った。しかしクロードはそんなイングリットの言葉に対し、少し気まずそうな顔で意外なことを口にした。

    「本名で呼ばれるの、実は少し落ち着かないんだよな」
    「えっ……嫌なのですか?」
    「いや、お前にそう呼ばれるのは嬉しいんだが……今まで俺の名前を呼ぶのは俺を憎んでる奴らばかりだったからさ。ああ……親やナデルとか一部の家臣は別だが。だから余計に『クロード』の名前が気にいってるのかもな」
    「クロード……」

     クロードがフォドラとパルミラの混血ゆえに随分と辛い幼少を過ごしていたのだという事情はこちらに来てから知ったことだ。それなら2人の時はせめて『クロード』と呼ぶべきなのか。

    (でもそれでは……)

     迷ったのは一瞬だった。すっと背筋を伸ばし、真っすぐな瞳でクロードを見つめる。

    「カリード!」
    「うおっ!なんだよいきなり」

     突然、勢いよく本名を呼ばれたクロードがびくっと、たじろぐ素振りを見せる。

    「それなら、私がこれからたくさん『カリード』と呼ぶようにしますから。お義父様とお義母様から貰った大事な名前でしょう?これまでの嫌な思い出が完全にではなくとも払拭できるように……そうですね、日替わりで、と言いましたが3日のうち2日は『カリード』にしましょう」
    「ははっ……なんだよ、それは」

     クロードは面食らった表情を浮かべるも、すぐにその相好を崩した。

    「そうだな。お前がこれから、その名前を呼び続けてくれるなら……」

     クロードがイングリットの腰に腕を回し、彼の側へと引き寄せる。互いの視線がかち合い、どちらからともなく口付けを交わした。

    「ありがとうな、イングリット。改めて『カリード』をよろしく頼む」
    「勿論です……カリード、愛しています」

     愛おしさを一杯に込めイングリットはその名前を口にした。
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    kototo7777

    MOURNINGクロイン。グロンダーズ会戦後、祝勝会の時の2人。関係としては両片思いの状態。もっと手直ししたり、もう少し色々書き加えたいと思っていたのですが長らく放置していたため供養。
    仲間だから 同盟、帝国、王国……三つ巴の戦いとなったグロンダーズ会戦。深い霧が立ち込める中、敵味方がはっきりと認識できない中でのその凄惨な戦いは同盟軍の勝利に終わった。ファーガスの王子ディミトリは帝国兵に討たれた。アドラステア皇帝エーデルガルトは退却し、帝国はメリセウス要塞の守りを固めつつある状態だった。

     会戦から数日後、ガルグ=マク大修道院の大広間では此度の戦の祝勝会が行われていた。討つことは叶わなかったものの皇帝自らが出陣してきた戦いで勝利を収めたことは大きい。まだ戦いは終わっていないという緊張感は持ちつつも、同盟の兵達はこの勝利の宴で、束の間の休息ともいえる時を過ごしていた。

    「盟主殿!ベレト殿!」

     祝勝会では当然、同盟軍の中心的立場である盟主のクロード、そして的確な指揮で同盟軍を勝利に導いたベレトの2人が兵士達から引っ張りだこの状態だった。2人も勿論兵士達を労うために忙しく大広間内を駆け回っていた。そして、ようやく乾杯の音頭からしばらく続いていた盛り上がりが落ち着いた頃、クロードは大広間を見渡して、ある人物の姿がないことに気付く。
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    kototo7777

    DONEクロイン。ED後パルミラ宮中で。捏造名前ありオリジナルキャラ視点(ナデルの姪で名前はナディア。イングリットの新米侍女兼護衛)のお話なのでご注意ください。クロードは本名表記。
    思い出(※捏造キャラ視点その2) 早朝……ようやく日が昇るかといった頃合いの時間、パルミラ王城内の訓練場では掛け声と共に槍を交わす音が響き渡っていた。

    「させません!」

     相手の攻撃をかわしたナディアは、体勢を立て直し反撃に出た。相手は渾身の一撃を放ってきたが、なんとか、かわすことが出来た。大きく隙が生まれているはずだった。勝てる、と確信する。

    「遅い!」
    「えっ!?」

     速さには自信があったのだが、相手の方が上手だった。あると思っていた隙が全くなく動揺したところを打ち込まれ、気づくと手にあったはずの槍が床に転がっていた。

    「このくらいにしておきましょう」

     ふーっと、息を吐き、目の前の女性は槍の構えを解いた。その女性をナディアは複雑な面持ちで見つめる。白い肌、ブロンドの髪、一見華奢にも見える、すらっとした体形。パルミラの子供向けの絵本によく出てくる異国のか弱いお姫様がまさに彼女のような外見をしていたように記憶している。だから、きっとこの女性もそうなのだろう、自分が守らねば……そう初対面の時は思ったのであるが。
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    kototo7777

    MOURNINGクロイン供養。支援CとBの間のクロードの思考。グリットちゃんは、ほぼ出ない。
    人を信用できていない頃のクロードは、どんなことでも疑ってかかっていたんじゃないかという話。(実際のところ、そこまでクロードは考えてなくて、もっと軽い気持ちでの会話かもしれませんが……)
    「もう少し柔らかくならないもんかねえ」

     ぷんすかと怒りながら去って行くイングリットの後ろ姿を見送りながらクロードは溜息をつく。彼女に説教を受けるのは何度目になるか。なんだって他学級の彼女にそこまで言われなきゃならないのか。突然現れたリーガン家の嫡子にして次期盟主。そんな自分に対し不振の目を向ける者、警戒する者は決して少なくない。しかし彼女は王国貴族だ。互いに直接的な利害はないように思えた。

    「何か目的があるってことか?調べてみるかね」

     王国貴族のガラテア家が自分を探る理由。主な貴族達の情報は頭に叩き込んでいるが、まだまだ自分が知らないことはたくさんあるだろう。きっとイングリットが自分に関わらなければならない理由があるはず……そう思った。利がないのに、わざわざ、あんな風に構ってくるなぞおかしいではないか、と。しかし、様々な伝手も使い調べたものの、特にこれといった有力情報は掴めなかった。
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