ダイヤモンドの一途② アベラルドのわがまま、を叶えるチャンスが巡ってきたのは、それから数日後のことだった。
たまたま公務のキャンセルが重なって、ぽっかりと予定の空いた午後。レティシアはベルグホルム邸に招かれた。
ある程度の年齢になって以降、王城のアベラルドの控室も含めて、レティシアは彼の私的なエリアには立ち入らせてもらえなくなっていたから、正直驚いた。それも応接室や客間ではなく——アベラルドの私室のソファに、レティシアは座っている。
初めて入ると言って差し支えないその部屋の中をあちこち見てまわりたい気持ちを懸命にしまって、レティシアは使用人が淹れる紅茶をアベラルドの向かいで待つ。
(何を言われるのかしら……)
内密な話をするなら、ここより相応しい場所はいくらでもある。わざわざレティシアを私室に招き入れる必要のある『わがまま』ということなのだろうが、それを想像すると、直視してはいけない部分が疼いて、レティシアは自分で自分に困ってしまう。
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