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    @94_ROM_12
    稲妻の目金君関連のみ

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    ゲーム版GO設定。ノベルとマンガかが久し振りに語り合う話。野部流の設定捏造要素を含みます。

    #メガネハッカーズ
    glassesHackers
    ##CP無し

    大切な友よ秋葉名戸学園を卒業して早数年。ラノベ作家として日々活動している野部流来人は、現在東京から少し離れた地方都市にて生活をしていた。自身の作品に登場する土地のイメージに近い場所を探し出し、其処で執筆活動を行う。かつての仲間達からはそんな頻繁に引っ越していては大変じゃないのかと気をかけさせてしまってはいるが、この生活は野部流に確かな刺激をもたらしていた。そんな一風変わった日々を過ごしていた最中、出版社との仕事の兼ね合いで久し振りに稲妻町の近くまで行くこととなった。
    その時浮かんだのが長らく創作活動を共にした戦友、漫画萌の顔であった。萌とはシルキーナナが完結したのを機に長らく共同での仕事はしていないが、彼らが手掛けているゲーム制作のシナリオ編集を手伝う等という形で今でも交流は続いている。とはいえそれは電子メールやネット通話を介したやり取りであり、最後に直接顔を合わせて話したのはもう何年も前の話だ。
    もし都合が合えば、久し振りに彼と直接話がしたい。そう考えた野部流は萌にメッセージを送ると、数分もしないうちに『是非とも会おう』といった了承の意を返してくれた。その文章は萌も久し振りの再会を喜んでくれていると分かるほどに興奮した様子で、野部流は旧友の変わらぬ振る舞いに小さく笑みを浮かべる。そのまま野部流は具体的にいつからなら会えるか、何処で会うか等を萌とやり取りを交わした。

    そして迎えた当日。事前に『僕らのアジトは見つけ辛いから路地裏の入り口で待っているよ』と言われていた為、野部流は一人商店街へと歩みを進める。久し振りに訪れる稲妻商店街は様変わりしており、且つてそこに在った店舗を探す方が困難な程であった。昔メイド喫茶があったのはこの辺りだった筈だと歩き続けると、その付近にある路地裏へと続く道の入り口に萌の姿があった。萌は商店街の入り口辺りに目線を向けながら目線を泳がせていたが、その視界に野部流を捉えると笑顔で手を挙げこっちだと呼びかけてくる。
    中学の頃から変わらぬピンクのベレー帽を被り、藍色のベストにピンクのネクタイ、レンガ色のスラックスやブラウンのコンバットブーツに身を包んだその姿は男がする格好にしては随分と可愛らしく、けれど萌によく似合う服装であった。以前はペンで纏められていた長い髪も肩程の長さにまで切られ緩く波打っている。
    学生時代とは違うその出立が過ぎ去った年月を感じさせ、昔と同じその笑顔が変わらぬ友情を思い出させてくれた。

    「久しぶりだねノベル」
    「久しぶりだねマンガか。修羅場だと聞いていた割には随分と元気そうだね」
    「あはは。まあそれについても色々と聞いて欲しい話があるからさ、早速だけど僕らのアジト__メガネハッカーズのアジトに来てよ」
    「ハッカーのアジトに入ってもいいのかい?」
    「大丈夫だよ。今はハッカーとしての仕事は一時休止しているから」

    こっちだよ、と萌は野部流を先導するように前を歩き薄暗い路地裏へと入っていく。どこかディープな雰囲気を漂わせるゲームセンターに入店し、クレーンゲームやアーケードゲームの数々に目もくれずに萌は店内の奥にある灰色で無機質な扉へと手をかける。そしてその扉をノックもせずに大きく開いた。

    「__っあーーー!決まらない!『幕末!サムライファイターズZ!』における岡田以蔵の最期が!決まらない!どう描けばいいのですか彼の最期を!!!」

    扉を開けてすぐさま耳をつんざく男の悲痛な叫び声。部屋の中に入るとパソコンの前に座り込み頭を抱えて呻く目金の姿がそこに在った。

    「お前がこの史実をちゃんと入れてえって言い出したんだろうが」
    「そうなんですけど、そうなんですけどお……!」

    その目金の傍にいたのは且つてのチームメイトである芸夢で、荒っぽい口調で目金を叱咤している。二人は目の前にある作業に夢中で野部流が部屋に入って来たと気付いていない様子であった。作業を邪魔するのは忍びない為、萌に了承を取った上で一先ずアジトの中で待たせてもらう事とした。

    「……目金君、荒れてるね」
    「そうだねえ、何日か前からあんな調子でさ。お陰でアジトはずっと混沌としているよ。まあ、あの状態の目金君が見ていて一番面白いからいいんだけどね」
    「……。マンガか、君はこの数年間で随分と意地悪になったね」
    「ええ?そうかなあ?」

    萌は野部流の言葉にくすくすと笑い、その目線を二人に向ける。
    萌が目金達と共にハッカーとして活動しゲーム制作を行う様になって数年。萌が目金と積極的に行動を共にする様になってから7,8年の年月が経つ。あれは確かまだシルキーナナが完結していない高校生の頃。高校進学を機に萌は目金と放課後を共に過ごす機会が増え、野部流も萌から目金とどの様に過ごしているのかを知らされていた。

    『今日は目金君とあの作品について語り合ったんだけどさ、あっという間に時間が過ぎ去っていったよ』
    『今度目金君と久し振りに中学サッカーの試合を観に行く事になったんだ。楽しみだなあ』
    『目金君の話す思い出話って当たり前の様にハックや情報の違法引き抜きとかが出てきてちょっと怖いんだよね……』

    時に萌の楽しげな笑顔に元気を貰いながら、時に萌の語る目金の言動にハラハラしながら、萌の口から語られる話を野部流は作業時の楽しみとして聞いていた。
    そんな日々が続いて1年と数か月がたったある日、萌が異様に興奮した様子で作業場にやって来て、こう語り出した。

    『ノベル、聞いてよ!前々から僕は目金君を馬鹿な子だと言ってはいたけど、そんな話じゃなかった。彼はどうしようもない大馬鹿者だ!中学サッカーのあるべき姿を取り戻すために自身の将来をそれにすべて投じるだなんて、信じられる?!ありえないよ本当に!』

    そう語る萌の目は爛々と輝き、その顔には眩しいまでの笑みが浮かべられていた。それはまるで憧れのヒーローと出会えた無邪気な子供かの様で『きっとこの友人は目金君に心を奪われてしまったのだろう』と明確な根拠も無く思ったのを今でも覚えている。
    それ以来、萌は目金のやる事成す事に今まで以上に強い関心を示すようになった。当初は執筆活動の合間に目金と共に居たのが、何時しか目金と共に居る時間の合間に執筆活動を行う様になっていた。勿論、野部流は萌のその姿に不満を抱いたことは無い。萌はその限られた時間の中で完璧な仕事をこなし、クオリティを一切落とさずに漫画を描き続けた。自身の休む時間を犠牲にして。

    それからだ。野部流がシルキーナナの完結を機に萌と共同で行う仕事に一度区切りをつけようと考えたのは。重ねてだが、野部流は決して萌に不満を抱いたわけではない。一人の友人として、萌の事が心配になったのだ。この生活を何年も続けていたら彼の体は何れ限界を迎えてしまう。執筆活動が第一で無くなった萌をこれ以上付き合わせるのは忍びないと、野部流は思ったのだ。
    とは言えこれは互いにとってネガティブな別れ等では無かった。野部流は今一度ラノベ作家としての活動に専念してみたいとは思ってはいたし、何も共に仕事をしなくなったからと言って萌との交流が途切れるわけでもない。今の自分達にはこの選択が最も適している。そう考えた結果であった。

    そして今。かつての戦友は漫画家としての活動の第一線から退き、メガネハッカーズの一員としてその才を発揮し続けている。畑違いとはいえ、創作というジャンルに身を置き続けている萌の腕が鈍っていることは無いだろう。だが、古くからの友人として、ついこう訊ねてしまった。

    「……ねえ、マンガか」
    「なんだいノベル?」
    「ゲーム制作はとても刺激的な仕事だとは思うけど、君は自分自身の作品を書かなくてもいいのかい?」

    メガネハッカーズとしての活動に注力しだしてからの萌は、漫画家としての活動は短期連載や読み切りの仕事ばかりで、長期連載の類は全く行っていない。友としてはメガネハッカーズの一員として日々邁進する萌を応援しているのだが、昔共に作品を作っていた仲間としては彼が漫画家としての仕事そのものを行わなくなってしまうのではと少し心配してしまうのだ。

    「大丈夫だよ。君も知ってくれているだろうけど読み切りの漫画は幾つか書いてるし、趣味でイラストや漫画も描いているしね。……それに、この特等席を手放すつもりは更々無いんだ。漫画はその気になればいつだって描けるだろうけど、メガネハッカーズでの日々は今この瞬間しか味わえないだろうからさ」

    そう言って萌は目金を見つめる。その目には昔と変わらぬ輝きがそこに在り、今の萌の居場所はここなんだと野部流は数年振りに理解させられる。

    「そう。どうやら、余計な心配だったみたいだね。……マンガか、君さえよかったら、またいつか一緒に作品を手掛けないかい?」
    「え?」
    「勿論、今すぐにとは言わないよ。マンガかがメガネハッカーズでの活動を大事にしているように、僕は君の描く漫画のファンなんだ。漫画萌の代表作がシルキーナナ以降更新されないなんて、僕には受け入れがたい話だからね」
    「……うん。いつかきっと、一緒に仕事をしよう。その時までに僕も腕を磨いておくとするよ」
    「ははは、それは楽しみだね」

    そんなやり取りを交わし、野部流は萌と和やかに談笑を続けていく。
    アジトに来てから目金の呻き声が途切れることは無く、ただひたすらに云々とうなり続けている。このまま目金の仕事が一区切り付くのを待つか、それともいっそ今声をかけて無理やりにでも休憩させた方が良いのか。自身がすべき行動はどちらなのかと瞬時悩んだが、どちらにせよそれを行動に移すのは萌との会話が途切れてからでも遅くないだろう。そう結論付けた野部流は、目金と芸夢の声をBGM代わりに聞き流しながら、積もりに積もった身の上話に花を咲かせ、楽しいひと時を過ごしていくのであった。
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    ROM

    REHABILI「嘘はまことになりえるか」https://poipiku.com/4531595/9469370.htmlの萌目の2/22ネタです。22日から二日経ちましたが勿体無い精神で上げました
    猫の日「……えっと、つまり。漫画君は猫耳姿の僕を見たいのですか?」
    「今日は2月22日だろう?猫の日に因んだイベント事をこう言う形で楽しむのも、恋人がいるものならではの体験だと思うよ」

    2/22。2という数字を猫の鳴き声と準えて猫の日と呼ばれているこの日。そのイベントに乗じてインターネット上では猫をモチーフとしたキャラクターや猫耳姿のキャラクターが描かれたイラストが数多く投稿されている。そして、猫耳を付けた自撮り写真が数多く投稿され、接客系のサービス業に勤めている女性達が猫耳姿になるのもこの日ならではの光景だろう。
    古のオタクを自負する萌にとって、猫耳とは萌えの象徴であり、身に付けたものの可愛さを最大限までに引き出すチートアイテムである。そんな最強の装備である猫耳を恋人にも身につけて欲しいと考えるのは自然な流れの筈だ。けれど、あくまでそれは普通の恋人同士ならの話。萌と目金の間に結ばれたこの関係は、あくまで友として萌と恋人のごっこ遊びに興じる目金と、目金に恋慕する萌という酷く歪な物であった。
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