義手①賑やかな宴会中。
酔った連中が大声で騒ぎ自らの肉体を披露し始める。
笑いながら見ていた李斎だったが、「私もそろそろ良いか」と呟くと立ち上がる。
胸元を緩め左手を合わせの中に深く入れる。
騒いでいた連中が一気に静まりその場の全員が硬直する。
顔を赤らめゴソゴソと自分の体を触る彼女を麾下が止めようとするもいいから、と気にしない。
驍宗ですら口元に運びかけた杯の手を止め瞬きもせず見守る。
誰かがごくりと生唾を飲み込んだ。
襟元から手を引くと今度は右の袖口へ入れる。
勢いよく引き抜くと李斎手には一本の腕が握られていた。
この場の空気が冷めどこかで酒器が割れる音がした。
ふう、と安堵の息を吐き出すと卓に置く。
よく見るとそれは李斎の義手だった。
「朝から慣れない物を着けていたら疲れた。汗もかくし大変だった」
この場の全員が脱力し酒がこぼれ皿が割れた。
場の空気が変わったのはわかったが、李斎にはその理由がわからなかった。
※恋仲になってから義手を外すのは驍宗の仕事になった。