出られない部屋2 時刻は午後8時55分。
切原赤也は悩んでいた。大好きなゲームをする気にもなれず、かといって宿題に手を着ける事もなく自室のベッドでゴロリと仰向けに寝転び白い天井を見つめていた。
白──白いあの部屋。
「……◯◯しないと出られない部屋……か」
ただの噂か、誰かの創った話程度に思っていた部屋が実在していた事には驚いたが、今赤也の頭の大半を占めているのは、赤也の通う立海大付属中学校のテニス部の副部長である真田弦一郎と、先日あの不思議な部屋の中でキスをしてしまった事だ。思い出すと自然と手が唇に触れてしまう。
端的に言えば、またキスをしたくて堪らないというのが赤也の悩みだった。
中学2年生。初めてのキスは瑞々しい果実のように甘く魅惑的で、もう一度、いや出来ればこの先何度でも味わいたいと思えるような素晴らしい体験だった。
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