淋しさを温もりで癒やして(仮) 少し肌寒さを感じて、目が覚める。
隣に眠る虎杖くんが私のタオルケットを奪い取るようにして、くるまって眠っている。
ほんの数時間前まで私の下で、乱れ、甘い声をあげ艶っぽいすがたを見せていたとは思えないほどにあどけない寝顔。
そのピンクがかった髪の毛にそっと触れてから、私は彼の胸元に手を伸ばす。
起こさないようにベッドの上に転がすと大の字になって寝転がる。
胸元に、心臓の近くに散る赤い花びらのような痕は私がつけたものだ。
私はそっとそれに触れ、そして彼の心音を確かめる。
目が冷めたのは肌寒さからだけではなかった。
時にふと夢を見る。
虎杖くんに秘匿死刑を執行されるところを。
だから、確かめてしまう。
彼がここにいるのだと、彼の心臓は動いているのだと。
確かめずにはいられなくなる。
心臓の近くに痕を残すのも、独占欲からだけではない。
この心臓がずっと動いていてくれることを祈っての行為であることを、君は知ることはないだろう。
そう思いながら、私は苦笑する。
私よりも、本当は虎杖くんの方が怖いはずだ。
不安なはずだ。
いつ秘匿死刑が執行されるか、もしくは他の理由をつけられて殺されるか、わからないのだから。
それでも彼は笑う。
なんでもないことのように。
私はタオルケットをもう一度、肩までかけてやる。
高めの温度でクーラーをかけているとはいえ、薄着には少し肌寒いのだろう。
すっかり目の覚めた私はそっとベッドを抜け出す。
そしてキッチンでグラスに氷を入れ、ウィスキーを注いた。
のどが渇いたとか、酔いたい気分だとかいうよりも、少し口寂しい気がしていた。
グラスを持って、ベランダに出る。
もう真夜中だというのに、都会の街は灯りが消えることはない。
その灯りの届かぬ闇の中で、呪霊たちは今も蠢いているのだろう。
グラスに口をつけると、芳醇な香りとほろ苦い味が口の中に広がる。
こうやって、気持ちを通わせるようになって、体を重ねて。
私は、彼のために何かできているのだろうか。
ふとそんなことを思う。
もう、彼を失うことなど考えられないくらいに、私は虎杖くんに惹かれている。
秘匿死刑を執行されそうになったら、例え上層部にたてつくことになっても彼を奪いさってしまうだろうと思うほどに。
そんな日が来なければいいと、そう思う気持ちと、いつそんな日が来ても動けるように、と思う両方の気持ちが私の中でせめぎ合う。
そんなことを考えるなんて、少し疲れているのかもしれないなと思いながら、残っていたウィスキーを一息に飲み干すと、部屋に戻ろうとした。
「虎杖くん。起こしてしまいましたか?」
部屋の入り口に、タオルケットにくるまるようにして、ずるずるとそれをひきずった虎杖くんが立っていた。
「ううん。気づいたら、ナナミンおらんかったから。どしたん?」
「いえ、ちょっとのどが渇いたのと、少し、口寂しくて」
そう言うと虎杖くんは小さく笑う。
その笑みがすぐに艶やかなものへと変わると、ぱさりとタオルケットを落として、私に抱きついてくる。
「口寂しいなら、俺が寂しくないようにしてあげる」
そう言って虎杖くんの柔らかいが、少しカサついた唇が私のそれに重ねられた。
私は彼の腰を抱き寄せて、もっと深く、彼の唇を貪る。
この時が、2人で過ごす時が、少しでも長く続くように祈りながら。
グラスを片付ける私の後ろを虎杖くんはタオルケットを羽織ったままウロウロとしている。
少し頬が赤いのは、少し大胆な行動を取ったからなのかもしれない。
水を止めると、背中から抱きしめられる。
私よりも少し低い身長。
頭がコツンと背中にぶつかり、腕が腰に巻き付く。
「俺、簡単に死なんから。もっと、もっと、ナナミンと一緒にいたいから。だから、不安にならんで。俺を信じて」
「虎杖くん……」
本当にこの子には敵わない。
私の思っていたことを、考えていたことを、彼は敏感に感じ取っていたのだ。
私はそっと腰に回された虎杖くんの手を取って、その手の甲に口付ける。
そして体を反転させ、腕の中に愛しい人を抱き込んだ。
「死なせませんよ。私が、君を」
「うん。ずっと、ずっと一緒にいてな」
未来は誰にも分からない。
それでも私は、必ず彼を守り抜く。
この先もずっと彼が笑顔でいられるように。
共にいられるように……。
ナナミンを背後から抱きしめる悠仁って図と、ベランダでウィスキーを煽るナナミンと、タオルケットズスズス引きずる悠仁という、その図が浮かんでそれを全部詰め込んでしまいました💦💦
私の書きたいもんを書いてしまったので、あとはほんっと、栗さんのお好きにきりとってくださいー!!
って、ワガママ言ってすみません。