二宮組ネタ 死を覚悟した瞬間に見るソウマトウってやつがあって、懐かしい記憶が白昼夢みたいによみがえるらしい。
俺にとってそれははじめて拳銃を渡された日の記憶だった。
当時俺が所属していた組は三つ巴の抗争に巻き込まれていて、寝ても覚めてもミカド町のどこかで揉め事が起きていた。揉め事が起きれば怪我人が増えるし、怪我人が増えれば敵討するやつも出てくる。こういう負のループや悪循環は一度はじまったら止められない。ミカド町には夏の終わりにひれ伏した蝉みたいに道路のいたるところに血痕が散って、事態を見かねた当時のアニキがオヤジたちには内緒で俺に拳銃を渡したのだ。
つまり鉄砲玉になって、相手の組のトップを不意打ちでヤッてこい──と。
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