世界で一番温かい ある冬の日、俺とベレスさんは二人きりの旅行に赴いていた。宿泊するホテルに向かっている途中に立ち寄った店で、気のいい店主に『星が綺麗に見られる場所がホテルの傍にある』と教えてもらったので、せっかくだし夜に行ってみようという流れになった。
「ベレスさん、足元に気をつけてくださいね。よければ俺に掴まってください」
「ありがとう」
暗い山道をゆっくりとした足取りで突き進む。彼女が転んでしまわないように誘導していると、しばらくして目的地にたどり着いた。
「聞いた通り綺麗な景色ですね」
深い色の夜空にはきらきらとした星々が敷き詰められていて、思わず感嘆の息が零れそうになる。肩を並べて静かに満天の星を眺めていると、ベレスさんが突然、俺の服の裾を引いた。控えめな仕草に視線を下ろすと、白い手が差し出されていた。
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