諸星スピカ
DONEシルレスでアンケートの「熱があるのに」の話。ちょろっとR18くらい。熱があるのに熱があるのに
「……ベレスさん。なんで来ちゃったんですか」
寝台の上でぐったりと身体をもたげたシルヴァンが、かすれた声でそう言った。
部屋の扉を控えめに叩いてから入ったベレスは手にした籠を掲げて見せる。
「熱があると聞いたから看病に」
ベレスが寝台の側まで歩いて行くとシルヴァンは掛け物に頭まで潜り込んでしまった。
そこからくぐもった声で「駄目ですよ」と弱々しい声。
「うぅ……ベレスさんにうつさないために内緒にしたのに」
「できると思った?」
「バレる前に治る予定だったんですぅ」
仕方のない子だと、自分を慮りすぎる伴侶を見て苦笑する。ベレスは風邪など引いたことがなかったしうつされる心配ははなからしていなかった。けれど来るなと言われるのは分かりきっていたのでこうして不意をついたのは、やはり正解だった。
3459「……ベレスさん。なんで来ちゃったんですか」
寝台の上でぐったりと身体をもたげたシルヴァンが、かすれた声でそう言った。
部屋の扉を控えめに叩いてから入ったベレスは手にした籠を掲げて見せる。
「熱があると聞いたから看病に」
ベレスが寝台の側まで歩いて行くとシルヴァンは掛け物に頭まで潜り込んでしまった。
そこからくぐもった声で「駄目ですよ」と弱々しい声。
「うぅ……ベレスさんにうつさないために内緒にしたのに」
「できると思った?」
「バレる前に治る予定だったんですぅ」
仕方のない子だと、自分を慮りすぎる伴侶を見て苦笑する。ベレスは風邪など引いたことがなかったしうつされる心配ははなからしていなかった。けれど来るなと言われるのは分かりきっていたのでこうして不意をついたのは、やはり正解だった。
amakasuS
DOODLEむそばんくんと先生が最後に会ったときのお話。終わるむそばんくんと始まるベレス 1
『北壁』の様子が思わしくない。聞いた足は自然と北へと向いた。
数十年ぶりの北部であった。長く南方に親しんだ肉体はまだ麦も刈られぬ晩秋の風にふるえ上がった。旅の相棒を務める軍馬でさえも旧ガラテア領に入る頃には音を上げて、領境の宿に銀を置いて預けざるを得ないほどだった。
ゴーティエ領に入ったところで、気温はさほど変わらなかった。しかしじきに重い雲が行く手を阻み始めた。夕暮れに藍色を見せる山脈を覆う氷の扉。荷を抱えて踏み出すたびに肌を撫でていく粉の雪。その優しげな儚さは、その実、知らぬうちに体温を奪っていく凍み雪であり、半日もその中を進んでいれば、身体は芯まで冷え切っていた。
ああ、寒いな。頬の産毛は吐く息を瞬く間に結晶化させるが、当の睫毛には頑なに生を主張する体温で溶けた雪が宿った。しかしじきにそれも凍った。どこまでも白い世界に、高く天馬が飛んでいく。
8131『北壁』の様子が思わしくない。聞いた足は自然と北へと向いた。
数十年ぶりの北部であった。長く南方に親しんだ肉体はまだ麦も刈られぬ晩秋の風にふるえ上がった。旅の相棒を務める軍馬でさえも旧ガラテア領に入る頃には音を上げて、領境の宿に銀を置いて預けざるを得ないほどだった。
ゴーティエ領に入ったところで、気温はさほど変わらなかった。しかしじきに重い雲が行く手を阻み始めた。夕暮れに藍色を見せる山脈を覆う氷の扉。荷を抱えて踏み出すたびに肌を撫でていく粉の雪。その優しげな儚さは、その実、知らぬうちに体温を奪っていく凍み雪であり、半日もその中を進んでいれば、身体は芯まで冷え切っていた。
ああ、寒いな。頬の産毛は吐く息を瞬く間に結晶化させるが、当の睫毛には頑なに生を主張する体温で溶けた雪が宿った。しかしじきにそれも凍った。どこまでも白い世界に、高く天馬が飛んでいく。
こあめ
DONE現パロシルレス花束 最近のシルヴァンは、週末にベレスの部屋を訪れる度、小さな花束を持ってくる。
「俺だと思って可愛がってくださいね」
なんてことを言いながら渡してくるのでいつも素直に受け取っていたのだが、毎週のように手土産として持参されるとさすがに申し訳なさを感じてしまった。
「どうして毎回花束を持ってきてくれるの?」
改めて疑問をぶつけると、彼はしゅんと肩を落とす。
「もしかして迷惑でしたか?」
「ううん、嬉しいよ。ただ、毎回買ってくるのは大変じゃないかと思って」
貰ったばかりの花束を早速花瓶に活けようとリボンを解く。外装と包まれた花の色のバランスも毎回ぴったり合っていて、もしかしたら店の人と色々と相談しながら包んでいるのかな、なんて想像をする。
1270「俺だと思って可愛がってくださいね」
なんてことを言いながら渡してくるのでいつも素直に受け取っていたのだが、毎週のように手土産として持参されるとさすがに申し訳なさを感じてしまった。
「どうして毎回花束を持ってきてくれるの?」
改めて疑問をぶつけると、彼はしゅんと肩を落とす。
「もしかして迷惑でしたか?」
「ううん、嬉しいよ。ただ、毎回買ってくるのは大変じゃないかと思って」
貰ったばかりの花束を早速花瓶に活けようとリボンを解く。外装と包まれた花の色のバランスも毎回ぴったり合っていて、もしかしたら店の人と色々と相談しながら包んでいるのかな、なんて想像をする。
こあめ
DONE去年のイベントで配布していたシルレスの小話です現パロ
世界で一番温かい ある冬の日、俺とベレスさんは二人きりの旅行に赴いていた。宿泊するホテルに向かっている途中に立ち寄った店で、気のいい店主に『星が綺麗に見られる場所がホテルの傍にある』と教えてもらったので、せっかくだし夜に行ってみようという流れになった。
「ベレスさん、足元に気をつけてくださいね。よければ俺に掴まってください」
「ありがとう」
暗い山道をゆっくりとした足取りで突き進む。彼女が転んでしまわないように誘導していると、しばらくして目的地にたどり着いた。
「聞いた通り綺麗な景色ですね」
深い色の夜空にはきらきらとした星々が敷き詰められていて、思わず感嘆の息が零れそうになる。肩を並べて静かに満天の星を眺めていると、ベレスさんが突然、俺の服の裾を引いた。控えめな仕草に視線を下ろすと、白い手が差し出されていた。
1591「ベレスさん、足元に気をつけてくださいね。よければ俺に掴まってください」
「ありがとう」
暗い山道をゆっくりとした足取りで突き進む。彼女が転んでしまわないように誘導していると、しばらくして目的地にたどり着いた。
「聞いた通り綺麗な景色ですね」
深い色の夜空にはきらきらとした星々が敷き詰められていて、思わず感嘆の息が零れそうになる。肩を並べて静かに満天の星を眺めていると、ベレスさんが突然、俺の服の裾を引いた。控えめな仕草に視線を下ろすと、白い手が差し出されていた。
こあめ
DONE去年のイベントで配布していたシルレスの小話です現パロ/付き合ったばかりの二人
香水 シルヴァンから「一緒に出掛けませんか」という誘いがあったのは、数日前のことだった。彼曰く休みの重なった週末、ベレスと観光したい場所があるらしい。
「どこに向かうの?」
「秘密です」
行き先によっては持ち物や服装を調整する必要があるだろうと昨日までに何度か尋ねたのだが、シルヴァンは口を割ろうとしなかった。いたずらのような悪巧みでもしているのかと探っても、とにかく俺と一緒に来てくれればいいので、と言う。
少しの不安を抱えながらシルヴァンに指定された待ち合わせ場所に向かうと、ベレスを待つ彼の姿を発見した。すらりとした長身はカジュアルな服に包まれていて、モデルのような立ち姿に近くを通りがかった女性達から注目を集めている。
1884「どこに向かうの?」
「秘密です」
行き先によっては持ち物や服装を調整する必要があるだろうと昨日までに何度か尋ねたのだが、シルヴァンは口を割ろうとしなかった。いたずらのような悪巧みでもしているのかと探っても、とにかく俺と一緒に来てくれればいいので、と言う。
少しの不安を抱えながらシルヴァンに指定された待ち合わせ場所に向かうと、ベレスを待つ彼の姿を発見した。すらりとした長身はカジュアルな服に包まれていて、モデルのような立ち姿に近くを通りがかった女性達から注目を集めている。