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    hozumiya

    @yoru_h_i

    書いたものを投げるところ

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    hozumiya

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    某文庫小説アンソロへおよばれした際の作品へ加筆修正したもの。
    なので、読んだことある方もいるかも

    ##降風

    【降風】今日のおやつは餡麺麭で 少なくない警察官が足繁く通う喫茶店「ポアロ」で働く安室透は、常連の一人から差し入れられた袋を前に腕組みをしていた。カウンターに置かれたその茶色い紙袋の中身は、最近巷で話題になっている人気店のパンだ。
     特に注目を集めているのがあんパンで、朝一番に店へ行かなければその姿を拝むことすら難しいと噂になっている。そんな入手困難なパンが今、袋に包まれた状態ではあるが、安室の前へ鎮座していた。

    「食べないの?」

     じっと紙袋に包まれたままのそれを熱く見つめる彼を不審に思ったのか、喫茶の上に住む眼鏡の少年――江戸川コナンはオレンジジュースを飲むのを止めて口を開いた。流石に無いとは思いつつも、このあんパンに何か重要な物が隠されているのかもしれないと、コナンも安室に倣い紙袋を見る。
     しかし、いくら見ても紙袋が変化する様子はなく、ただ良い香りが漂ってくるばかりだ。食欲をそそるそれに、コナンの口内にはじゅわりと唾液が溢れ、自然と喉がゴクリと鳴る。
     その音を安室が聞き逃す筈も無く、視線を紙袋からコナンの喉元へと動かした。

    「コナン君、あんパンは好きかい?」

     ぽつんと呟くように発せられた言葉に、コナンは疑問を覚えつつも素直に頷いてみせる。

    「うん。好きだよ」
    「そうか……それならこれをあげよう」

     今の今まで穴が開くほど睨み付けていたそれをさっとコナンへ差し出し、安室は口元へ笑みを浮かべた。紙袋もしくはあんパンに何かあるものだとばかり思っていたコナンは、何の未練もなさそうな安室を不思議に思いつつ手を伸ばす。

    「ここのパン、美味しいって話題なのに、本当に貰っていいの?」
    「ああ。それは差し入れの余りだから」

     何がいいのかは全く分からないものの、どうやらこの袋は本当に安室の興味の対象から外れてしまったらしい。そう推測したコナンは、お礼を言うとほんのりと温かさの残るあんパンの袋を受け取った。

    「それに、あんパンのせいだとばかり思っていたものが、違っていたらしいと分かったからいいんだ」
    「ええ? クリームパンをあんパンだと勘違いしてたとか?」
    「うーん、流石にそれはないなぁ」

     要領を得ない話し方にコナンは「だよなぁ」と小さく不満を漏らした。
     しかし、安室も話すつもりがないのか、笑顔のまま空になったコップへジュースを注ぎ足す。これ以上詳しく聞いてくれるなということらしいと、コナンは紙袋からごまで飾り付けられているあんパンを取り出した。
     半分に割ると、ふんわりと餡子の香りが広がる。

    「いただきます」

     何かを誤魔化している安室を問い詰めたい気持ちを抑え、コナンはどこか優しい味のするあんパンへと齧り付いた。
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    KaraageMitsu

    MOURNING #ルクヴィル版ワンドロワンライ60分1本勝負


    【秘密】


    時間内に書けなかったので。




    *****************
    『願いが叶う赤いリンゴ』

    それは、伝統あるポムフィオーレの寮長が、代々受け継ぐものの一つ。

    「ヴィル、少し話があるんだけどいいかな?」

    外の仕事から戻ってきて、そろそろ一時間ほど経っただろうか。
    恐らくこれぐらいの時間であれば、ヴィルの白く美しい肌を保つための入浴を済ませ、柔らかな表現を可能にするためのストレッチも終えた頃合い。

    留守の間にあったことを報告するために、彼の自室を尋ねるが一向に出てくる気配がない。

    「ヴィル?」

    私の隣にあるヴィルの部屋の扉が開く音がしたのは、一時間前の一度きり。
    つまり、再び出かけたとは考えにくい。

    …となれば、残された場所は一つ。

    鏡台の一番高いところに成る艶やかで美味しそうな赤い禁断の果実。
    その果実に手を伸ばし、優しく撫でるとゆっくりと沈み込みカチっと何かにはまる音がする。

    「やはりここにいたんだね、ヴィル」
    「…ルーク」

    姿見の後ろの壁に隠された小さな小部屋。
    そこにヴィルはいた。

    願いを叶えるリンゴがもたらしてくれるのは、大釜や珍しい薬品など。
    願いを叶えるために最終的には自らの努力が必要という辺りが我が寮に相応しい部屋だ 1286

    KaraageMitsu

    DONE『名前を呼ぶ声』
    #ルクヴィル版ワンドロワンライ60分1本勝負





    ****************
    「で、今日はどこで油を売ってたわけ?」
    「オーララ。そんな険しい顔をしていては、せっかくの美貌に翳りが出てしまうよ?」
    「…誰のせいよ」

    明日の寮長会議に提出するために、今日中に仕上げなくちゃいけない書類があってルークを呼んでいたのに……。

    「私のせいかい?」

    きょとんと大きく目を見開き小首を傾げてみせるルークに、思わず口から漏れるため息で肯定をしてしまう。

    「つい、珍しいものがいたから、学園の外の森まで追いかけてしまってね」
    「外で暴れたなら、アタシの部屋に来る前に、きちんと身をきれいにしてから来てるわよね?」
    「もちろんシャワーは済ませてきたよ。キミと約束していたから、これでも急いで駆けつけたのだけどね…」

    約束をしていた時間は3時間前のことで、ルークは来ないと判断して仕方なく一人で山積みの資料を纏めて一枚の企画書を作り終え、いつもより遅くなったストレッチとスキンケアを手は抜かずに、けれどなるべく急いで済ませ、後はベッドの中で身体を休ませるだけといったところだったのに…。

    「…アタシは、もう寝るから」

    部屋から出て行ってと少し睨みつけるような視線を投げかけていたけれど 1344