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    bimiusa9931

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    bimiusa9931

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    ファイちゃんとギラヒム様の誕生からスカウォ原作までの間に何があったのかを個人的に解釈して語ったお話です。
    ⚠️捏造だらけ
    ⚠️スカウォと風タクのネタバレあり
    ⚠️ギラファイ前提
    以上OKの方のみどうぞ!!

    #ゼルダの伝説
    theLegendOfZelda
    #スカイウォードソード
    skywardSword
    #ファイ
    #ギラヒム
    ghirahim.
    #ギラファイ
    giraffe

    いつかまためぐり逢うその日までファイが初めて天望の神殿で彼に出会った時、この世の全てを憎む禍々しさしか感じられなかった。彼女は無意識に、彼を倒さねばならないと理由もなく感じた。


    「フン、なかなかいいモノだね」


    戦闘中彼が「ファイ」に触れてきた時、理由もなく感じた既視感がなんなのか、感情を持たない彼女にはわからなかった。しかし、彼を倒さねばならないと強く思っていたはずなのに、何故か先程まで自分の考えていたこととは相反した思いが心の中を占領した。それは、人の言葉で言うところの「懐かしさ」というものであった。


    「さっきのギラヒムとかいう男、ファイに似てたね」


    何の気なしにファイの主人、リンクが呟く。
    聡明な彼女は悠久の時を生きて初めて感じた既視感とリンクの発言が無関係だとは思えなかった。自分はただ主人リンクのサポートをするためだけの存在でしかなく、感情も持ち合わせていないはずなのに、ファイの心の奥底にはもやもやとした説明のできない『何か』が確かに生まれつつあった。
    彼女はこの時初めて、心の奥底に渦巻く『何か』を強く知りたいと思った。彼女が自分から何かを望むことなど生まれて初めてのことであった。


    主人と旅を続けながらファイは頭の片隅で心の奥底に居座る『何か』について考え続けていた。主人の支障にならぬよう、余計なことは考えるべきでないと理解していたものの、一度知りたいと思ってしまったことを忘れる事などできなかった。






    ***






    主人が終焉の者を倒し、彼女は永い眠りについた。かつての主人、リンクと旅を続けたあの日から実に数千年の月日が流れた。彼女は悠久の眠りの中で封印を続けながらあの既視感について考えた。聡明な彼女は既視感の正体を知るためには、何故己が聖地の守護者であるのかを知る必要があると考えた。トライフォースが悪用されぬよう、聖地を守護しなければならないということは理解していたが、なぜその役目が自分に与えられたのか、『何故ファイでなければならなかったのか』、その理由が彼女にはわからなかった。というのも、彼女が初めて「意識」を手にした頃には既に、「己が『聖地』を守護し、勇者を導く者である」という使命のことしか頭になかったのである。そもそも彼女が意識をもつ以前の記憶が全くないことも少々不自然であった。言ってしまえば、ファイは自分のことさえよく分からないまま聖地の守護者としてただそこに存在しているだけの、曖昧な存在だったのである。


    また、彼女の最初の主人であるリンクが最終決戦前にギラヒムと戦った際、彼は己が『剣の精霊』であることを明かしたのだ。同じく『剣の精霊』であったファイは、彼と自身との関係について考えずにはいられなかった。なにしろ、長い時を生きてきた中で同族の話を耳にしたことなど今回が初めてだったのだ。彼女は己の「欠けた記憶」の中に『ギラヒム』についての情報も含まれているのではないかと、確信めいたものを感じたのだった。


    彼女は己の存在理由と「欠けた記憶」、そして『ギラヒム』について考え続けた。彼について考えれば考えるほど、覚えのない切なさが心を支配した。彼女は心の中のそれについて確かな言葉で表現することが出来なかったが、それはたしかに人の言葉で『感情』と呼ばれるものの芽生えであった。あまりにも永い時間は彼女の中に『感情』を芽生えさせるには十分だったのだ。


    しかし、いくら考えたところで眠り続けることしか出来ない彼女には何の手がかりも掴むことが出来なかった。彼女は女神に問いかけた。何故ファイにこの役目を与えたのか、『ファイ』とはどのような存在なのかということを。そして、心の中に残り続ける『彼』のことも。


    それでも女神は答えてくれなかった。時が来たら教えましょうと、悲しげな顔で零すのみだった。ファイは初めて己の『やるせなさ』に打ちひしがれた。何も出来ない自分がやり切れなかった。今はただ、「終焉の者の完全な消滅」という己の使命を全うすることにのみ専念すべきだと、「知りたい」と願う本心を押し殺すことしか出来なかった。







    ***







    更に数万年の時が流れ、ファイは遂に終焉の者の消滅に成功した。あまりにも長い時の流れであったが、彼女が『彼』を忘れることは一時として無かった。終焉の者の消滅によって世界の平和が保証され、使命を果たした彼女の前に、遂に女神が姿を現した。女神はファイに語りかけた。


    『マスターソードの精霊ファイよ、よくぞ使命を全うしてくださいました。貴方を長きに渡り使命によって縛りつけてしまったこと、どうかお許しください。』


    ファイは何故女神が己に頭を下げるのか分からなかった。己に与えられた使命を全うすることなど彼女にとって当たり前だったからだ。しかし、悠久ともいえる時をたった一人で封印のために眠ることしか出来ないというのがどんなに辛く悲しいことであるか、彼女は理解していなかった。『孤独』がいかに寂しい感情を纏うかを理解するには、ファイの心はまだまだ未熟過ぎたのだ。


    「ハイリア様、何故貴方がワタシに謝るのか分かりません。下僕が与えられた使命を全うするのは当然のことです。
    ………しかし、もしお許しいただけるなら、下僕ファイが貴方にお伺いしたいことがあるのです」


    『…分かりました。私に伝えられることならば全て貴方に話しましょう』


    女神があまりにあっさり承諾してくれたことにファイは少し驚いた。ひと呼吸おき、ファイは口を開いた。


    「…ありがとうございます。

    …ハイリア様、何故貴方はワタシに使命をお与えになったのですか。何故「聖地の守護者」が『ファイ』でなければならなかったのでしょう。
    ………また、ファイが意識をもつ以前の記憶が無いのは何故なのでしょうか。ワタシの記憶喪失と『ギラヒム』との間には、何か関係があったのでしょうか……………」


    女神は動じなかった。感情を取り戻しつつあるファイにはいずれ全て知れてしまうことである。終焉の者の消滅に成功した今、彼女に全てを話す時が来たのかもしれないと、女神は腹をくくった。


    一泊置いて、女神が口を開いた。


    『ファイよ、これはあなたとギラヒムの誕生にまつわるとても重要な話です。

    あなたとギラヒムは────────』




















    女神が語ろうとした、次の瞬間























    ドーンという大砲のような音が神殿内に轟いた。どうやら封印の神殿入口付近が爆発したらしい。ゴォーという音が地響きと共に神殿内に反響した。爆風で土煙が舞い、視界が遮られてしまった。女神とファイは一瞬とも永遠ともいえるような時を過ごした。あまりにも突然の出来事に二人とも思考が追いつかなかった。ファイは女神の身の安全を確保するため、彼女を神殿奥の祭壇まで避難させた後、周囲に注意を払いながら入口付近を調べに向かう。
    やがて、神殿入口の方向から「カツカツ」という足音が聞こえてきた。神殿を爆破したと思われる人物がファイの目の前に現れた。



    その人物は血のように赤いマントを身に纏い、右耳に青いクリスタルの耳飾りを揺らしていた。アシンメトリーの長い銀髪から除く切れ長の目は出会った頃と寸分も変わらずにファイを捉えた。彼女が長い間忘れることの出来なかったあの男が、まさに今目の前に現れたのである。

    「一体どうしたんだい?そんな怖い顔をして。」

    彼、『ギラヒム』はこちらの反応など分かりきっているとでもいうように楽しげに顔を歪め、ファイを見下ろした。


    『何故あなたがここに…終焉の者の敗北とともにあなたも消滅したはずです!』


    神殿奥から女神が飛び出し、声を荒らげた。
    そう、剣の精霊ギラヒムは空の勇者リンクが終焉の者にトドメを刺したと同時に消滅したはずであった。どういう訳か生きながらえた彼は傷をおうどころか逆に魔力で満ち溢れ、生き生きとしていた。


    「うるせぇ!女神風情が魔王様の名前を軽々しく口にするんじゃねぇ!」


    女神が「終焉の者」という言葉を口にした途端、ギラヒムの態度は豹変した。ドスの効いた声は重い空気を纏い神殿中に反響した。彼の体表は剣の表面を再現するかのように硬質化し、赤黒く変色した。彼は己の主人をまさに今目の前で失ったことで悲しみに溺れているようだった。しかし、その割にはどこか余裕気な表情も垣間見せるギラヒムに、女神とファイは底知れぬ恐怖を感じたのだった。

    女神はとても焦っていた。彼が生きていてここを訪れる理由など一つしかないからだ。


    やがてギラヒムは焼け付く重い空気を切り裂くように声をあげた。


    「……あの方は消滅する寸前、残っていた魔力を全て俺に与えてくださった。俺に「生きろ」と仰った。
    だから俺は生きた。大切なものを奪ったお前らを憎みながら数万年生きた。

    ………お前らは俺が希望を抱いた瞬間に大切なもんを全部奪っていくよなぁ、、、
    なぁ、そんなに楽しいか?
    あぁ、楽しいよなァ、、
    わかるぜ、俺は今から全く同じことをお前らへ返してやる。
    俺はなんとしてでも、俺の命に替えても大切なものを取り戻す。
    俺も、これからお前らに起こることが楽しみで仕方ねぇぜ…」


    女神は歯を食いしばった。やはりギラヒムはこの場所に眠るトライフォースを求めてやってきたのだ。この場所で終焉の者は消滅したが、それと同時にここは「聖地」でもあり、正しく「トライフォース」の眠る場所であった。

    だとすれば、今この場で一番危険なのはファイである。彼女は終焉の者を封印し消滅させることの他に、もうひとつ重要な役目があった。
    ファイは元々「聖地の守護者」であり、聖地へ入るためのセーフティーロックのような存在であった。つまり、ギラヒムはセーフティーロックであるファイを破壊することによって聖地に乗り込もうとしていたのだ。



    ギラヒムは歪んだ表情で目の前のファイを見つめた。この世の憎悪を全てかきあつめたような表情だった。


    「おい、女神の犬。あの時はよくも俺の中枢をめちゃくちゃにしてくれたな。
    あの痛み、苦しみ、忘れたことなんてない。全く同じものを今からお前に味あわせてやる!」


    「あの時」とは、恐らく最終決戦前の戦いの事を言っているのだろう。確かに彼女はそのように思われても仕方のないことを彼にした。彼にとってファイが憎むべき存在であることに違いはないし、彼女にとってもギラヒムは倒さねばならぬ存在だった。それなのに何故か彼女は、彼にそのような感情をぶつけられたことが酷く悲しかった。



    「……………………………………」



    ファイは考えた。彼は自分の命に替えても守りたい大切なものがあると言った。では己にとっての大切なものとは一体何なのだろう。しかし、いくら考えても彼女には分からなかった。ただ、彼の大切なものを奪ってしまったことに訳もなく心の痛みを覚えるのみだった。



    ファイは考えた。彼の大切なものを奪ったことが本当に正しい行いだったのかを。

    ……己の思う「正しさ」とは本当に全て「善」なのかを。

    しかし彼女には分からなかった。ただ、感情の乏しい己に「正解」など解るはずもなかった。



    彼女は何も言えなかった。何を言えばいいのか分からなかった。感情の欠落した己の考えることなど正しいはずがないと、それだけは理解していた。

    それは人の言葉で言うところの「諦め」だった。





    ギラヒムは禍々しいオーラを纏いながらファイめがけて突進した。酷く冷静な頭は、己の胸部のクリスタルを破壊するつもりなのだろうと勝手に分析した。剣の精霊にとって胸部のクリスタルは一番の急所となる。砕かれればほぼ間違いなく存在を保てず消滅するだろう。しかし、彼女はそれでもいいと思った。それが今彼女の思う「正しさ」であった。



    彼の硬い皮膚がクリスタルに触れる。そこにはかつて感じた「懐かしさ」が確かに存在していて、彼女は自分がこれから消滅する身だというのに酷く心地良さを覚えていた。この感覚に名前をつけられないことだけが彼女の心残りだった。



















    己の頬を伝う水滴が地面に跡を作る頃には自分はもうこの世に居ない。



    願わくば、悲しげに涙を流す彼の心が救われますように。


























    神殿に雫の落ちる音が響いた。


    それは、感情を持たぬはずの精霊『ファイ』が生まれて初めて流した涙だった。



























    「────────っ!!!」










    次の瞬間、目もくらむような光が神殿中を覆った。

    女神はハイラルの美しい自然に宿る精霊たちに語りかけた。どうかあなた達の力を貸してくれないかと。精霊たちは答えた。彼らは彼女の統べる美しい大地が大好きだった。ハイラルの美しい自然に溢れるエネルギーは、大地を統べる彼女の力そのものだった。光り輝く分厚い壁が女神とファイを包み込む。

    「何故だ!何故攻撃が通らない!」

    ギラヒムの叫ぶ声が響き渡る。彼の悲痛な面持ちは絶望の色に染まっていた。

    女神は大地の精霊達の力で彼を拘束した。

    『精霊ギラヒムよ、もう無益な争いは終わりにしませんか』

    「うるせぇ!もうなにもかも遅いんだよ。俺の大切なもん全部奪っておいて上から指図すんじゃねぇ!」

    ファイは霞む意識の片隅で二人の会話をきいていた。彼女は動揺した。先の攻撃で自分は消滅したはずなのに己の意識はまだ生き続けている。

    二人の会話はまだ続く。

    『あなたは終焉のものが完全に消滅し、私とファイが完全に油断したこの瞬間を狙っていたのですね…。』

    女神は辛そうな表情を浮かべながら続けた。

    『あなたには知る由もなかったと思います。あなたと同じく、私もまた同じ過ちを繰り返さぬよう、このような事態に備えて準備してきましたから。』

    「同じ過ち」とは一体何なのかファイは考えた。やはり女神は彼女に何かを隠していた。女神とギラヒムとの間には、決して拭うことの出来ない確執が確かに存在していた。そして、きっとそこには意識を得る以前のファイの存在も関係していることだろう。

    ギラヒムは苦しげな表情を浮かべた。この日のために数万年かけて準備してきたことの全てが灰燼に帰した。彼と同じく、女神もまた数万年の時をかけて「いつか起こるかもしれないこの時」のために備えてきたのだ。同じ条件下で比較した時、精霊のギラヒムは「神」の力に叶わなかった。

    彼は女神に負けたのだ。たとえ数万年かけて蓄えた魔力が彼にあったとしても、ハイラルの全てを味方に付けた女神に叶うはずがなかった。

    女神は何かに耐えるかのような表情でギラヒムに語りかけた。

    『…私があなたに対して行ってきたことは決して許されるものでないと理解しています。あなたが私を憎み、殺めたくなる気持ちも理解しています。しかしどうか、今この瞬間だけは私の話に耳を傾けてくれないでしょうか。』

    ギラヒムは全てを諦めたように地面に崩れ落ちた。怒りさえ湧いてこなかった。広大な大地のエネルギーを目の当たりにした瞬間、いかに自分がちっぽけな存在であるかを悟った。

    「もう、いい。もう俺は考えることも疲れた。お前らの望むようにすればいい。」

    『…ありがとう、ギラヒム』

    次に、女神はファイに向き直った。

    『ファイ、意識はありますか?』

    ファイは霞む意識を何とか奮い立たせ、重い口を開いた。現状を何も理解していない彼女であったが、胸の中のジクジクとした痛みだけは鮮明であった。

    「イエス、ファイの意識は正常に稼働しています。
    ………ハイリア様、何故ワタシの胸はこんなにも痛むのでしょうか。この胸に巣食うジクジクとした痛みを、ファイはなんと表現したら良いのでしょう………」

    女神は泣きたくなった。
    全て己の始めたことだったとしても、ファイが感情を『取り戻しつつある』ことに涙が止まらなかった。

    女神は厳かな雰囲気をまといながら二人の精霊を見やった。

    『今こそ全て話しましょう。』

    これから語られる話は、この世に二つしか存在しない剣の精霊『ファイ』と『ギラヒム』の誕生と、彼らを取り巻く運命の物語である。






    ***






    かつて、世界の均衡を保つため、三大神によってトライフォースが創造された。トライフォースは触れたものの願いをなんでも叶えてくれる万能の力であったが、願いの善悪の判断をしなかった。何故なら、一方の信じる善がもう一方にとって悪となる可能性があるように、善と悪は立場によって常に変化するという世界の理があったからである。トライフォースはその理の元で創造されたのだ。

    何でも叶える万能の力はいつの時代も争いの元となった。そこで女神ハイリアはトライフォースを「聖地」に収め、人々が簡単に見つけることの出来ないようにした。そして、女神が聖地を創る際にその守護者として創造されたのが、「思考」と「感情」を持つ剣の精霊『ファイ』と『ギラヒム』である。二人は善悪が立場によって逆転する世界の理の象徴としての側面も持ち合わせ、それは正に互いに『対』となる存在であることを意味した。世界に二つしか存在しない剣の精霊は、二人ともトライフォースの眠る聖地を守護するという重要な使命を担っており、そういった意味でもお互いに分かり合える唯一の存在であった。

    やがてトライフォースの眠る聖地の存在が伝説として語り継がれるようになった頃、二人は大地の人々から厚い信仰を受けるようになっていた。創造当初から精霊体だけでなく人の姿も与えられていた二人は人々にとってより身近な存在となり、二人もまた大地の人々を深く愛したのだった。

    あるとき、トライフォースの眠る聖地を見つけようとする者たちによって戦の耐えぬ時代があった。世界が荒廃していく中、平和を望む人々からの悲痛な叫びに二人は深く嘆いた。やがて感情を持つ二人は、いつの時代も争いの原因となるトライフォースの存在に疑問を抱くようになった。そもそもトライフォースが存在しているせいで争いが絶えないのだから、トライフォース自体を消滅させれば無益な争いをうむこともないと、そう考えたのである。ファイとギラヒムは女神に創造されはしたものの、大地の人々を深く愛する二人は女神よりも人々により身近な存在となっていたため、いつしか女神にトライフォースの消滅を主張するようになった。

    対して、女神もその事については常々考えていたのだが、前述の通り、トライフォースは世界の均衡を保つために必ず存在していなければならないものなのである。もしトライフォースが破壊されればその反動で天変地異が起こり、世界の均衡は乱れ、魔物の徘徊する恐ろしい世界となってしまうのだ。しかし、ファイとギラヒムは目の前で困っている人々を見捨てることが出来なかった。やがて二人は「聖地の守護」という課された使命よりも人々の救済を優先するようになった。全ては二人が人々の気持ちに寄り添いすぎた結果であると考えた女神は、二人に感情を与えてしまったことを後悔した。そこで女神はまずファイの感情を抜き取り、使命以外のことを考えられないようにした。また、人の姿を与えたことも大地の人々と近くなりすぎた原因であると考えた女神は、人の姿までもファイから奪ってしまった。このようにして彼女は、ただひたすら聖地を守ることだけに徹する機械のような存在となってしまったのである。

    これに対し、ギラヒムはただただ絶望した。彼だけは上手く立ち回り、運良く女神に感情を抜き取られることは無かったが、感情を抜き取られたファイは女神に従順な下僕となってしまった。互いに『対』となる、まさに片割れのような存在の感情を抜き取られたことは、ギラヒムにとって彼女の死を意味した。さらにあろうことか、女神に歯向かうギラヒムはファイにとって「反逆者」となってしまったのである。

    ギラヒムはただただ女神を憎み、恨んだ。この頃にはもう彼は世界の平和などどうでも良くなっていた。ただファイを取り戻すためだけに、彼は「女神ハイリアの消滅」とそれによって空席となる神の座を望むようになった。ギラヒムはトライフォースの眠る聖地の守護者としての立場を利用して、トライフォースに「女神ハイリアの消滅」を願ってしまう。しかし、「知恵・力・勇気」の三つの性格を等しく持ち合わせた者にしかトライフォースの真価を発揮させることが出来なかったため、三つの要素のうち彼が一番望む「力」を司るトライフォースのみが手元に残った。女神に致命傷を与えることはできたものの、完全な消滅には至らなかったのである。

    やがて、女神ハイリアの消滅に失敗したギラヒムは今度こそ女神を打倒するため、遂に「禁忌」に触れてしまう。それがかの『終焉の者』である。終焉の者はかつて地上を支配しようと世界全土で悪逆非道を行っていたが、ある時代に女神によって封印されてしまっていた。ギラヒムは「力のトライフォース」と己が精霊としての特性として与えられた本来の力を用いて遂に『終焉の者』の復活に成功する。

    復活した終焉の者はギラヒムの心に巣食う『闇』に漬け込んた。「我に与すれば女神の力など取るに足らぬと思えるほどの力を授けてやろう」と唆した。それは甘美な響きを伴って彼の脳髄を震わせた。

    終焉の者に唆されたギラヒムの心は増幅した『闇』によって日に日に蝕まれていった。時間が経つのと比例して、女神を憎む心は益々狂暴さを増していった。

    やがて、悠久とも言えるような年月が過ぎ、身を焦がすような憎しみはいつしか「ファイを取り戻す」という気持ちさえも奪ってしまった。また、彼は復活した終焉の者のあまりに強大な力に畏怖の念を抱くようになり、いつしか終焉の者を崇敬するようになった。自身に宿った「力のトライフォース」も終焉の者が望んだため、譲ることを厭わなかった。彼はひたすら終焉の者の願いを聞き入れ実行に移す従順な下僕となり果てた。もはや彼はファイがかつて自分にとってどのような存在だったのかも気づけずに、女神打倒による世界の破滅だけを願う悲しい存在となってしまったのである。

    女神は己の使命と私情との狭間で葛藤した。たとえファイやギラヒムが彼女にとって大切な存在だったとしても、ハイラルを統べる彼女は大地の人々の平和のために私情を殺さねばならなかった。

    女神は何度もギラヒムを諭した。全て己の始めたことだったとしても、彼がファイを忘れてしまったことが辛く悲しかった。しかし、憎しみに心を支配された彼には女神の言葉が聞こえなかった。終焉のものから多大な魔力を得た彼は何度も何度も女神を攻撃した。最早女神は彼を諭すことを諦めるほかなかった。

    その後、女神ハイリアはギラヒムによって復活した終焉の者を再度封印し、力のトライフォースの奪取に成功したものの、ギラヒムによって致命傷を負った彼女が終焉の者を封印し続けることは難しく、いつ封印をといて襲ってくるか分からない状況まで追い込まれてしまった。追い詰められた女神はトライフォースを使用して終焉の者の完全な消滅を願う事を考えたが、トライフォースは神には扱う事ができなかったため、女神は地上に残った人間、そしてトライフォースとそれを守護するファイを空へ逃がし、人間として転生することを決意したのである。




    ***




    『そして、私が人間に転生した姿こそ、かつてのあなたの主人、空の勇者リンクの幼なじみ、ゼルダなのです』



    ──────────




    神殿内に声を押し殺して涙を零す音が響く。
    ギラヒムが、静かに泣いていた。

    彼は全てを思い出した。
    己の心が闇に飲み込まれる原因となるほどに大切な存在のことを。そして、かつていかに己が幸せだったかということも。

    『………ギラヒムよ、もう良いのです。もう、苦しみに心をやつす必要などないのです。あなたには「本当に大切なもの」があったのですから。』

    彼の禍々しいオーラを纏った姿は、既になりを潜めていた。
    涙に濡れる顔をあげ、ギラヒムは呟いた。

    「ワタシはまた一からやり直せるだろうか。
    …………やり直しても良いのだろうか……?」

    女神は温かな笑みを浮かべながら答えた。

    『それは私の決めることではありません。あなたには、その問いに答えてくれる存在がすぐ隣にいるでしょう?』

    彼はハッとして隣の片割れを見つめた。

    「お前は、思い出したのか?」

    彼はどこか自身なさげにファイに問いかけた。感情を持たぬはずの彼女は、それでも少し苦しげな表情で彼を見つめ返し、こう応えた。

    「………わかりません。
    ファイにはまだ実感がわかないのです……
    しかし、この胸の内からあなたに向けて溢れる感覚にワタシは心地良さを覚えています。
    また、何故かあなたのことをもっと知りたいと思う自分がいるのです。
    ………あなたの隣にいたいと、理由もなく思うのです」

    次の瞬間、彼女の体を何かが強く抱き締めた。驚いてファイが視線を横に向けると、彼女の肩に頭を預けるギラヒムの姿がそこにあった。長らく感じることのなかった温もりがファイの全身を包み込んだ。

    ギラヒムは顔を上げ、ファイの目を真っ直ぐ見つめて呟いた。

    「……ワタシもお前と同じだ。
    ワタシがお前に対して抱く気持ちも全く同じものなんだ……。
    …………なぁ、ファイ。お前が今抱いている感覚も、ワタシがお前に対して抱いている気持ちも、人の言葉で『愛』と表現されるものなんだ。
    ワタシは、お前と共にこの世に生まれてきたその瞬間から、お前のことを愛していたんだ……。」

    そんな彼の言葉を、ファイはどこかぼんやりと聞いていた。彼女はしばらく何か考え込んだ後、おもむろに口を開いた。

    「………では、ワタシがあなたの隣にあることも許される、ということですか?」

    「そういうことだ。」

    ギラヒムが答えると、彼の頭に何かが触れる気配がした。ファイのヒラヒラとした両腕のベールが彼の頭を優しく撫で始めたのだ。

    ギラヒムは長らく感じていなかった安心感に身を委ねた。己が彼女に触れ、また彼女から触れられると、心の底から多幸感が溢れ出て全身を温かく包み込んだ。

    しばらくして、ファイは彼の髪を優しく梳きながら瞳を真っ直ぐに見つめてこう言った。

    「正直、ファイはまだ『愛』という感情を正確に理解することが出来ないでいます。
    しかし、あなたの言葉に反応して、説明のできない高揚感がワタシの胸を満たすのです。
    きっと、ワタシはあなたの言葉に『喜び』を感じているのでしょう。」

    彼女はギラヒムにやわらかな微笑みを浮かべながら続けた。

    「どうかこの先、あなたの隣にワタシが共にあることを、よろしくお願いします。」





    ***





    その後、女神はファイとギラヒムに二つの選択肢を与えた。

    一つ目は、二人が「聖地の守護」という使命から解放される代わりに、双方共に寿命がわずか100年で尽きてしまうというものだ。というのも、元々「モノ」である二人は創造された目的である使命を正式に放棄すると、世界から必要とされなくなってしまうのだという。この選択をした場合、二人の寿命がすぐに尽きてしまうのは避けることの出来ぬ宿命のようなもので、女神にもどうすることも出来ないのだと言う。また、この場合、女神は彼らの代わりとして聖地の守護者を新しく置くことはせず、聖地に入ろうとする者には『試練』を課し、神々に認められなければトライフォースを扱えぬようにするのだそうだ。

    二つ目は、悠久の命が保証される代わりに、「聖地の守護者」としての使命を最後まで全うするというものである。ここでいう「最後まで」というのは、トライフォースや精霊たち、さらにはハイラルの神々など、まさにハイラルの「伝説」として語られるものの全てが大地の人々から『忘れ去られた』時をいう。もしその時が来たとすれば、世界の理であるトライフォースのみを遺して、ハイラルの神々や精霊たちは共に衰退の一途を辿り、自ずと消滅していくのだという。しかし、もしそこまでに至るとしても相当な年月を要することになるのは必然で、二人がこの選択を望んだ場合、よく言えば悠久の時を二人で共に生き続けることが出来るが、逆を言えば、ハイラルが繁栄し続ける限り、二人は使命によって縛りつけられてしまうのだ。

    女神が二人に選択肢を与えたのは、全てが彼らに対する贖罪の気持ちからであった。いくら世界の平和のためとはいえ、己の勝手な都合で彼らの運命を狂わせてしまったことを彼女はずっと後悔していた。もちろん、女神である彼女が
    定める選択肢は世界の平和が保証される範囲内でなければならず、どちらの選択をしてもデメリットが付きまとってしまうのだが、たとえそうであったとしても、女神は二人を重く縛り付ける「使命」から開放してやりたかった。

    そういったこともあり、女神が二人から答えを聞いた時はとても驚いたのだった。
    彼らは悩み続けた結果、聖地の守護を引き続き担うという選択を望んだ。
    ファイは感情が乏しくはあるが、独りで守護を続けていた頃も美しいハイラルの大地に少なからず愛着のようなものを抱いていた。
    ギラヒムも、かつては憎しみに心を支配されていたが、心の奥深く、無意識の領域では美しいハイラルを慈しむ気持ちが確かに存在していた。そして、愛する片割れを取り戻した今、ファイと共にハイラルを見守っていくことこそが彼の一番望む在り方であった。

    対して、二人の答えを聞いた女神は少し思い詰めたような表情をして彼らに言葉を返した。

    『わかりました。しかし、自ら望んで使命を担うということは、ハイラルの全てに対する責任があなた達に重くのしかかってくるということでもあります。あなた達には常にハイラルの安寧を第一に考えた行動が強いられるのです。その結果あなた方のうちのどちらかが欠けることとなったとしても、最後まで使命を全うすると誓えますか』

    というのも二人には、己の使命よりも民個人の幸せを優先させた結果、聖地を手薄にさせハイラルを危険に晒した過去があったからだ。二人ともハイラルの平和を思っての行動ではあったが、結局はその行動のせいでハイラルを根本から危険に晒してしまった。二人は一番ハイラルの平和のためになる選択を見誤ったのだ。

    ファイとギラヒムは顔を見合せた。ギラヒムはしばらくファイと見つめあった後、顔を上げて女神を見据え、しっかりと述べた。

    「ワタシたちはかつて重大な過ちを犯した。ファイの感情を貴方に抜かれたのはその罰であったのに、ワタシはその事にも気づかず憎しみに溺れて破壊を繰り返し、なんと惨めで自分本位だったのだろう。そのことに気づけた今、ワタシには新たにハイラルの安寧を護る義務がある。最もこの世のためになることを見極め、その結果ワタシや片割れの命が散ることになったとしても、貴方の愛する大地を護ると誓おう。」

    続けて、横で静かに話を聞いていたファイも口を開いた。

    「ワタシには、創造当初のギラヒムとの過去に対する実感がまだありません。…しかし、これから彼と過ごす日々の中で徐々に思い出していくのでしょう。その時に、ワタシの中に既に育ちつつある自分本位な思いが更に肥大して、使命の遂行を滞らせてしまうことがあるかもしれません。それほどにワタシは彼を『愛して』いるのです。
    しかしワタシは彼と同じ程に、あなたの統べるハイラルの大地のことも深く『愛して』いるのです。もし、聖地を守護していく過程で彼の死を受け入れねばならぬ時がきたとしても、ワタシはその事実を受け止めましょう。そして、ワタシがこの世に存在する限り、あなたの愛する大地の為につくすことを誓いましょう。」


    彼らの気持ちを聞いた女神は、二人のあまりに誠実な思いに感謝の念が耐えなかった。辛い思いをさせてしまったのにも関わらず、ハイラルの大地を愛していると言ってくれた。女神は二人の思いに応え、より一層ハイラルを善き方へ導いていかねばと気を引き締めるのだった。


    女神は少し赤くなった瞳で二人を見つめて言った。


    『二人とも本当にありがとう…………。
    きっと、長い時の中で思いもよらぬ困難があなた達を襲うこともあるでしょう。
    そんな時には、どうかお互いに手を取り合うことを忘れないでください。
    ……あなた達の運命を狂わせてしまった私が言えることでもありませんが、私も、あなた達を創造したその瞬間からあなた達のことを我が子のように愛していました。そしてこれからもあなた達に沢山の幸せが舞い降りることを祈っています。』










    ***










    あの日から数千万年の月日が経った。

    ワタシの愛した大地は海の底に沈み、人々からは「ハイラル」という国があったことすらも忘れ去られてしまっている。

    世界が海に沈んだと同時に、世界の理であるトライフォースだけは消滅することなく欠片となってこの世のどこかに隠された。
    一方で、人々から忘れ去られ使命も失ったワタシたちはいつか来たるべき消滅を静かに待っていた。
    全て、かつて女神が言っていた通りとなった。

    ワタシは己の一生を振り返っていた。

    永遠のようにも感じる時の中で、ワタシは様々なことを体験した。
    終焉の者が遺した呪縛によって、巫女ゼルダ・勇者リンク・終焉の者の魂をそれぞれ受け継ぐ三者は世界の命運を賭け何度も何度も争った。
    終焉の者の生まれ変わりであるガノンドロフによって世界に危機が訪れる度に、勇者を導く使命も兼ねていたワタシの片割れはその時代の勇者と共に旅に出た。その間、聖地を守護する者はワタシ一人だけとなった。

    そういう時、片割れがいなくとも自分一人の力で聖地を守り抜けたことがほとんどだったが、数千万年の内で何度かは魔王に侵入を許してしまったこともあった。
    その度に片割れは相棒の勇者と共に必ず魔王を倒し、傷ついたワタシを癒してくれた。

    今、ワタシの目の前には台座に納まって静かに眠る彼女がいる。長い間人々から忘れ去られ、彼女の退魔の力は徐々に衰えを見せていった。
    そんな彼女は最近眠いことが多いらしく、よく台座に納まっている。

    ふと長年の感が
    『そろそろ次の勇者が彼女を起こしに来る頃だろう』
    と告げた。

    きっと、今回の戦いがワタシたちの最後となる。

    「ファイ、今まで共に生きてきて、ワタシは少しでもお前の助けになれただろうか」

    問いかけてみても反応はなかった。

    別れの時に言葉を交わせないのは寂しいと思ったが、それでも彼女と同じ時の流れを生き、死ぬ時も共にあれることが嬉しかった。

    「いつかワタシが生まれ変わったら、お前が世界中ののどこにいたとしても必ず見つけ出してあげるよ」

    緑の服を着た少年の気配がかすかにハイラル城内を漂う。長らく感じていなかった人の気配だった。そろそろ身を引く頃だろう。

    「その時まで、しばらくお別れだ。」






    ***






    風の勇者によって魔王ガノンドロフは倒されました。

    沈みゆく意識の中でも、『彼』がワタシを優しく包み込んだことだけはわかりました。

    ワタシ達はこれから、終焉の者の魂と共に永遠の眠りにつきます。

    それでも寂しくはないのです。

    ワタシの隣にあなたがいて、あなたの隣にワタシがいる。

    その事実だけでワタシは、ファイはとても幸せですから。















    ***
















    深い深い海の底、剣の精霊たちは寄り添いながら大波に飲み込まれるハイラルを眺めていた。
















    やがて、二人は全身から光のつぶを発しながら海に溶けるように消えていった。
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    bimiusa9931

    DONEファイ&ギラヒムの誕生からスカウォ本編までに何があったのか、また彼らのこれからについて解釈したお話です。
    ⚠️スカウォと風タクのネタバレあり
    ⚠️捏造だらけ
    ⚠️ギラファイ前提
    ※作中に出てくる設定はハイラルヒストリアと百科の情報を元にしています。矛盾が生まれないように解釈したつもりですが、それでもところどころ見落としや説明の足りない部分があるかもしれません。
    それでもOKという方のみどうぞ!
    いつかまためぐり逢うその日まで【完全版】ファイが初めて天望の神殿で彼に出会った時、この世の全てを憎む禍々しさしか感じられなかった。彼女は無意識に、彼を倒さねばならないと理由もなく感じた。


    「フン、なかなかいいモノだね」


    戦闘中彼が「ファイ」に触れてきた時、理由もなく感じた既視感がなんなのか、感情を持たない彼女にはわからなかった。しかし、彼を倒さねばならないと強く思っていたはずなのに、何故か先程まで自分の考えていたこととは相反した思いが心の中を支配した。それは、人の言葉で言うところの「懐かしさ」というものであった。


    「さっきのギラヒムとかいう男、ファイに似てたね」


    何の気なしにファイの主人、リンクが呟く。
    聡明な彼女は悠久の時を生きて初めて感じた既視感とリンクの発言が無関係だとは思えなかった。自分はただ主人リンクのサポートをするためだけの存在でしかなく、感情も持ち合わせていないはずなのに、ファイの心の奥底にはもやもやとした説明のできない『何か』が確かに生まれつつあった。
    21804

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    bimiusa9931

    DONEファイちゃんとギラヒム様の誕生からスカウォ原作までの間に何があったのかを個人的に解釈して語ったお話です。
    ⚠️捏造だらけ
    ⚠️スカウォと風タクのネタバレあり
    ⚠️ギラファイ前提
    以上OKの方のみどうぞ!!
    いつかまためぐり逢うその日までファイが初めて天望の神殿で彼に出会った時、この世の全てを憎む禍々しさしか感じられなかった。彼女は無意識に、彼を倒さねばならないと理由もなく感じた。


    「フン、なかなかいいモノだね」


    戦闘中彼が「ファイ」に触れてきた時、理由もなく感じた既視感がなんなのか、感情を持たない彼女にはわからなかった。しかし、彼を倒さねばならないと強く思っていたはずなのに、何故か先程まで自分の考えていたこととは相反した思いが心の中を占領した。それは、人の言葉で言うところの「懐かしさ」というものであった。


    「さっきのギラヒムとかいう男、ファイに似てたね」


    何の気なしにファイの主人、リンクが呟く。
    聡明な彼女は悠久の時を生きて初めて感じた既視感とリンクの発言が無関係だとは思えなかった。自分はただ主人リンクのサポートをするためだけの存在でしかなく、感情も持ち合わせていないはずなのに、ファイの心の奥底にはもやもやとした説明のできない『何か』が確かに生まれつつあった。
    14732

    bimiusa9931

    DONEファイ&ギラヒムの誕生からスカウォ本編までに何があったのか、また彼らのこれからについて解釈したお話です。
    ⚠️スカウォと風タクのネタバレあり
    ⚠️捏造だらけ
    ⚠️ギラファイ前提
    ※作中に出てくる設定はハイラルヒストリアと百科の情報を元にしています。矛盾が生まれないように解釈したつもりですが、それでもところどころ見落としや説明の足りない部分があるかもしれません。
    それでもOKという方のみどうぞ!
    いつかまためぐり逢うその日まで【完全版】ファイが初めて天望の神殿で彼に出会った時、この世の全てを憎む禍々しさしか感じられなかった。彼女は無意識に、彼を倒さねばならないと理由もなく感じた。


    「フン、なかなかいいモノだね」


    戦闘中彼が「ファイ」に触れてきた時、理由もなく感じた既視感がなんなのか、感情を持たない彼女にはわからなかった。しかし、彼を倒さねばならないと強く思っていたはずなのに、何故か先程まで自分の考えていたこととは相反した思いが心の中を支配した。それは、人の言葉で言うところの「懐かしさ」というものであった。


    「さっきのギラヒムとかいう男、ファイに似てたね」


    何の気なしにファイの主人、リンクが呟く。
    聡明な彼女は悠久の時を生きて初めて感じた既視感とリンクの発言が無関係だとは思えなかった。自分はただ主人リンクのサポートをするためだけの存在でしかなく、感情も持ち合わせていないはずなのに、ファイの心の奥底にはもやもやとした説明のできない『何か』が確かに生まれつつあった。
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