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    練習練習。

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    グ5日目。
    そんなつもりはなかったのに流行に流されてセコ厶おじさんになってしまったの。

    AWAY,AWAY,AWAY from HOME グレイグ5日目5日目

    何もこんなタイミングで。
    朝からついていない。



    息を切らしながら玄関の呼び鈴を鳴らすと、バタバタと走ってくる音が聞こえて、慌ただしくドアが開いた。
    ドアを開けたホメロスは自分の姿を確認すると、ほっとしたような表情を見せた。

    「すまない、実は車が故障してしまって、電車とバスでここまで来たのだ」

    これでも急いできたのだが、と続けると、ホメロスはわかったわかった、とばかりに手で俺を制すると、家の中に入っていった。

    「電話しようかとも思ったのだが、ここの番号を知らなくてな。
    それはそうと、何か食べたか?まだなら、急いで何か作ってうおぉっ!?」

    ホメロスについてリビングに入るとほぼ同時に、変な声が出た。
    それも仕方ないだろう。昨日までリビングの隅に置かれていたはずのスーツケースが部屋の真ん中に引っ張り出され、あまつさえ中身がぶちまけられていたのだ。

    「ど、どうしたのだこれは!?空き巣でも入ったのか?戸締りはしっかりしていたか?入り口はオートロックだし窓の施錠は昨日帰る前に俺がすべて確認したぞ???」

    振り向いたホメロスの両肩を思わずつかむ。

    「お前は?大丈夫なのか?不埒物に何かされたりはしていないか!?」

    どこか怪我などしてはいないか、両肩を掴んで上から下まで確認する。
    取り敢えず怪我などはしていないようで一安心したところで改めてホメロスの顔を見ると、それはもう迷惑そうな顔をしていて、散らかった床を指さした。
    片付けろということだろう。

    「…なにがあったかは分からんが、とにかく怪我はないんだな?」

    何があったのかは不明のままだが、本人が大丈夫と言っている(多分)なら問題はないだろう。
    俺はホメロスの肩から手を放した。

    「それじゃあ取り敢えず昼食を作って、片付けはその後だ」

    …しかし、今回は何でもなかったからよかったものの、やはりこの家にホメロス一人にするのは危ないのではないだろうか。夜は特に。
    また不埒な輩が襲ってこないとも限らない。
    『良かったらお前がここにいる間は住み込みで働こうか』、はデルカダール語でどう言えばいいのだ?
    今後の対策を考えながら、俺はキッチンへ向かった。







    「それじゃあホメロス、俺は帰るが、…ひとりで大丈夫か?」

    リビングのテーブルで難しそうな書類とにらめっこしているホメロスに声をかける。

    「本来なら泊っていってやりたいところなんだが、故障した車を修理に出さなければいけないのでな。その代わり、俺の電話番号を置いていくから何かあったらここに連絡をくれ。すぐに駆け付けるからな」

    電話番号を書いたメモをテーブルの隅に置く。
    ホメロスはそれをちら、と一瞥して、傍らに立つ俺を見上げた。

    「それから、車の状況次第では明日も電車とバスで来ることになるから、少し遅れるかも知れん」

    言ってから、はっとした。
    そうだ。車がすぐに使えないとなると、ホメロスに何かあって自分にSOSがきたとしても直ぐに駆けつけるのが至難の業になる。

    …やはり心配だ。
    車の修理は明日にして、今日は泊っていったほうがいいのではないか?

    逡巡する自分を横目に、ホメロスは立ち上がってすたすたと玄関へ向かって行った。

    「あ、おい、ホメロス」

    慌てて後を追うと、彼は玄関に置いてあった車のキーを手に取り、こちらに見せた。
    そして自分にも分かる言葉で、ひとこと「駅」と言った。

    「…もしかして送ってくれるのか?」

    それは非常にありがたい申し出だが、今日は泊ったほうがいいのではないかと思っていたところで、いや、この辺りは治安がいいが、事実として今日は部屋を荒らされていたわけだしもしかしたらどこかでお前のその美しい金髪を見て不埒な考えを抱いた輩が今夜こそはお前を手籠めにしてやろうなどと思っているかもしれないしああ、いや決して金髪が悪いと言うわけではないぞ、むしろ俺は金髪が大好きだ、あ、誤解のないように言っておくが別にお、俺はお前のその美しい金髪をいかがわしい目で見ているわけではないぞ、もう一つ誤解のないように言っておくとお前は金髪だけでなく見目もいいと、俺は思うぞ。まぁ口が悪いのはどうかと思うがな。

    …と言うのはデルカダール語で何というのだ?

    言いたいことは山ほどあるのに伝える術がない。
    ひとりであわあわしていると、痺れを切らしたホメロスが俺の耳を引っ張って何事か大声で喚いた。
    そうして舌打ちをひとつして、先に玄関を出て行ってしまった。
    …とんだ暴君だ。
    俺は痛む耳をさすりながら、慌てて彼の後を追って彼の愛車(レンタカー)が待つガレージへ向かった。
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