AWAY,AWAY,AWAY from HOME ホメロス8日目8日目
高度一万メートル。
眼下に雲が広がり、その遥か下には大海が広がっている。
ほんの数時間前までこの足で立っていた異国の地はもう影も形も見えない。
飛行機に乗ってしまえばそんなものだ。
過ごした日々さえ遠い昔のことのように思える。
あの男は、来なかった
行けたら行く、は
行けなければ行かない、と言うことだ。
そもそも見送りに行くと言ったのだって、自分の聞き違いだったのかもしれない。
微かな期待を抱いてギリギリまで待ってしまった自分が阿呆だっただけのことだ。
そう、それだけのことだ。
出された機内食は食べる気がしなかったのでそのまま片付けさせた。
自分の体調を心配したのか客室乗務員が何か必要なものがないか聞きに来たが、
必要なものなど何もない。
何もいらない。
「…くだらない、」
あの男は、来なかった。
それだけのことだ。