1ツイートSSログ(11月レイリド)【心臓に悪い】
帰宅したレイスに俵担ぎされた。
驚きのあまり声も出ない。
そのまま寝室に連れられ、放られる。
柔らかいベッドに背を受け止められた。
肘を付いて起き上がろうとすると、レイスが胴に跨る。
艶を帯びた瞳に見下ろされた。
ネクタイを引き抜く姿に顔を染めて目を逸らす。
レイスは心臓に悪い。
【かっこいい】
リッドが可愛すぎる、と電話でロエンに惚気るレイス。
リッドはレイスを後ろから抱きしめた。
驚きすぎて声にならない悲鳴を上げ、レイスは羞恥から顔を真っ赤にした。
「可愛いのはお前だろ」
耳元で囁くリッドに、レイスは電話口に向かって叫んだ。
「やっぱりかっこいい」
すでに通話は切れていた。
【負ける】
慌てて家を出たから手袋を忘れ、待ち合わせ場所に着く頃には指先は赤くなり悴んでいた。
気付いたレイスが右の手袋を寄越す。
それを身につけると、左手に指が絡んだ。
「冷たいね」
レイスは眉間に皺を刻む。
強く握られ、そのままポケットに導かれた。
照れくさいが寒さに負けたせいにして握り返す。
【個室】
居酒屋の個室に通され、メニューを広げた。
「何頼む?」
隣に腰を下ろしたレイスが肩にしな垂れ掛かる。
「君がいい」
顔を横に向ければ大きな手が頬に触れる。
「もう酔ってるのか?」
「君にね」
吐息の混じる距離で視線を絡めると、おしぼりとお冷やを持った店員が扉を開き、慌てて閉めた。
【造作無い】
魔物に囲まれてその数に途方に暮れる。
「君と私にとって造作無いよ、この程度の数」
レイスに言われると本当にそう思えるから不思議だ。
飛びかかってきた魔物を次々と薙ぎ払う。
最後の一体を斬り伏せるとその場に座り込んだ。
「疲れた…」
「多すぎたね」
肩で息をしながら拳を握り甲を合わせた。
【駄目】
「だめ?」
「…駄目だ」
首を傾げてねだるレイスに揺らぐが突っぱねる。
「お願い」
耳元に顔を寄せ、吐息混じりの言葉で囁かれる。
赤い顔で耳を押さえた。
「だめ?」
とどめを刺すよう甘い声で懇願されたら頷くほかない。
「最後だからな」
顔を明るくしてレイスは冷蔵庫からビールを取り出した。
【逞しい】
「いい壺が手に入った。買わないか?」
「俺に売りつけようとするなんて商魂逞しいな」
煌びやかな装飾の施された壺を見せられた。
興味本位で値段を聞けば、満面の笑みが返る。
「リッドのこれから先の時間かな」
言葉を反芻し、顔が熱くなった。
「壺いらねーから、お前のこれから先の時間くれよ」
【多幸】
目が覚めて、隣で眠るリッドを抱き寄せる。
背中に指を這わせると、身じろぎして瞼を開いた。
眠気の残った声で、おはよ、とはにかむ。
たまらずギュッと抱きしめた。
背中に腕が回り、脚が絡む。
同じシャンプーの匂いに頬が緩んだ。
触れ合っていると多幸感で満たされる。
「おはよう、リッド」
【降る】
窓の向こうでは雪が舞い、外の世界を白で覆う。
外は寒いんだろうな、とリッドは炬燵の中で降る雪を眺めた。
「ただいま」
扉を開いたレイスはリッドを抱え込むように炬燵に入る。
「レイス冷てー!」
帰宅したばかりのレイスの体は冷え切っていた。
「温めてよ」
レイスはリッドの背中に擦り寄った。
【トラップ】
隠れてアイスを食べていたら見つかった。
「一口ちょうだい」
口を開けて待つレイスに首を振る。
「これは俺の!買ってこいよ」
「買ってきて」
甘い蜜のような声と扇情的に肌を滑る指に頷いていた。
コンビニに向かいながらハニートラップに引っかかる気持ちを理解した。
レイスの色気には抗えない。
【整頓】
2つ並んだ表札の名前に弾む気持ちが隠せない。
隣に立つレイスが指を絡める。
「これからもよろしくね」
「ああ」
頷いて指に力を込める。
新居の扉を開くと段ボールが積み重なっていた。
「片付けなきゃね」
これからのレイスとの生活を想えば、荷解きも整頓も苦ではない。
【羞恥】
よみうりランドでキャラクターのカチューシャを渡された。
「俺がこれ付けるのか?」
「きっと似合うよ」
レイスの頭にはすでに付いている。
はしゃぐレイスはすごく似合うし可愛いと思った。
腹を括って付けるが、羞恥に駆られる。
外そうと頭に伸びた手を繋がれ、そのまま園内を回るはめになった。
【にっこり】
目覚めると頭の下には柔らかい枕ではなく硬い腕。
寝心地は悪く首は痛いが、肌が直接触れ合う心地よさは何ものにも代え難い。
長い指に髪を梳かれ、襟足をくすぐられた。
隣に首を向け、レイスと視線が交わり、端正な顔がにっこり笑う。
「おはよう」
「おはよ」
つられて頬を緩め、体に腕を回した。
【好む】
いい肉の日だから、と振る舞えば、子供のように瞳を輝かせてリッドが頬張った。
リッドは何でも美味しそうに食べるが、肉料理を殊更好む。
「レイスは食わねーのか?」
一切れ口に入れるが、自分が食べるより、リッドが幸せそうに食べている姿を眺めるのを好む事に気が付いた。
【命の洗濯】
旅に出よう、と誘われたが、今は壺を売らされている。
「もっと愛想良く接客しないと買ってもらえないよ」
「旅って旅行じゃねーのかよ」
「美味しい食事と温泉を楽しみたいなら売ろうね。命の洗濯をするにもお金が必要だ」
絶対にメインは商売だ。
一緒に旅という誘惑に抗えなかった事に嘆息した。