親の都合で急遽アメリカに引っ越してきたサニーには、好きなひとがいる。
シュウという隣に住む大学生だ。
少し人見知りをするきらいのあるサニーが初めて心を開いた人。
懐くのに時間は掛からず、暇さえあればシュウの家に遊びに行った。
今日は両親が出かける間、俺の家にシュウさんが来てくれるみたい。
チャイムが鳴って、ドアを開ければシュウさんが来たよって笑う。
シュウさん今日も綺麗だな。好きだと自覚したとき、言おうか迷ったけど、でもそのせいで遊べなくなったら嫌だから、こんな気持ちは心の奥底に仕舞って知らないふりする。
「今日は何して遊ぶ?」
「警察ごっこ!みてみて。これ買ってもらったんだぁ」
満面の笑みでおもちゃの手錠を見せ、
「俺が警察やるからシュウさんは捕まってね」って言ったら
「んはは、僕罪も犯してないのに捕まっちゃうの?」だって。そうだよ。シュウさんは俺に捕まえられるの。
シュウさんはなんでも知ってて、遊びながら色んなことを教えてくれるからとっても楽しい。
こうたいばんこしながら警察ごっこをすれば時間はあっという間に過ぎた。
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「サニー、そろそろこれ取ってほしいな。片付けができない」
「あ、もうそんな時間か…ちょっと待って」
手錠を外そうと立ち上がって近付けば差し出された手。
座っているため必然的に上目遣いになるシュウさんに思わずドキッとする。
可愛いなって思い始めたが最後、蓋をしていたはずのシュウさんへ対する感情が溢れてくるようで。
キス、してもいいかな、どうせ大した抵抗なんてできないだろうし。
「シュウさん、じっとしててね」
「ん?何か付いてる?」
形のいい頭に手を添えて顔を近づけ…
……ヤバい。
意識すればするほど身体は冷えて動かない、そのくせ顔は火傷しそうなほどに熱くなるから。
覚悟を決めたはずなのに、妄想では上手く行っていたのに、いざするとなったら話は別みたい。
「…顔赤いけど大丈夫?暖房消そうか?」
見当違いな発言に、腹が立つ。俺をこんなふうにしたくせに。所詮、俺は近所の子なんだと分からせられて、少しでも俺を意識してほしくて、複雑な感情をぶつけるかのように口をつけた。
何をされたか分かったのかシュウの顔に赤が差していく。
「さ、サニーっ!!!????な、に、して…」
「…いや、だった…?」
「い、いや、というか、びっくりした、かな…
あ、あは、サニーもこんなイタズラ、するんだね…」
そう言いつつ手早く部屋を片付け、サニーにバイバイも言わせずシュウは家を出ていった。
かはは、シュウさん可愛かったなぁ
一瞬、秒数にすれば一秒にも満たなかったその瞬間をサニーは忘れない。