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    miya_ko_329

    @miya_ko_329
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    miya_ko_329

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    2~Xrdのどこか。カイとレオの競馬観戦(仕事)

    GG/カイとレオ「どうだ、あれが一番人気、今年のパリ大賞典の勝馬だ」
     レオがそう言って示したのは、艶やかな黒い毛並みの青毛の馬だった。首をしっかり上げ、乱れのない歩様は見る者を魅了する風格を備えていた。
    それを見てカイも頷く。
    「なるほど、確かに貫録がある」
     連王の本日の公務は競馬の観戦だった。王が臨むに相応しい伝統と格式のあるレースである。均整の取れた体躯で、様々な色合いのサラブレッドたちが闊歩する様は目にも楽しい。前日まで降り続いた雨の影響で芝のコースは多少水気を含んでいるようだが、天気は回復し空は美しい秋晴れだった。
    「実績は十分、同条件のレースでは負けなし。まずあいつで決まりだろう。」
    「一番人気だからな、可能性は高い。……では私はあの葦毛だな」
     カイが見遣ったのは小柄な葦毛の牝馬だ。ただ毛色はほとんど真っ白で、太陽の下ではたてがみがきらきらと輝いているようにも見える。とかく目を引く外見をしていたが、持って生まれた容姿だけではなく、美しい毛並みはよく手入れされている証だ。
    「葦毛? あーあの綺麗どころ。ルックスだけならトップだが……またそりゃ随分博打だな。当たれば万馬券だろうが」
     場内の掲示板では最低人気である。仮にもこの一大レースの出走権を得た馬だから実力がないわけではないのだろうが、他のメンバーと比較すると体躯はどうしても見劣りする。
    「イリュリア国内外問わず、あらゆる大レースの勝者が集まっているんだぞ。あれはまだ重賞でやっと勝ち始めたばかりだろう」
     実績も十分ではなく勝率が特別に良いわけでもない。レオは、わからん、と肩をすくめるが、カイは気楽な様子で返す。
    「本当に賭けはしないさ。ただ予想する分にはそうだと思っただけだよ」
    「なら余計手堅い方を選ぶだろうが。オッズがどんなに高くて見返りがでかくても、お前に何の得もない」
    「人気薄が勝った方が面白いだろう? その方がロマンがある」
     同じような理由で、彼が雷の法力を好んで用いていることをレオは思い出した。
    「俺の辞書の『酔狂』の欄には大分前からお前の名前が追加されているんだが、まだ改訂されそうにないな。……まああれが勝てば劇的ではあるが」
     半ば呆れてレオはカイを横目で追い、彼の視線の先にいる件の葦毛を眺める。
    「素人目にだが、元気は良さそうに思える」
    「うーむ、まあそう言われるとそうか?」
     いずれにしても、専門家でもない連王たちには正確なところはわからない。ただ戦時下において軍馬を扱った経験からすれば、まあ状態は悪くなさそうだと思う程度だ。
     発走時刻が近づき、パドックから本馬場に移る馬たちを眺めながら、レオはにやりと笑う。
    「あの葦毛が本当に勝ったら、例の新作、贈ってやろうか」
     ドイツを代表する陶磁器ブランドから発表されたばかりの新作シリーズの名を出され、少しだけ驚いたようにカイは目を見張る。
    「君はその類のことには特に関心がないかと思っていたが、よく知っていたな」
     カタログを眺めていたところでも見られていたのだろうか。レオの観察力は侮れない。
    「俺はこれでも気配りのできる人間なんだ」
     真顔でそう答えるレオに、知っている、とカイは笑う。
     レオ自身はあまりその類の関心は薄いが、肩を並べる同僚の趣味くらいは頭に、もとい彼の辞書に記録されている。すなわち『ティーカップ』という単語には、『カイ=キスクのお気に入り』という具合に。豪快な印象とは裏腹に、その実思わぬ細やかさを有していることはカイもよく知っている。
    「個人的には大変嬉しいが、城の備品のポットの補充もしてくれるとありがたいんだがな。損耗率の激しさは、君が本来の形で紅茶を飲んでくれれば大幅に下がる」
     単なる食器というだけでなく、賓客をもてなすための芸術品であるそれらは、第二連王の扱いによって度々破損の憂き目に遭っている。
    「まどろっこしい。腹に入ってしまえば同じだ」
    「ゴールデンルールを順守している給仕は泣くな……」
     第一連王の溜息の向こうで、各馬がゲートから駆け抜けていった。


     果たしてその結果はと言えば――
    「だーっ! 何であそこで競り負けるんだ!」
     クビ差で葦毛の勝ちだった。レオが推していた青毛は一度は先頭に立ったものの、最後の最後で惜しくも交わされ僅差で2着に敗れている。
    「惜しかったな」
    「お前は昔から優等生面しておいて、やることが大胆なんだよ」
     誰がこの大舞台で最低人気が来ると思うか、とレオは半ば八つ当たり気味にカイに噛み付く。
    「君は豪快な物言いと外見に反して、意外と慎重だった」
     悪気があるのかないのか、カイは余裕の笑みである。
    「っとに可愛くないクソバンビーノだな貴様は」
    「この歳にもなって、可愛いと言われる方がゾッとしないな」
     めずらしく軽口を叩く。
    「まあ勝算がないわけでもなかったんだ。君の本命は重馬場が少し苦手のようだから、そこが気になって」
    「お前、まさか今までのレース研究してたのか?」
    「そんな大層なものではないよ。さっき戦績をちらっと見ただけだ」
     直近5レースの内、青毛は4勝している。ただその中で唯一黒星が付いたレース時の天候は雨、重馬場の開催だった。相手も決して弱い相手ではなくアタマ差で負けている。もっとも良馬場でならほぼ勝っているのだから間違いなく優秀なのだろうが、勝負は時の運であり、今回はそうではなかったという話だ。競馬はそもそもあらゆるデータを分析して予測するスポーツではあるが、どれほど計算したところですべてを覆す運という要素がある。これはもうどうにもならない。
    「それだけじゃないだろう。妙に自信があったようだが?」
    「以前公務でサラブレッドの生産牧場の見学をさせてもらった。その時、ちょうど生まれたばかりのあの子がいたんだよ」
     関係者や報道に囲まれる葦毛の馬を見つめてカイが答える。
    「は? あの葦毛か?」
    「小さな体で一生懸命走っていた。他の仔馬と駆けていても、抜かれまいという勝負根性があって、何となく『良い馬だな』と思ったから」
     あともう一つ、と付け加える。
    「最後は名前だな」
    「は……名前か。ははは!」
     敵わん、と自棄のようにレオは破顔した。
     一躍スターホースとなった彼女の名は『ブランエクレール』という。白の稲妻という名を持つ彼女は、名に違わぬ末脚で栄冠を掴み取ったのだった。カイが佩く剣の銘は雷を冠している。今も昔も変わることなく。
     今日の連王の仕事の一つは、優勝馬陣営へのプレゼンターである。
    連王入場のアナウンスに観客たちはいよいよ盛り上がる。騎手や調教師、生産者が緊張した面持ちで表彰を受ける。カイが祝福の言葉を述べると共に、優勝馬を近くで見せてもらっても良いか尋ねると、かえって恐縮された。許可をもらい、カイは葦毛の馬の側に立つ。
    「おめでとう、ブランエクレール。素晴らしい脚だった」
     カイはそっと小柄なヒロインに声をかける。
     彼女が気になっていた本当の理由はもう一つある。
    「君の誕生日は5月31日だったから、よく覚えていたよ。元気が良いところがそっくりだ」
     さて今頃シンはどこかでくしゃみでもしているだろうか。
     こっそりと打ち明けたことは、王と葦毛の女王だけの秘密だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE2ED後。いろんなひとのはなしを経て約束の場所にたどり着く2主が書きたかった。
    幻水/2主人公 僕らはいつも背中合わせの関係だった。
     小さい頃からずっとそばにいたから見るもの聞くものは同じものだった。けれど彼は僕みたいに前ばかり見ていないで、後ろのことも時々振り返って見ているような子だったので、「ヤマト、ほら落としてたよ」とポケットか何かに入れておいた僕の大事なものを拾い上げてくれるのなんてしょっちゅうだった。ナナミも「あー! またヤマト落し物して!」なんて言っていたけれど、自分だって彼に落し物を拾ってもらったことは一度や二度ではないはずだ。
     ともかく、僕と一緒に歩いていたはずの幼馴染は、前しか見えていない僕が見落としていたものもきっと多く知っていたはずなのだ。


     ハイランド皇都ルルノイエ陥落から数日が過ぎ、デュナン城の人の出入りは一層激しくなる。傭兵としての契約を終え出立する者、戦争終結に伴う事務処理のため招聘された文官、物資を搬出入する業者……コボルトやウイングボートも含むありとあらゆる人間がこの古城を旅立ち、あるいはたどり着く。とにかく人の往来が激しいので、そのどさくさに紛れてしまえば出るのはそれほど難しいことではなかった。城内の中枢はさすがに警備が厳しいが、商店が軒を連ねるエリアはほぼ誰でも出入りが可能だ。
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    miya_ko_329

    CAN’T MAKE書きたいところだけ(ガエリオとヤマジンの辺り)。CPメインじゃないはなしだったが、結局ガエジュリになったった。
    鉄血/ガエリオとジュリエッタ 永遠ではなく、けれど不変の。

     寒さは嫌いではない。互いの身を寄せ合うための格好の口実になるから。
     別に訳もなく引っ付いても許されるだろうけれど。

     温かさを保証する柔らかな寝具に包まれながら窓の外を見遣る。ほとんど白に近いような薄い青の空と、鈍い色の常緑樹や裸木の木立に目を遣る。温暖な海域を漂うことが多いヴィーンゴールヴにある自宅から見える景色と、色も空気も何もかもが違う。すべての景色の彩度は低く、太陽光は薄い雲の向こうから射していてどこか遠く感じる。慣れ親しんだ潮の匂いを多く含んだ大気はここにはなく、湿った土や木々を感じさせるものが取り巻いている。馴染みのないはずのそれらは、けれど決して不快ではなかった。たとえ自立が叶わない身ではあっても、大地に足を下ろしているのだと実感するからだろうか。宇宙空間とは明らかに違う圧倒的な安定感。それでいて絶えず変化する景色。薄い雲が流れて太陽がさっきよりもやや強い光を地上に落とす。一瞬たりとも同じ風景は無い。移ろう時間を感じられるのは大地の上で生きているからこそだ。あれほどに長く星の海に身を置いていても、結局自分が帰る場所はこの惑星の大地だった。
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