赤「ここはいつも綺麗でいいねぇ」
会議室で食事を終え、温かいお茶を弥也が皆に配っている時だった。湯気のように柔らかな声がふわりと部屋に広がった。
「急にどうした?」
「ここだけじゃないけど、うちはどこもぴかぴかだから。みんながしてくれてるんだろう?」
鹿園様はありがとうと言うと心底嬉しそうに微笑み、お茶を一口飲み込んだ。皆が言葉も忘れ、その姿を眺めてしまった。
「まぁ、朝は皆で清掃してるからな」
「そうですね。ここは先程東雲さんがしてくださっていましたし」
「そうなんだ。いつもありがとうね」
拝掌教の朝は早い。夜が明けると共に皆目覚める。そして食事当番の者たちは食堂に集合し、それ以外の者は敷地内を分担し清掃を始める。
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