甘え人に甘える、ということが苦手だった。
不慣れと言っても良いかもしれない。
物心ついた時には親は無く、唯一の家族である兄は、自分の世話を最低限みてはくれたが、一般的な男兄弟の関係としてそこまでベッタリしたものでは無かったし、自分に対しては早く自立して手がかからないようになってほしいといった雰囲気だったので、寄りかかるような依存はしてこなかった。
(もちろん、兄もまた支えが必要であったろう若い内から、幼い自分を何とかして成人まで育ててくれたことには感謝しかなく、甘える雰囲気が無かったことを、微塵も不満に思ってなどはいない )
友人・恋人・少し勤めたまともな働き口の同僚……等も、表層的または刹那的な関係の相手ばかりだったので、甘えるような精神的関係性にはならなかった。
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