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    環壮
    4/5に合わせたけど、カプ要素薄め

    #環壮
    ring-shaped

    好きなことを、好きなだけ「今日から新ルールを設けてみるのはどうかな」
     全員が夕食を済ませ、なんとなくまったりと過ごしていた夜のこと。
     ビールを楽しむ大和と、その隣でスマホゲームに夢中になっていた環。彼らの正面に座った壮五が真剣な顔つきで言った。
    「……ルール?」
     復唱した環はすぐに嫌な予感を抱いたが、ここで逃げれば余計に面倒なことになる。大人しくスマホを伏せた環を大和も静かに見守る。
    「環くんは仕事をしながら学校に行っていて、他の学生やアイドルに比べるとやることが多い分、大変だと思う。それでも両立させようと頑張っていて、僕はそんな君の姿を誰よりも見ている。ここはまず理解して欲しい。決して、今の環くんの頑張りを否定するつもりは無——」
    「いーよ、そういうの」
     苦しそうな表情で言葉を紡いでいた壮五を遮り、環が口を挟む。
     これはまた揉めるぞ、とビールを下ろした大和だったが、続く環の言葉にその手が止まる。ソファの上でぐでーんと伸び切っていた大きな体が、壮五に倣うようにしっかりと正される。
    「あんたが俺を否定するつもりないのも、ルールだとか言うのが俺のことを思ってなのも、全部わかってるから。まずは何考えたのか教えてよ」
    「環くん……」
     これは、随分成長したものだ。目の前で繰り広げられる会話を思わず肴にする大和。キッチンの奥で片付けをしながら、実は最初から聞き耳を立てていた和泉兄弟。テレビのクイズ番組に夢中でさっぱり聞いていない陸とナギ。
     他のメンバーの存在をすっかり忘れたかのように、目の前の相方の成長にじん……と感動を噛み締めた壮五は「実は、少し前から考えていたのだけど」とこぼした。
    「オフ時間の使い方について、簡単なルールを設ければもう少し効率良く過ごせるかと思って」
    「オフ?」
    「そう。環くんはゲームが好きだろう? 僕も、環くんから好きなものを奪うことはしたくない。でも、できるなら課題や勉強や…学校のこともして欲しい。だから、例えば勉強を一時間頑張ったら、ゲームも一時間していい。三十分で辞めてしまったなら、ゲームも三十分だけ。こうやって頑張った分だけ好きなこともしていい……っていうルールを作るのはどうかな?」
     ね? と努めて明るく優しく丁寧にプレゼンを行う壮五はさながら小学校教師のようだ。案の定、キッチンの三月が一織に耳打ちをする。
    「あのルール、俺も小学生のとき母さんに言われたわ」
    「破って怒られてましたよね。覚えてます」
     古くからある教育法のひとつ。尚且つ、小学校低学年から導入されるものだ。自ら縛りとして課すならまだしも、"勉強嫌いの環くん"として悪名高い彼に、どこまで通用するか。
     注目の集まる中、環は少しの間考える素振りをすると、すぐに一言だけ答えた。
    「わかった」
    「え……っ?!」
    「なんだよその反応。そーちゃんが言ったんだろ」
    「そう…だけど、まさかこんなにすんなり受け入れられるとは思わなくて……一応、僕も作曲作業中は一時間毎に必ず休憩を挟むというルールを一緒に設けようとは思っていたのだけど」
    「ソウ、それは普通に守りなさい」
     
     かくして、MEZZO"が円滑に活動を行うための決まり事が新たに加えられた。
     

     
     
     それから、一週間ほど。
     ルール通り、環は課題や予習を行った時間の分だけゲームを楽しんでいる。と言っても、環自身、己の性格を把握しているので、「いおりん、宿題やろー」と一織にくっつくことで"とりあえず毎日勉強した"ことにしているのだが。
     時間管理も本人に任せているため、勉強の合間の休憩時間も加算するというガバガバ換算ではあるが、一秒もやらないよりは遥かにマシである。
     ——この調子で、一人でも自然と勉強ができるようになるといいけど。流石に、まだ先の話かな。
     自室で作曲作業に励んでいた壮五が、ふと壁の時計を見上げる。そろそろ休憩を取らなければいけない。
    「でも、あともう少しだけ……」
     手がキーボードへ伸びたところを、扉を叩く音で制された。
    「そーちゃん」
     ドア越しに環の声がする。慌ててヘッドフォンを外しドアを開けてやると、スナック菓子の袋を抱えた環が立っていた。
    「どうしたの、環くん」
    「今日、二時間勉強した。明日提出のやつと、明後日のやつも。いおりんが先にやっておけば楽だからって」
    「二時間? すごい、偉いね環くん!」
     わぁ! とやや興奮した様子で壮五は彼を褒めた。
     あの環が、寮にいながら二時間も机に向かっていたなんて。休憩時間や、わからないと呻いた間も含んでの二時間ではあるだろうが、こうして自信たっぷりに報告に来たとなれば、一織も「まあいいでしょう」と認めた二時間に違いない。
     壮五だけでなく、大和や三月も喜ぶだろう。
     あとでみんなに話さなきゃ、と心なしか頭頂部の双葉まで嬉しそうにする壮五に、環もむず痒そうに身動ぐ。
    「そんでさ、今日は二時間頑張ったから……」
    「あ…そうだね! 今日はたっぷりゲームできるね!」
    「ゲームはいいよ」
    「え?」
     不思議がる壮五に、環が手にしていたスナック菓子を見せる。環でも食べられる程度の辛味のポテトチップス。ガサガサと音を鳴らせば、呼応するように壮五の腹が控えめに音を立てる。
    「あ……」
    「ふふ、腹減ってんの?」
    「そうみたい……おかしいな、ちゃんと夕飯も食べたのに」
    「そんくらいがいいよ、そーちゃんは」
     そう言いながら壮五の部屋に足を進め、我が物顔でラグに腰を下ろす環に、壮五は慌てて声をかけた。
    「えっ、いいの? せっかく二時間もゲームできるのに」
    「いーの! 苦手なこと頑張った分だけ、好きなことしていいんだろ?」
     ニカッ! と弾ける笑顔で微笑んで、壮五に向かってピースサインを向ける。

    「だから、今日はそーちゃんとまったりする!」
     ——それも、俺の好きなことだから。
     

     
     
     
    「——それで、環くんがあっさり新ルールを受け入れてくれたのは、僕との時間も作りやすくなると思ったかららしく……僕も作業に集中してばっかりで休憩を忘れてしまいがちなので、環くんが来てくれるのは有難くて」
     インタビュアーに向かってハキハキと答える壮五を眺めながら、「あのルールいつまで生きてると思う?」「うーん、とりあえずこの記事読んだ一織が『もう逢坂さんと勉強すればいいんじゃないですか?!』てキレるまではあるんじゃね?」なんて会話を、年長二人がしていたことなど誰も知る由がなく。
     インタビュー記事の掲載された雑誌が発売する頃には、環と壮五が二人で過ごす時間には何のルールも適応されなくなっているのだった。
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