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    すすき

    ブラカイ(カ受)/カプ無

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    すすき

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    イベントとは全然関係ない話。
    ショタ妖狐カインを拾ったネロとブラッドリーがめちゃくちゃに可愛がる話です。
    ショタ妖狐かわいすぎて我慢ができなかった

    妙な気配を感じ、ブラッドリーは店の座敷に足を向けた。空がようやく白み始めたこの時間、訪れる客がいるわけもないのだが。何か厄介事の匂いがしていただけない。喧嘩は好きだが、朝飯を食いっぱくれるのは御免だった。
    顔を出した薄暗い座敷には、見慣れた浅縹の髪が座り込んでいた。目的はその背中の向こうにあるらしい。
    ブラッドリーに気づかぬ様子の料理人に近付き、上から覗き込む。びくりと体を揺らしてこちらを見上げる芝翫茶の瞳を通り過ぎれば、ぐったりと目を閉じる小さな妖狐の姿が見えた。年の頃は五つか六つほどだろうか。小さな体躯相応のごく弱い妖力は今にも尽きてしまいそうで、だというのにひどく強烈な気配がする。脳裏に不気味な笑顔の天狐の姿がよぎった。あの男のものによく似ている。いや、似ているというより、あれそのものと言ってもいい。
    顔を顰めて手を伸ばす。瞼を持ち上げれば、見覚えのある薄紅の瞳が現れた。
    「なんつーもん拾ってきてんだよ」
    豆腐じゃねえぞとため息を吐けば、言葉に詰まった様子でネロが視線を反らした。買い物に出かけたと思えばこんな厄介な拾物をしてくるとは。オーエンに絡まれてえのかと言えば、そうじゃねえけどと煮え切らない言葉が返る。その手は当たり前のように幼子の髪を撫で、妖力を分け与えていた。どうも放り出す気はないようだ。
    まあこの男の性格を考えれば当たり前か、と瞼に触れた手を離した。そのまま身を起こす前に、不意に指先が掴まれる。見れば、小さな手が懸命にブラッドリーの指に縋っているところだった。その力は幼子と思えぬ強さだ。へえ、と漏れ出た声は思いの外弾んでいた。
    考えてみれば、何某かの細工はされているとはいえ、あのオーエンの目玉を填められて生きているというのは中々に見どころがある。その原因の一端に、この妖狐自身の生への執着があるのは間違いないだろう。幼くとも、死の運命に抗うその根性は悪くない。
    生きたいと叫ぶように掴まれた小さな手は、店の居候を増やす理由としては十分だった。



    布団に寝かされた幼い妖狐の顔を覗き込んだ。昨日よりはましだが、まだひどく苦しそうにしている。ネロに持たされた粥を置いて、枕元に座り込んだ。今日もこれはブラッドリーが食べることになりそうだ。
    顔中を赤くして荒く息を吐く幼子の口元に指先をくっつけた。わずかに妖力を流してやれば、反射のように舌が出る。舐めとるように動くのに合わせて流す量を調整してやった。
    オーエンの目玉を受け入れているのだ、これでもまだ反応としては緩やかな方だろう。わかってはいるが、少々同情してしまう。あの男の行動に迷惑をかけられたときのことを思い出した。
    幼い魔力をほんの少し強化してやると、ぴくりと瞼が震えた。ゆっくりと現れた金色に、そういえばこの子狐の本来の瞳の色を初めて知ったのだと気づく。ぼんやりとした二色の瞳がブラッドリーをとらえた。
    「腹減ってんだろ。食えるか」
    粥を手元に引き寄せて声をかけた。熱に潤んだ瞳が一度瞼に隠され、また現れる。ゆっくりとしたそれは了承というより、戸惑いの意味合いが強いように思えた。見知らぬところで目を覚ましたのだ、当然の反応と言えよう。眼前のご馳走にすぐに食いつかない警戒心は悪くない。上がった気分のまま、名を名乗り軽く事情を説明してやった。
    子狐がゆっくりと瞬きする。今度は安堵からくるものだとよくわかった。小さく口が開く。
    「ぶ、っどり……ぶゃ、っど」
    「……ブラッドでいい」
    「ぶやっど」
    ありがとう、とおぼつかない声が言う。必死に名前を呼ぶので何かと思ったら、真っ先にそれらしい。
    力を無くしたように再び落ちる瞼を眺めながら、予想以上に楽しめそうだと口角を上げた。



    ネロが怒鳴るように名前を呼んだ。どうやら出前の品が出来上がったらしい。随分余裕のない声に、今日の店の繁盛を知る。とっとと出たほうがよさそうだと腰を上げた。あ、と小さな声が落ちる。
    振り向けば、ブラッドリーを見つめる二色の瞳がさみしそうに潤んでいた。
    ――カインと名乗ったこの子狐を拾ってから、早いもので一月が過ぎた。始めの数日は床から起き上がれもしなかったが、十日も経てばネロの料理をおかわりするまでになり、今では部屋の中を走り回るまでになっている。その相手をするのは専らブラッドリーの役目だった。店がある以上ネロには出来ない故の、消去法で与えられたものだったが。
    これが、なかなかどうして悪くない。無知ではあるが無能ではないカインに色々と教えてやるのは案外楽しいものだった。
    今も札を教えてやっていたわけだが、ネロの声を無視する選択肢はない。カインの方もそれをわかっていて、何か文句を言うわけでもなかった。
    ただ、頭上の耳は力を無くして伏せられ、何かに耐えるように尻尾を抱きしめている。今にも泣きそうな顔をして、それでも健気にいってらっしゃいと呟く幼子を捨て置けるほど、ブラッドリーは非情ではない。ため息を吐いた。
    今回の出前先は、全て上得意だ。おまけつきで訪ねたところで文句を言われることもないだろう。
    膝をついて片腕を広げた。
    きょとんとした顔が、見る見るうちに明るくなっていく。満面の笑みで飛び込んでくる赤茶の毛並みを抱きあげて、厨房へと向かった。



    酒はないかと顔を出せば、店の座敷で唸る浅縹の髪を見つけて眉をひそめた。もう随分夜も深まっている。店を閉めたのも数刻前で、明日の仕込みが終わっていてもおかしくない時間だ。何をそんなに悩んでいるのかとネロの手元を覗き込む。
    紙面の上には、いくつかの店の名前が書かれていた。そろばんを弾きながら、あそこはどうだここはどうだとぶつぶつ呟いている。その全てが豆腐屋だということに気づいて呆れてしまった。
    「甘やかしすぎじゃねえのか」
    「てめえに言われたかねえな」
    鋭くブラッドリーを睨みつけた目が、すぐに手元の紙に戻る。書きつけられた数字は油揚げを仕入れた時の値段だ。
    今使っている店だって悪くないというのにこうして別の店を検討しているのは、偏にあの子狐のためであることはわかっている。店によって大きく味が違うという油揚げの中で、一番口に合うものを出してやりたいのだろう。これでここまで悩むとは、本当に甘いとしか言いようがない。
    店の売り上げをそんなものに使うなと、咎める気が起きないブラッドリーも同じ穴の狢だとはわかっている。



    皿を目の前に差し出すと、カインの顔がぱっと輝いた。
    「ネロ!おおきい!」
    皿いっぱいの稲荷寿司は、いつもよりも大きく作った。カインの小さな手では、両手で持ってもはみ出してしまうだろう。普段なら食べやすさを重視しているところだが、こんな日があってもいいだろう。
    「今日は頑張ったんだろ?だから、ご褒美な」
    修行の際についたのだろう、鼻の頭の泥を拭ってやる。はっとして鼻をおさえたカインが、照れくさそうに微笑んだ。
    カインの妖力を上げることは急務だ。このままではオーエンの目玉がどんな影響を与えるかわからない。それ故、時間があればカインに修行をつけてやることにしている。今日はブラッドリーの番で、見かけた客の話では随分高度なことをやっていたようだ。それについての話は後できっちりしておくとして。
    ぼろぼろになりながらも笑顔でただいまという子狐に、特別な好物を出してやっても罰は当たらないだろう。
    「よく噛んで食えよ」
    「わかった!いただきます!」
    言った傍からよく噛まずに飲み込んで、カインがぎゅっと目を瞑った。喉を詰まらせたかと慌てるネロに、太陽のような笑顔が返る。
    「おいしい!」
    ぴくぴくと耳を動かして、再び稲荷寿司にかぶりつく。ほんのり染まった頬に米粒をくっつけて、幸せそうに体を揺らしている。
    座敷に尻尾が当たる音を聞きながら、小さな湯飲みにお茶を注いでやった。



    揺れる赤茶の毛並みを見てふと気づく。随分長くなった。
    拾った時にも長い方ではあったが、今では肩につくまでになっている。あれでは修行の時に邪魔だろう。丁度片付けも終わったところだ。名前を呼んで手招くと、うれしそうに駆け寄ってくる。
    「髪結ってやるよ」
    「ネロみたいに?」
    「あー……俺みたいにしたいの?」
    「おそろいがいい!」
    お揃いねえ、と呟いて、とりあえず部屋に置いていた予備の髪紐を手元に呼んだ。今ネロが着けているものより明るい色味のそれは、カインにはよく似合うだろう。ただしお揃いとは言えない。だったら結び方を同じにするかと考えるが、上だけを結ぶやり方はカインにとっては動きの妨げになりそうだ。どうするかと少し悩んで、髪紐の色を変えてしまうことに決めた。妖力をこめれば、あっという間に色が染まる。
    「これでいいだろ?」
    そう言えば、勢い込んで首が縦に振られる。輝く瞳に少しだけ照れくさくなった。
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    すすき

    DOODLE【ブラカイ/パラロ】
    ボスにキスしたいなって思うカインと、カインをかわいがりたいボスの話。
    誕生日ボイスがめちゃくちゃなブラカイで強すぎてしんで、何かもういちゃいちゃしてくれないと割に合わないなって思って書いました。
    いつものいちゃいちゃです
    あ、キスしたいなとふと思った。
    カインにとっては唐突なことではなかったが、うまそうにグラスを傾けるのを邪魔するのは少し気が引けた。今日はとっておきだと言っていたから。でもちょっとだけ、頬や額にならと考えて、それだと満足できないだろうなという結論に至って小さくため息を吐く。ほんの些細な吐息に気づいて、どうしたと聞いてくる視線に、やっぱり好きだなと思う。
    「なあ、ボス。……キスしていいか?」
    結局黙ったままではいられなくて、手元のグラスを置いた。ブラッドリーが楽しそうに喉を鳴らす。
    「さっきから考えてたのはそれか?」
    気づいてたのかとも言えずに頷くしかない。自分でもちょっと挙動不審だったかもと思う。
    テーブルの上のボトルはまだ残りがある。ブラッドリーがカインも好きだろうと選んでくれた酒なのは知っている。いつも飲んでる安いエールみたいに一気飲みして楽しむようなものじゃないのも分かってる。グラスに口をつけたままじゃキスはできないけれど、二人きりでゆっくり酒を飲んで話す時間も大切だ。
    1972

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