ひなどり(鶴薬)本日も本丸は騒がしい。
短刀たちが走り回って遊ぶ音。仲が悪いようでいいような者たちが言い争っている声。そこかしこから鮮やかな音がする。
薬研の部屋は本丸の中でも随分と隅の方にあるので、その喧騒も少しだけ遠い。
これくらいの音があった方が、作業にも読書にも集中出来るので良かった。
入り口である障子には、離席中の木札を立て掛けている。
薬研の部屋は診療室のように扱われる時があるので、念のため用意してあるものだった。
たまにはいいだろうと、時折こうしてちょっとしたズルをしてひとり、作業に没頭するのだった。
急患がいるようなら、周りの騒がしさですぐに気づく。生死に関わるものなら、そもそもここには来ずに、みな真っ先に審神者の元へ向かう。
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