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    あるぱ

    一次創作のBLなどを書く

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    あるぱ

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    三題噺のお題ガチャでひとつ/宇宙かぶりしてしまったな……/創作小説

    #創作小説
    creativeFiction

    さようなら、ユニバース



     ハロー、地球の人たち。
     元気ですか?
     私は目下GN-z11銀河系内を浮遊中。あ、遠くでバチッと光ったやつは恒星の赤ちゃん。ここでは毎日そんな光景が見られます。星が生まれ、死に絶えていく。美しいけど見慣れてしまうとなんてことはありません。私はフライパンでポップコーンを作るところを想像します。ぽんぽん弾けて生まれて、時々できそこないのコーンが底に残ってるの。
     ハロー、ハロー。
     ここは地球から134億光年彼方。いまごろみんなはなにをしてるかな?


     モニターを閉じる。背もたれによりかかり、ひとつ息をついた。茶番だと君は思うだろうか。そうだ、茶番だ。そうでなければ私の脆弱な理性など、あの星が遠くで光って一度瞬く間に砕け散ってしまう。
     君のことを思うけれどもう顔はよく思い出せない。この狭いコクピットにはいって、どれだけの時間が経ったのだろうか。疑問はいつも私にとっての地雷だ。それを深追いすればきっと、私の脳みそは壊れてしまう。コツは、追いかけないこと。浮かんで思ったことは、そのまま流す。窓の外、漆黒の背景に転々と浮かぶ光の群れのなか。宇宙に。
     ハロー、と目を閉じて声をかける。答えはない。ここは134億光年の本当の彼方。はたして、地球ってまだあるんだろうか。
     あるよ、と声がして目を開ける。窓の向こうに、黒い靄が浮かんでいる。私は無視してもう一度まぶたを下ろしてしまう。
    「無視しないでくれ」
     彼は言った。私は答えない。コクピットの中では、コンピュータの稼働音だけが、唸るように聞こえる。
    「約束だから、ちゃんとあるよ。見せようか?」
     靄はするりとコクピットに入ってきて、人の顔になる。私は煙を散らすように片手を降った。
    「必要ない。あなたは約束は守るんだろ」
    「ああ、当然だ。守るよ」
     彼は笑って、私の反対側に移動してまた顔を作った。
    「君がそうやって、ここで観測しているのならあの星はちゃんと生かそう」
     煙が歪む。顔の形が変わり、それは女の姿になった。途端に雷に撃たれたような衝撃を覚え、私は両手で顔をおおった。本当に忘れていたなんて、私が、君の顔を。
    「君がそうやって、理性を保つうちはね」
     女は笑っている。
    「外道」
     口の中で低く呟くと、彼は微笑んだ。
    「もっと酷い呼ばれ方をしたこともあるんだ。たとえば、邪神とかね」
     私はこれが私に近づいてきた日のことを、もはやよく思い出せない。なにせ昔の、遠い遠い昔の話だ。たしか神の話をした。たとえば、科学における観測者と神の存在について。そして彼は最終的に、キリスト教徒である私をせせら笑ったあと、
    「それじゃあ、君、そのカレの気持ち分かるようになれば」
     と、ぱちんと指を鳴らすと私は宇宙にいた。
     しらじらと白銀の小型の宇宙船のなかは狭くて、しかし私が生きていけるのはこの、ほんの5平米ほどの広さだけなのだ。
     私は高性能の望遠鏡で地球を眺めている。毎日。毎日毎日毎日毎日。
     私が観測しなくなれば地球はなくなるのだ。
     あの青い星には私の妻と子どもがいる。いや、もういないかもしれない。光の速さですら134億年の先なのだ。あの地球の姿は、いったいいつのものなんだろう。
     でもいないとしても、きっと私の子の子どもや、その子どもの子どもが暮らしているんだろう。だから私はこれを辞める訳にはいかなかった。

     彼はまた靄に姿を変えて、私の顎の下をするりと撫でた。
    「君は頑丈だね」
     声が笑っている。
    「遊び甲斐がある、本当に」

     名状し難い神様の傍らで、今日も私はかの星をみつめている。
     ハロー、ハロー、こちらGN-z11銀河、宇宙の最果てなんて呼ばれる場所です。誰か、聞こえていますか?


    おしまい


    1つ目は『宇宙船のコクピット』
    2つ目は『掌』
    3つ目は『遊ぶ』
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    あるぱ

    DONE三題噺のお題ガチャでひとつ/宇宙かぶりしてしまったな……/創作小説さようなら、ユニバース



     ハロー、地球の人たち。
     元気ですか?
     私は目下GN-z11銀河系内を浮遊中。あ、遠くでバチッと光ったやつは恒星の赤ちゃん。ここでは毎日そんな光景が見られます。星が生まれ、死に絶えていく。美しいけど見慣れてしまうとなんてことはありません。私はフライパンでポップコーンを作るところを想像します。ぽんぽん弾けて生まれて、時々できそこないのコーンが底に残ってるの。
     ハロー、ハロー。
     ここは地球から134億光年彼方。いまごろみんなはなにをしてるかな?


     モニターを閉じる。背もたれによりかかり、ひとつ息をついた。茶番だと君は思うだろうか。そうだ、茶番だ。そうでなければ私の脆弱な理性など、あの星が遠くで光って一度瞬く間に砕け散ってしまう。
     君のことを思うけれどもう顔はよく思い出せない。この狭いコクピットにはいって、どれだけの時間が経ったのだろうか。疑問はいつも私にとっての地雷だ。それを深追いすればきっと、私の脳みそは壊れてしまう。コツは、追いかけないこと。浮かんで思ったことは、そのまま流す。窓の外、漆黒の背景に転々と浮かぶ光の群れのなか。宇宙に。
     ハロー 1598

    あるぱ

    DONE三題噺で一本/創作BL/新入生と先輩の初恋と宇宙(偏愛とは???) 恋は彗星のように

     光の白色、シリウス、ヘイロー、定常宇宙論。

     四月だと言うのに、妙に暑い日だった。ぼくは心臓が激しく脈打つことを意識しないように、好きな言葉で頭の隙間を埋める。
     ボイジャー、シドニア・メンサエ、ダークフロー、重力レンズ。
     言葉はぼくの血管に乗って身体中に回る。不思議と少しずつ脈拍は落ち着きを見せ、胸に何か詰まるような感覚は消える。後ろから、真新しい制服の人たちがぼくを追い越して、高い声で笑った。もつれ合う三人はそれでもまっすぐ進んでいて、ぼくはなんとなく、子猫がじゃれ合う様を思い浮かべる。また心臓が急ごうとするので、ぼくは立ち止まって深呼吸した。
     目を閉じると、ふ、と視点が浮かぶような感覚になる。見えるのはぼくの後頭部、道行くぴかぴかの生徒たち、さらにぐぐっと視点が浮上して、学校の校舎が見え、自宅が見え、遥か向こうの街並みの際が、緩やかに歪曲している地平線まで見える。上昇していくと、晴れ晴れとしていたのにそこには実は薄雲が張っているのだと分かる。対流圏を越え、成層圏に及ぶと次第に空の青色は群青へ、さらには夜のような黒色へうつり変わっていく。これが宇宙の色 2162

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    あるぱ

    DONE三題噺ガチャ/創作小説/30分/すぐ人が死ぬのなんとかしたい(書いてみての所感)とむらう人

     もしも真実があるとするならばここだ。私は扉を押し開けて、そう呟いた。そうだ、それ以外はすべて偽りだ。
     手元の懐中電灯を揺らし、真っ暗な室内に誰もいないことを確認する。深夜の会議室、誰かいるわけもなかった。
     持っていた紙袋を置いて、中のものを引っ張り出す。ジャケットを脱いで、シャツのボタンを外した。着替えを手早く済ませ、イスを引いた。ぎ、と金属の擦れるような音にぎくんと背筋が強ばる。大丈夫。守衛の見回りの時間は把握している。
     二つ折りのミラーを取り出し、長机に置いた。紙袋の底にあったずっしりと重たいポーチを持ち上げ、ファスナーを開けると中身がこぼれ落ちそうになり慌てる。その中からいくつかのメイク道具を、私は綺麗に並べた。下地(これが肝心だそうだ)、ファンデーション(雑誌にのっていたデパコスのやつ)、アイブロウ(違いがよくわからず百均で済ませた)、アイシャドウ(姉がくれた、高級ブランドのもの。紫色でキラキラしていて発色が良い)、口紅(質屋で売ってたシャネルだが、自分に合う色がよく分からなかったせいで自信はない)。
     化粧というのは手間もかかるし金もかかるものだ。私は机 1308

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