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    あるぱ

    一次創作のBLなどを書く

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    あるぱ

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    一次創作/誕生日になると別れた彼女からハガキが送られてくる男の真夜中午前三時(BLではない)

    #創作小説
    creativeFiction

    誕生日効果って知ってる? 誕生日には死亡する確率が上がるらしい。そう言っていたのは倫子で倫子は五年前俺が付き合っていた女で、俺と別れたあとはドイツで暮らしている。ドイツのシュヴァルツヴァルトとかいう広大な森のなかにある都市で働いているそうで、時々送られてくるポストカードにはいつも真っ黒な森の写真が印刷されている。思い出してもおかしな女だった。とにかく洋服の趣味は普通とはかけ離れていて、その上言うことが突飛だ。真夏にスキーをしたいといい、その足で実際南半球にスキーをしにいくような女だった。平凡な俺に付き合いきれるわけもなかった。
     コンビニの前の自動販売機はなぜかだいたい売り切れていて、冷たいブラックコーヒーしかない。俺は舌打ちしながら硬貨を投入してボタンを押す。いつもコンビニで買えばいいのに、出てから気がつくのでまたレジに並ぶのが億劫になってしまう。俺はカフェオレ党なのに。
     深夜のコンビニの駐車場には黒いバンが一台止まっているきりで、いつきてもあるから多分コンビニの店員の車なのだろう。田舎のファミマの近くには田んぼしかなくて、真っ暗な中にコンビニだけが煌々と輝いている。母親が死んで残された家に戻ってきたのは三ヶ月前だ。エンジニアの仕事はそれなりに上手くいっていて、フリーでもなんとか食っていける。家から出なくていいし向いていると思う。
     真夜中に自転車に乗り始めたのは運動不足解消のためで、それも先月同い年の友人がある日ぽっくり死んでしまったからだ。俺と同業で、一ヶ月のうち一日外に出ればいいような男だった。食事はほとんどネットスーパーのインスタント食品とウーバーイーツで賄っていたそうで、奥さんはたしかいたと思うが随分前から別居していたようだ。
     そいつの葬式に出た次の日俺は自転車を買って、夜な夜な走らせるようになった。もっとも目的地は特にないので、三十分ばかり漕いでここのファミマにより、また三十分かけて帰宅するだけである。コンビニのベンチで一息入れるまででワンセットだ。
     小さなプルタブを持ち上げ、中身を喉に流し込むと薄く苦い。缶コーヒーはいつもおいしくないと思う。
     倫子の話だが、倫子は別れてドイツに行ってからも年に数回ハガキをよこすが、どういうわけだがそのうちの一度は必ず俺の誕生日で、それ以来なんとなくあの女の言っていた誕生日効果という言葉が頭蓋骨の裏側に張り付いていて誕生日が近づく度に思い出すのだ。誕生日に人は死亡する確率が高まる。それは言わば必然で(例えば浮かれていた、飲酒していた、元々の希死念慮が誕生日によって高まった、など)、だから別に少しも不思議なことではない。蛇足だが独身の男は死亡する確率がそうでない男よりも高いらしく、総合すると俺は多分誕生日に七割くらいの確率で死ぬのではないだろうか。
     倫子のハガキにはいつものように黒い森がプリントされているだけで一言のメッセージもなかったが、それをみていると不思議と「生きてるよな?」と言われている気がした。別にあの女に未練がある訳では無い。倫子は三白眼でいつも金髪が根元だけ黒かった。通りすがりの人が彼女を見る目。あー、DQN。そんなに美人でもなかったし、とくにセックスの相性がよいわけでもなかった。ただ時々面白いことを言う。そういうところに振りまわされてもいたし、救われてもいた。もう五年も前の話だ。あの時は終電ギリギリまで仕事をしていて、結局電車が間に合わなくて最寄り駅の三つ手前の終駅から二時間かけて歩いて帰るような毎日だった。だからどうかしていたのだ、あんな女と付き合うなんて。
     空になった缶をゴミ箱に入れるとガラリと甲高い音が夜の暗闇に響く。俺はのろのろと自転車にまたがって、また三十分の道を行く。
     外灯がほとんどないから行先は真っ暗だ。自転車のライトはジージーと大きな音を立てる割に控えめで頼りない。もう日付は変わっていて今日が俺の誕生日だ。一年で一番死亡する確率の高い日。
     それでも、心のどこかで俺は誕生日に届くあのハガキを待っているように思う。何も言わずともまだ倫子の心の片隅に俺が存在していると思うと不思議と安堵できた。仕事で関わる人間はメールか電話しか関わりがなく、友人と呼べる人間もほとんどいない、家族もいないし親戚とも希薄だ。そんな中であの女だけが俺を気にしてくれている。少なくともわずかに、孤独が癒されるのは確かだ。
     重ねて言うが、決してあの女に未練があるとかそういうわけではないが。
     家の前に自転車を置いて、ポストの中身を掴んだ。チラシ、チラシ、チラシ。その隙間にハガキを見つける。俺はそれを確認せずに纏めて持ったまま、玄関を入った。じいちゃんの代からある一軒家は古くどこもかしこもガタがきているから引き戸を開けるだけでうるさい。
     シンクの上の蛍光灯だけつけると、ジジジと不穏な音がした。しらじらとした明かりの下で俺はチラシの間にあったハガキだけをよる。見慣れた綺麗とは言えない筆記体のアルファベット。前回届いたのはたしか、三ヶ月くらい前だ。
     裏返すとそこには黒い森はなくて、二人のカップルがキスしている写真だった。片方は倫子で、相手は知らない外国人だ。どちらもドイツの民族衣装みたいな服を着ている。
     結婚しました!
     よれよれの日本語の走り書き。あー、と俺は思う。倫子はたぶん誕生日効果なんて言葉とっくに忘れ去っていて、習慣的に俺にハガキを送っていただけなのだろう。自分は日本にハガキを送る相手がいるのだと、思っていたかったのかもしれない。俺は舌打ちをした。そんなことは100パーセントないわけだが、もしも俺が倫子にたいして何がしかの特別な感情を抱いていたとして、だとしたら今日、きっと自死するだろうなと思う。もちろん俺はそんな繊細なタイプじゃないし倫子に特別な感情を持っていないのでそんなことはしないが、お前、下手したら人殺してたぞと心の中だけで毒づく。
     写真の男は少し太っているがドイツ人らしく鼻が大きく彫りが深く、倫子よりも随分歳上に見える。俺はひとつ鼻を鳴らして、それをテーブルに放った。冷蔵庫をあけ、レッドブルを二本出す。
     仕事の締切が間近だった。あと二三時間は眠れないだろう。誕生日なんてそんなもんだ、俺にとっては、いつもと変わらない一日だ。
     生まれた日に死ぬってなんかロマンチックだね、とあの時の倫子はいっていたがロマンチックなんてクソ喰らえだよと俺は思うし多分来年にはもう誕生日効果なんて忘れてるだろう。
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    あるぱ

    DONE三題噺のお題ガチャでひとつ/宇宙かぶりしてしまったな……/創作小説さようなら、ユニバース



     ハロー、地球の人たち。
     元気ですか?
     私は目下GN-z11銀河系内を浮遊中。あ、遠くでバチッと光ったやつは恒星の赤ちゃん。ここでは毎日そんな光景が見られます。星が生まれ、死に絶えていく。美しいけど見慣れてしまうとなんてことはありません。私はフライパンでポップコーンを作るところを想像します。ぽんぽん弾けて生まれて、時々できそこないのコーンが底に残ってるの。
     ハロー、ハロー。
     ここは地球から134億光年彼方。いまごろみんなはなにをしてるかな?


     モニターを閉じる。背もたれによりかかり、ひとつ息をついた。茶番だと君は思うだろうか。そうだ、茶番だ。そうでなければ私の脆弱な理性など、あの星が遠くで光って一度瞬く間に砕け散ってしまう。
     君のことを思うけれどもう顔はよく思い出せない。この狭いコクピットにはいって、どれだけの時間が経ったのだろうか。疑問はいつも私にとっての地雷だ。それを深追いすればきっと、私の脳みそは壊れてしまう。コツは、追いかけないこと。浮かんで思ったことは、そのまま流す。窓の外、漆黒の背景に転々と浮かぶ光の群れのなか。宇宙に。
     ハロー 1598

    あるぱ

    DONE三題噺で一本/創作BL/新入生と先輩の初恋と宇宙(偏愛とは???) 恋は彗星のように

     光の白色、シリウス、ヘイロー、定常宇宙論。

     四月だと言うのに、妙に暑い日だった。ぼくは心臓が激しく脈打つことを意識しないように、好きな言葉で頭の隙間を埋める。
     ボイジャー、シドニア・メンサエ、ダークフロー、重力レンズ。
     言葉はぼくの血管に乗って身体中に回る。不思議と少しずつ脈拍は落ち着きを見せ、胸に何か詰まるような感覚は消える。後ろから、真新しい制服の人たちがぼくを追い越して、高い声で笑った。もつれ合う三人はそれでもまっすぐ進んでいて、ぼくはなんとなく、子猫がじゃれ合う様を思い浮かべる。また心臓が急ごうとするので、ぼくは立ち止まって深呼吸した。
     目を閉じると、ふ、と視点が浮かぶような感覚になる。見えるのはぼくの後頭部、道行くぴかぴかの生徒たち、さらにぐぐっと視点が浮上して、学校の校舎が見え、自宅が見え、遥か向こうの街並みの際が、緩やかに歪曲している地平線まで見える。上昇していくと、晴れ晴れとしていたのにそこには実は薄雲が張っているのだと分かる。対流圏を越え、成層圏に及ぶと次第に空の青色は群青へ、さらには夜のような黒色へうつり変わっていく。これが宇宙の色 2162

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    あるぱ

    DONE三題噺ガチャ/創作小説/30分/すぐ人が死ぬのなんとかしたい(書いてみての所感)とむらう人

     もしも真実があるとするならばここだ。私は扉を押し開けて、そう呟いた。そうだ、それ以外はすべて偽りだ。
     手元の懐中電灯を揺らし、真っ暗な室内に誰もいないことを確認する。深夜の会議室、誰かいるわけもなかった。
     持っていた紙袋を置いて、中のものを引っ張り出す。ジャケットを脱いで、シャツのボタンを外した。着替えを手早く済ませ、イスを引いた。ぎ、と金属の擦れるような音にぎくんと背筋が強ばる。大丈夫。守衛の見回りの時間は把握している。
     二つ折りのミラーを取り出し、長机に置いた。紙袋の底にあったずっしりと重たいポーチを持ち上げ、ファスナーを開けると中身がこぼれ落ちそうになり慌てる。その中からいくつかのメイク道具を、私は綺麗に並べた。下地(これが肝心だそうだ)、ファンデーション(雑誌にのっていたデパコスのやつ)、アイブロウ(違いがよくわからず百均で済ませた)、アイシャドウ(姉がくれた、高級ブランドのもの。紫色でキラキラしていて発色が良い)、口紅(質屋で売ってたシャネルだが、自分に合う色がよく分からなかったせいで自信はない)。
     化粧というのは手間もかかるし金もかかるものだ。私は机 1308

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