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    あるぱ

    一次創作のBLなどを書く

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    あるぱ

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    三題噺で一本/創作BL/新入生と先輩の初恋と宇宙(偏愛とは???)

    #創作BL
    creationOfBl
    #小説
    novel

     恋は彗星のように

     光の白色、シリウス、ヘイロー、定常宇宙論。

     四月だと言うのに、妙に暑い日だった。ぼくは心臓が激しく脈打つことを意識しないように、好きな言葉で頭の隙間を埋める。
     ボイジャー、シドニア・メンサエ、ダークフロー、重力レンズ。
     言葉はぼくの血管に乗って身体中に回る。不思議と少しずつ脈拍は落ち着きを見せ、胸に何か詰まるような感覚は消える。後ろから、真新しい制服の人たちがぼくを追い越して、高い声で笑った。もつれ合う三人はそれでもまっすぐ進んでいて、ぼくはなんとなく、子猫がじゃれ合う様を思い浮かべる。また心臓が急ごうとするので、ぼくは立ち止まって深呼吸した。
     目を閉じると、ふ、と視点が浮かぶような感覚になる。見えるのはぼくの後頭部、道行くぴかぴかの生徒たち、さらにぐぐっと視点が浮上して、学校の校舎が見え、自宅が見え、遥か向こうの街並みの際が、緩やかに歪曲している地平線まで見える。上昇していくと、晴れ晴れとしていたのにそこには実は薄雲が張っているのだと分かる。対流圏を越え、成層圏に及ぶと次第に空の青色は群青へ、さらには夜のような黒色へうつり変わっていく。これが宇宙の色だ。宇宙には空気がないから音がない。静かと言うには過分な静寂が、耳の隙間までみっしりと詰まる。そしてぼくは宇宙を泳いで自由になる。

     他人と関わることは自分の世界を増やすことだ。そう思うことで、ぼくは少しだけ社会に適応できるようになった。中学生のころ、ほとんどクラスにあがらず保健室で過ごしていた時、一緒に図鑑を見ていた養護教諭は、
    「人と関わることは、それだけ世界が広がることなんだよ」
     と根気強くぼくに伝えたが、ぼくはそれが間違っていると思っていた。
     ぼくたちはそれぞれ固有の世界を持っていて、関わるということはその世界を知ることだし、相手を受け入れるということは、生きる世界が増えることだ。ぼくはいつもそのことを考える時、太陽系の惑星たちが頭に浮かぶ。整然と距離を保ちながら、くるくる回るぼくたち。完全に交わることなんてなくて、でもそれが正しい。
     そのことに気がついた中学二年の冬、ぼくはやっとクラスに入って行けるようになった。まだ人の集まりを見るとドキドキするけど、自制の範囲内だ。やばい、と思う時は、ぼくの意識は宇宙に飛ぶ。

     突然頭上からなにか落ちてきて、ぼくはべちゃりと地面にうつ伏せに倒れた。一瞬何が起こったのかよく分からない。息を止めてじっとしていたのは、次にどう反応するのが正しいのか分からなかったからだ。文字通り地面とキスをしたまま、ぼくは深呼吸する。背中に重量――人一人分くらいだろうか――を感じ、深呼吸すら一苦労だ。
     おでこが痛い。
    「いつまでそうしてんの」
     声が降ってきて、ぼくはゆっくりと顔を上げた。いつの間にか目の前には校門があって、ぼくは空想に浸りながらも登校を遂行していたらしい。真上には大きな楡の木がある。
     背中に乗っていた重さが消え、それは倒れるぼくを覗き込んだ。
     目を引いたのは髪だ。
     ブロンドのように明るい髪色。それは肩よりも長く伸ばされて、さらりとぼくの頬に落ちてきた。うっすらと甘い匂いに、喉の奥がこしょこしょする。
    「ぼーっとしてんな、新入生」
     思ったよりも低い声でぼくはもう一度驚いた。すうっと切れ長の目、整った顔立ちはともすれば女子にしか見えない。
     彼はにっと八重歯を出して笑う。
    「よそ見してると、隕石落ちてきた時に死ぬぞ」
     右手を差し出され、反射的に掴んだ。力強く引き上げられて、ぼくは立ち上がる。
    「隕石が落ちてきたら、よそ見してなくても死にますよ」
     するりと口から言葉が出てきて、そのことに自分で驚いた。目の前の少年は、少しだけ目を見開いたあと、
    「お前、面白いな」
     と、また歯を見せて笑った。ぎゅるんと胸の奥で何かが収縮して心臓が止まった!と錯覚するほど痛い。
     カチコチに固まるぼくを彼は不思議そうに眺め回したあと、思い出したようにポケットから何かを取り出し、ぼくの額の叩きつけた。
    「気に入ったから、ウチに入れよな新入生」
     視界が紙に遮られる。ぼくは慌てて額に張り付いた紙切れを剥がした。御丁寧に両面テープが貼ってあるせいで、ただでさえ痛いおでこにまたぴりっと刺激が走った。
     何も書いてない紙をひっくり返す。マジックの極太で、『天文部 部員募集中!!!!』
     慌てて顔を上げると、彼は踵を返して校門に向かって走り出していた。賑やかに生徒が行き交う中で彼の後ろ姿は、見失いようもないほど目立っている。ぼくは無意識に、手の中の紙を握りしめていた。
     プラチナブロンドみたいな彼の長い髪が、するすると空間に線を引く。ぼくはそれを見ながら、ため息をついた。ぼくに落ちてきたそれは、まるで疾風のように、あるいは白い尾を引く彗星のように、彼方へと去って行った。

    (いうまでもなく、これはぼくの初恋の話)



    あるぱは「入学式」「彗星」「増える世界」を使って創作するんだ!ジャンルは「偏愛モノ」だよ!頑張ってね!
    #shindanmaker #sandaibanashi
    https://shindanmaker.com/58531
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    あるぱ

    DONE三題噺のお題ガチャでひとつ/宇宙かぶりしてしまったな……/創作小説さようなら、ユニバース



     ハロー、地球の人たち。
     元気ですか?
     私は目下GN-z11銀河系内を浮遊中。あ、遠くでバチッと光ったやつは恒星の赤ちゃん。ここでは毎日そんな光景が見られます。星が生まれ、死に絶えていく。美しいけど見慣れてしまうとなんてことはありません。私はフライパンでポップコーンを作るところを想像します。ぽんぽん弾けて生まれて、時々できそこないのコーンが底に残ってるの。
     ハロー、ハロー。
     ここは地球から134億光年彼方。いまごろみんなはなにをしてるかな?


     モニターを閉じる。背もたれによりかかり、ひとつ息をついた。茶番だと君は思うだろうか。そうだ、茶番だ。そうでなければ私の脆弱な理性など、あの星が遠くで光って一度瞬く間に砕け散ってしまう。
     君のことを思うけれどもう顔はよく思い出せない。この狭いコクピットにはいって、どれだけの時間が経ったのだろうか。疑問はいつも私にとっての地雷だ。それを深追いすればきっと、私の脳みそは壊れてしまう。コツは、追いかけないこと。浮かんで思ったことは、そのまま流す。窓の外、漆黒の背景に転々と浮かぶ光の群れのなか。宇宙に。
     ハロー 1598

    あるぱ

    DONE三題噺で一本/創作BL/新入生と先輩の初恋と宇宙(偏愛とは???) 恋は彗星のように

     光の白色、シリウス、ヘイロー、定常宇宙論。

     四月だと言うのに、妙に暑い日だった。ぼくは心臓が激しく脈打つことを意識しないように、好きな言葉で頭の隙間を埋める。
     ボイジャー、シドニア・メンサエ、ダークフロー、重力レンズ。
     言葉はぼくの血管に乗って身体中に回る。不思議と少しずつ脈拍は落ち着きを見せ、胸に何か詰まるような感覚は消える。後ろから、真新しい制服の人たちがぼくを追い越して、高い声で笑った。もつれ合う三人はそれでもまっすぐ進んでいて、ぼくはなんとなく、子猫がじゃれ合う様を思い浮かべる。また心臓が急ごうとするので、ぼくは立ち止まって深呼吸した。
     目を閉じると、ふ、と視点が浮かぶような感覚になる。見えるのはぼくの後頭部、道行くぴかぴかの生徒たち、さらにぐぐっと視点が浮上して、学校の校舎が見え、自宅が見え、遥か向こうの街並みの際が、緩やかに歪曲している地平線まで見える。上昇していくと、晴れ晴れとしていたのにそこには実は薄雲が張っているのだと分かる。対流圏を越え、成層圏に及ぶと次第に空の青色は群青へ、さらには夜のような黒色へうつり変わっていく。これが宇宙の色 2162

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