恋するスーパースター「片耳にだけピアスしてるのって、同性愛者なんだって~」
とある日の何てことない授業の間の休み時間、教室で喋っているクラスメイトの言葉がすこん、と耳を通って脳を揺さぶった。誰が話していたかなんて覚えてないし、どうでもいい。オレが思い浮かべたのはある男だ。
……これは、チャンスなのでは?
♢
神代類に恋をしている。
いつからなのか記憶に無いが、気がつくと目で追ってしまうし、子供みたいに笑っているとこっちが嬉しくなるし、ずっと隣で笑顔にしてやりたいな、なんて思ってる自分がいたのだ。自覚してしまえば、「これは恋なんだな」とすんなり納得した。
そうとなれば次の目標はズバリ、類にもオレを好きになって貰って、恋人同士になることだ!
そう意気込んだはいいものの、相手は同性だ。もちろんオレは魅力的だし、少なからず友人としての好意は持たれていると思う。惚れさせる自信はあるが、人の心とはままならないものだ。絶対に男は好きになれない、なんて気持ちを覆すのは難しいだろう。
しかし! ここであの耳寄りな情報だ!
類は右耳にだけピアスを開けている。イコール神代類は同性愛者。証明完了だ。そうなると、最初のハードルはぐーーんと下がり、類に意識してもらいやすくなる。
「ふっふっふっ」
男が恋愛対象とわかればこっちのものだ。この勝負、オレに分がある。
「ハーーッハッハッハッ!」
首を洗って待っていろよ、類!!
「天馬うるせーぞ」
「また愉快なことやってんな」
♢
とにもかくにも、まずはアプローチだ。類にオレを意識してもらわなければならない。作戦を練らねばな……そう、名付けて神代類・メロメロ作戦だ!
恥ずかしながら恋なんて子供の時以来なので(保育園の先生だった)、どうすればいいのかわからん。身近な人物に相談するにしても、咲希にはちょっと相談しづらいしな……。兄が恋愛であたふたしているところなど、かっこ悪くて見せられない。もちろん、恋が実った暁に家族に恋人を紹介するのは、やぶさかではないが……。
そんなことを考えつつ放課後に街中をぶらついていると、本屋が視界に入ってきて、吸い込まれるように店内に足を踏み入れる。
なるほど、先達の知恵から学ぶのも有りだな。
最初に目に入った女性誌のコーナーには、華やかな白やピンクを基調とした文字が躍っている。ファッション関連が多いが、何々……『モテかわ夢デート♡』『男ウケ愛されメイク術』『これで初Hも大成功! カレがよろこぶ……』……待て待て! 少し過激じゃないか!?
本当に中高生向けの雑誌なのか? と思わず雑誌をひっくり返して確かめてしまった。いかん、こんな、こんな……。
ちょっぴり遠い目をしてしまったが、ふるふると首を振る。参考にするためだ、何でも試しに読んでみるべきだろう、と他の雑誌に目を向けたところで、ふと手が止まった。
まてよ? 類は男が好きなんだよな。ということは、男らしい男に惹かれるのでは……?
手の中の雑誌を見る。これでは夢かわ天馬司になってしまうところだった。危ない。
オレはすんでの所でトラップを回避し(流石オレだ)、男性向け雑誌のコーナーへと足を進めるのだった。
「なんかイケメンが女性誌持って百面相してたんだけど」
「何ソレこわ」
♢
ふっふっふっ、イメージトレーニングはばっちりだ。
あの後雑誌を購入したオレは、家に帰ると早速熟読して脳内の類相手にシミュレーションを重ねた。対女性を想定した指南書だったが、かっこいい男になるのは変わりないだろう。これで類もメロメロだ。
自分に気合を入れながら登校していると、目の前に周りより頭一つ分高い後ろ姿が見えた。類だ。
「おはよう!!」
『モテる男の仕草』、まずは笑顔で爽やかに挨拶だ。これはまあ、いつもやっているから、なんてことはない。類の顔を見れば、自然と笑顔になるしな。
「おはよう、司くん」
類がオレの顔を見てふわっと微笑む。柔らかな眼差しに心がむず、と騒めいて一瞬言葉が詰まった。ええい! オレがキュンとしてどうする!
「そ、そういえば昨日言ってた装置は完成したのか?」
「ああ! ぜひとも実験に協力してもらいたくて少し張り切ってしまったよ。えむくんの要望通り、人の動きに反応してシャボン玉が出るんだけど、せっかくだから色々な大きさが射出するようにして、音声にも反応したら面白いかなって……」
オレが話を振ると、類は待ってましたと言わんばかりに早口で喋り出した。
その2、相手の話をよく聞くこと。
これもオレと類はそろってショーが大好きだから話題には事欠かないし、専門的なことを話されると理解はできないが、目を輝かせて生き生きと喋る類を見るのは好きだ。
「早速今日のお昼休みに試してみてもいいかい?」
「ん、ああ! もちろんだ!」
「ならせっかくだからランチも一緒に食べよう」
「わかった!」
図らずも類の方からランチに誘われてしまった。なんてラッキーな日なんだ! これも日頃のオレの行いが良いからだな……おっと忘れるとこだった。
「しかし、今日は暑いな」
そう言うと、オレはおもむろにシャツの袖を捲り、ネクタイを少し弛めた。
よくわからんが、これも男らしさを感じてキュンとする仕草らしい。おそらく女性と比べると男性の方が腕が太いから、逞しさを感じるんだろう。
「そうかな?」
類が不思議そうに首を傾げる。ん? んん~?
よく見ると、こいつも腕を捲っているし、ネクタイを弛めているじゃないか!
常に重い機材を扱っているせいか、類の腕は意外とがっしりしていた。まじまじと見比べたことは無かったが、自分の袖を捲ったせいか、腕の太さの違いが如実にわかってしまう。
こ、これは男らしくないと思われて(決して貧弱ではなく人並みだが)逆効果なのでは……!?
「でも司くんは着崩さない方が似合っているよ」
オレが失敗に打ちのめされていると、類がそう言ってネクタイを整えてくれた。なるほどな、オレにはこっちの方が魅力的ということか。モテ仕草も大事だが、己の持ち味も大事にしないとな。
類の言葉にオレはありがたく袖を下ろして元に戻した。ちょっと肌寒かったしな。
「変人ワンツー、新婚さんごっこしてた」
「結婚してないじゃん。事実婚?」
♢
さて、今日は中庭で優雅なランチタイムだ。ベンチにハンカチを広げると(類の分は断られてしまった)、早速弁当箱を取り出す。
その4、豪快に食事をする。
豪快? 食事を豪快にってなんだ? ご飯をかき込むなんてことは行儀が悪いし、いっぱい食べればいいのだろうか?
そう思って今日は少し多めに詰めてきた(今日の弁当当番はオレだ。もちろん咲希の分はかわいらしい見た目で作ってある)。それに、どうせ類にお裾分けするしな……。
「む、今日は弁当なんだな?」
「ああ、珍しく母さんが持たせてくれてね」
類の弁当箱の中身は茶色一色かと思いきや、野菜を使わずになるべく色々な食材が使われている。親御さんの苦労が偲ばれるな。
しかし今日も「野菜と交換しよう」なんて言ってくると思ってたから、少し多すぎたかもしれない。食べきれないこともないが……。
「司くん、その生姜焼きおいしそうだねえ」
「そうだろう、自信作なんだ! 類も食べるか?」
「司くんが作ったのかい? ありがとう、いただくよ」
類は生姜焼きを頬張り、嬉しそうに顔を緩めている。そんなに生姜焼きが好きだったのか?
いつも軽めの昼食ばかり用意してるから食に興味が無いのかと思っていたが、案外こいつはよく食べる。類はオレの弁当からちょくちょく拝借しつつ、自分の弁当もぺろりと平らげた。む、こいつよく噛んでないな。
きちんと噛んでは飲み込むのを繰り返すオレは、類よりも食べ終わるのが遅い。それはお互い了承しているので、類は脚本ノートを取り出して読み始めた。
……そうだ、時間を有効活用しないとな!
オレはじっと類の横顔を見つめた。『目が合うまでじっと見つめる』、だ。ふとした瞬間に目が合うと、ドキッとしてしまうらしい。
「…………」
じーっと見つめると類はオレの視線にすぐ気がつき、こちらを見返す。
「…………」
類は不思議そうな顔をしているが、オレが物を食べているときは喋らないのを知っているので、何も訊かずに黙って見つめ返してくる。
「…………」
なんかずっとお互い見つめ合ってるな。目を合わせるという目的は達成したが、ここからどうすればいいんだ? 類はドキッとしたのか? むしろこれはメンチを切り合っているのでは?
悶々と考えていると、不意に類が目を細めて、ふ、と優しく微笑んだ。
ん!?
なんだ!? 今すごくドキッとしたぞ!?
思わず正面に向き直って、食事の続きに取り掛かった。危ない、なんだ今のは、すごい破壊力だった……。
顔が火照るのを自覚しながら、オレはひたすら弁当に集中するのみだった。
「中庭で天馬と神代がテレパシーで交信してた」
「マジかよ。ついにUFOでも呼ぶんかな」
♢
放課後はワンダーステージでショーの練習だ! えむではないが、今日のオレは元気もりもりの絶好調だ!
難しいアクションも難なくこなし、ダンスのステップも華麗に決まった。
「司くん今日はすっご~~くキラキラだね!」
「ふははは! もっと褒めてくれてもいいんだぞ!」
「えむ、調子に乗るとうるさいから程々でいいよ」
寧々がいつも通りかわいくない口をきいているが、否定しないところを見ると認めてくれてはいるらしい。今のオレなら類のどんな無茶ぶりにも答えられるぞ! ……いや、危なくない範囲ではあるが。
その類の新しい装置も大好評で、えむが類の周りを嬉しそうに飛び跳ねている。
「類くんのシャボン玉装置もすごいよ~! シャララ~ぽわぽわ~ってなって、すっごくお話に合ってるの!」
今回えむは魔法使いの役なのだが、今までの光のエフェクトと違い、シャボン玉で魔法を表現したのだ。えむが杖を振る動きに合わせて流れるように出てくるシャボン玉は、観客も間違いなく楽しめるだろう。
さすが我らワンダーランズ×ショウタイムの演出家だ!
昼間に装置の実験をしたときに、どんなところが大変だったのかを類から聞いていたので(構造の難しい話はわからなかったが)、無性に褒めてやりたくなった。よし!
「さすが類だな! 素晴らしいショーになるぞ!」
ぽん、と類の頭に手を置き、労わるように撫でた。
頭ぽんぽんに落ちない女性はいない! らしい。ただし諸刃の剣でもあるそうだ……どういうことだ?
「つ、司くん?」
類の背が高い所為で少しやりにくいが、よしよしと感謝の念を込めて撫でる。案外髪の毛がサラサラで気持ちいいな。
類は少し戸惑っていたようだが、何を思ったのか、自分もオレの頭に手を置いた。ぽんぽん、なでなで。
「む? どうした?」
「ううん、みんなが喜んでくれるから、一層がんばれるんだ。だから、僕からもありがとうの気持ちを込めて」
なでなで。うーむ、こいつ、撫でるのうまいな。ミクたちの言ってた通りだ。
うっとりと目を閉じて、頭を類の手の平にぐりぐりと押しつける。もっと撫でろ。
「ちょっと」
寧々の声にうっすらと目を開くと、信じられない物を見るような目でこっちを見ている。
「わたしたちもいるんだけど」
「んー、すまん……寧々も撫でてもらうか?」
「ぜっっったいに嫌」
吐き捨てるようにそう言うと、寧々はえむの腕を引っ張って(えむは両手の隙間からこっちを見てきゃーきゃー言ってた)、更衣室へと歩いて行った。
ぽつんと残る男二人。
「えーと、僕らも早く着替えようか」
「そうだな……」
練習で汗をかいてしまったし、このままでは風邪を引いてしまう。
ぽわぽわした頭のまま、類と連れ立って更衣室へと向かった。なんだか気持ちがいいな。そうだ、絶好調ついでにアレも挑戦しよう。
「類」
呼びかけに振り向いた体を覆うようにして、どん、と右手をロッカーについた。類の背後にあるスチール製のロッカーがガシャンと音を立てる。
壁ドンだ! これは咲希に聞いていたからオレもわかるぞ! このまま顔を近づけて耳元で甘い言葉を囁けば……。ささやけば……。…………。
届かん!
そもそもオレの体で相手を覆うようにしなきゃいけないのに、類の身長が高い所為でまったく理想のシチュエーションになっていない。ちょっと屈んでもらうか?
ちらりと類を見上げると、目を見開いて固まっている。
「え、ええっと、大丈夫かい? 何か躓いた?」
「うむ……」
心配そうに言う類に失敗を悟り、大人しく体を戻した。恥ずかしい。類の言葉に便乗して、転んだことにしよう。
はあ……最後の最後に失敗してしまうなんて、情けない……。
……いや、がっかりしている暇など無い! 明日からもガンガンアピールあるのみだ! ゆけ、天馬司!
「司くんと類くん、ぽわわ~んってしてたね~」
「どうでもいいけど、場所を選んでほしいよね」
♢
「なかなかいい線をいってると思うんだが……」
あれから毎日手を替え品を替え、類に対してアピールを繰り返しているが、あまり態度が変わった気がしない。もっと意識してもらうにはどうしたらいいんだ?
いっそのこと告白してしまうのもアリだな……。そこからオレのことが気になるようになって……。
なんてのんきに考えていたオレだが、その日の夕方、重大な事実が発覚する。
練習を終えたワンダーステージで、いつもの反省会を終えた後に他愛の無い雑談が始まると、何の流れか、えむがこう言ったのだ。
「類くんって片っぽしかピアス開けてないけど、もう片っぽは開けないの?」
わーーーー!! ダメだえむ! いや、えむはダメじゃないんだ! だが、こういうのはデリケートな問題で!!
オレは脳内で大騒ぎしながら、同性愛が云々というのを、何とかフラットに伝えられないか頭の中でこねくり回していた。どうしたらいい!?
そんなオレの勝手な葛藤などつゆ知らず、類はあっけらかんと言った。
「ああ、中学の時に好奇心で開けてみたはいいけど、思いのほか痛くてね……片方でやめてしまったんだ」
へ?
「そっかぁ~、穴開けちゃうんだもんね~」
ん?
「あ、そうなんだ。てっきり……」
……は?
オレはあまりの衝撃に思考がストップしていた。頭がぐらんぐらん揺れて、みんなの話し声が耳に入ってこない。
類の、ピアスに、意味は無い。イコール、神代類は、同性愛者ではない。証明完了……。
ショックで口を開けて固まっていたら、寧々に「ちょっと司、大丈夫?」と心配されてしまった。それに生返事を返すことしかできず、オレは一足先に上がらせてもらうことになった。
更衣室に入り、よろよろと壁にもたれ掛かる。
類が同性愛者じゃない……同性愛者じゃない……男が好きじゃない……。もしや、今までのアピールは逆効果だったのでは!?
かっこいい男らしさをアピールしてきたが、異性愛者となると話は別だ。オレのかっこよさに男惚れはしたかもしれんが、恋愛には発展しないだろう。
そうなると早急な作戦変更が必要だ。やはり夢かわ天馬司路線か!?
「司くん……?」
ああでも無いこうでも無いと頭を抱えていると、背後から類の声がした。
「なんだか様子がおかしかったから心配で見に来たんだけど……」
優しさが身に染みるが、今は待ってくれ! 作戦会議中なんだ!
どう対応すればいいのか方針が決まらないせいで、余計に挙動不審になる。類が眉を顰めてこちらに迫ってきた。近づくんじゃない!
「司くん、何かあったのかな」
「いや、うん、特に何も無いぞ」
「嘘だ」
うまく言い訳が思いつかずしどろもどろに答えると(役者として不甲斐ない……)、ますます不審に思ったのか、また一歩詰め寄る。だから近い!
「学校も練習中も普通だったのに、急に態度がおかしくなったよね。みんなで話している時からだ……そう、えむくんと話していた時かな。僕のピアスの話になって……」
何こいつ怖いんだが。
名推理過ぎて、今度は類を主役に探偵モノなんていいかもな、なんて現実逃避をしてたら、「こっち見て」と厳しい口調で言われてしまった。
これで怒っている様子ならまだしも、顔いっぱいに心配です、と書いてあるので、申し訳なくなってくる。
……仲間を、好きなやつを悲しませるのはダメだ。
オレは一つ深呼吸すると覚悟を決め、類にピアスのことと、同性愛者だと勘違いしたことを白状した。類は無表情で「へえ……」と相槌を打つだけだったが、ここは誠心誠意、謝るしかない!
「勝手に決めつけてすまな……」
「本当だって言ったら?」
「へ?」
「だから、僕が本当にゲイだって」
「は?」
何言ってるのか理解できずに、ぽかんと口を開けて類を見上げる。あれ? 類は同性愛者じゃなかったけど、同性愛者だった……?
類は眉を下げて「えむくんを混乱させるかと思って、あの場ではああ言ってしまったけど……」と俯いたが、すぐに顔をあげると「ねえ」と呼び掛けてきた。
「気持ち悪い?」
「え、いや」
「軽蔑した?」
「そ、その……」
類が問いかけながらぐいぐいと迫ってくる。だから近い近い近い!
あっちが近づくたびにこっちもじりじりと下がっていたら、どん、と背中がロッカーにぶつかる感触がした。退路を断たれた! と焦ると同時に、耳の両脇からバンッと音が鳴った。
類が覆いかぶさるようにして、両手をオレの顔の横についている。……類が……類しか、見えない。ゆっくりと細められた目が、オレを射抜いている。
「僕のこと、嫌いになった?」
オレの耳元で囁くようにして、類が普段より低い声を出す。息のかかった所がぞわぞわとして、それがいっぺんに背中まで抜けていく。
何だ!? 何だこの、い、い、いやらしい感じは!? ホントにこいつ類か!?
というかコレ、壁ドンだ!!
ザ・お手本のような壁ドンに、オレは言語中枢をやられてしまったのか、ぱくぱくと口を開けることしかできない。だが優秀なオレの脳みそは、とある答えにたどり着いた。
……む? 結局類は男が好きなんだよな。ということは結果オーライじゃないか! 今こそ集大成を見せる時だ! かっこよく決めろ、天馬司!
「る……」
意を決して類の顔を見上げた所で、体が停止してしまった。真っ直ぐに見つめてくる視線が、熱い。じりじりと焼かれて、顔がどんどん熱を持っていくのがわかる。
オレは思わずぎゅっと目をつぶった。
言え! 言うんだ! オレの気持ちを伝えろ!
「…………す、きだ……」
心の中であれだけ勢いづけたのに、実際に口からこぼれた言葉は、蚊の鳴くような声だった。
これ、聞き取れなかったなんてこと無いよな? こんなはずじゃなかったんだ! もっとスマートに告白する予定が……。
反応を見るのが怖くて、でもやっぱり見たくなって、薄く片目を開く。
あれ?
「……ふふ」
類は(おそらく)オレに負けないくらい真っ赤な顔をして、嬉しそうに目を細めていた。
それを見たら、やっぱりオレは類の笑顔が好きだな、なんて改めて思ってしまった。もっと笑顔にしてやりたいし、オレも隣で笑っていたい。
類が、口を開く。
「司くん、僕も――」
この続きは言うまでもない――――メロメロ作戦、大成功だな!