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    ココノトリ(ノトリ)/はと

    二次創作・一時創作、ジャンル問わず、あと勉強中の覚書や模写、ラクガキなんかもまとめて放りこんでいこうと思う場所です☆
    なんでもありだぜ!な方は、お暇つぶしに覗いてやってくださいませ。

    大逆転裁判用@kokonotori 日常雑多用@hatonekomofu

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    短いお話のはずがおさまりがつかなかった短文。なかなかオチにたどり着かずずるずる書いてしまったので……、続きを書くか迷いつつ一旦供養🙏一
    原作軸、居候弟子→バロ時点の、弟子バロ未満の二人のいざこざ?話です。

    #弟子バロ
    apprenticeBallo

    謎の婦人に嫉妬する弟子の話(途中まで) 月に一度、この屋敷を訪れる婦人がある。訪問客が多いとは決して言えないこの場所では、客人というだけで少なからず目立つ。女性であれば尚更である。
     亜双義が師であるバンジークス卿の館に居ついて今月で一年と三ヶ月になるが、この定期的に現れる婦人の用向きが気になり出したのは、数度見かけた後のことだった。
     毎月月末の日曜の午後。慎み深い淑女といった装いで、かの婦人はやって来る。家政婦長に迎えられても挨拶程度で言葉少なく、応接室で半刻ほど師と歓談した後、来た時と同じ顔で帰って行くのだ。
     人並み以上の観察眼を持っていると自負していた亜双義だったが、何度か見かけてもその婦人に関する情報は増えなかった。"淑女を絵に描いたような、控えめだが芯のありそうなご婦人"、というだけである。弁護士を志した頃から一貫して真実を見抜く目を鍛えて来たはずが、それっぽっちのことしか見当がつかない。これは甚だ情けなく、かのご婦人を見掛けるたびに、どうも気にかかるようになっていった。
     情報を売りにくる密偵のような存在なのか、それとも妙に手際の良い商売女か。後者には到底見えなかったし、高級娼婦が被告人席に立ったある事件の記憶によれば、師はその手の情報に通じていない。
     ならば、単にああいう女が好みで、定期的に午後の茶に誘っているという可能性はあるだろうか。ワインやそれに合わせる食事ならまだしも、あのバロック・バンジークスが女に頓着するなど、亜双義にはとても想像できないが。
     塵も積もればなんとやらで、小さな疑問も積もり積もれば山となる。毎度何者かと気になる位なら、尋ねてしまう方がいいのではないか。そう思ったある時、亜双義は直接師に問うてみた。今の婦人は何用で来られるのか、毎月見かけているように思うがと。
     それに対する返答は「ただの仲介者だ。気にする必要はない」だった。
     訊いてしまえと考えた亜双義の期待とは裏腹に、何故か煙にまくような口調の師からは、はっきりとした答えを得られなかったのである。
     
     そうこうしているうちに月日は流れ、亜双義は師へのひとかたならぬ思いを自覚することになったのだが、そうなると彼女への疑問の性質もまた変わってきた。
     あの女は何者なのか。同じ屋根の下師と寝食を共にする亜双義が、唯一素性を知らない出入りの人間だと言っても過言ではない。応接室へ案内される細い背中や、きちんと結い上げられたブルネットの毛束、あのくすんだ藤色のドレスのかっちりしたライン……そんなものを見かけてしまうと、正直気が気ではなくなった。
     師はああいう女が好みなのだろうか。そもそも、女を好むたちなのかさえ判然としないというのに、一体どんな顔で彼女に向かい合い、どんな話をするというのか。
     他人が知らないと思っていた僅かに柔らかい表情さえも、彼女にならば向けられているのかもしれない。
     そう思い至ると探りを入れねばおさまらなくなり、亜双義はある日の訪問時、茶の準備のため次の間に出入りしていたメイドの一人を捕まえた。普段主人の前には姿を現さないような、まだお屋敷仕えの日が浅い娘である。主人が敢えて言わないことを忠実な執事や家政婦長から聞き出すのは難しかろうが、若い娘ならば口を滑らせるかもしれないとの汚い算段だった。
     北部訛りのあるそのメイドが言うには、婦人は孤児院への寄付をもらいに来る慈善活動家の妻君らしいという。
    "ならば何故隠す必要がある?"
     最初に頭に浮かんだ疑問がそれだ。貴族たるものの義務として、こういった寄付を求められることは珍しくない。事実として先日も、古くなった教会修復の援助を求めに神父の何某かがやって来たところだ。そのことは亜双義にも隠さず話した師だというのに。
     婦人の用件が真っ当なものだというならば、師が隠そうとしたのは彼女の用件ではなく、当人たちの間柄ではないか。そう思い至ると、否応無しに腹にカッと火が着いた。
     あの男は俗っぽいことにはてんで興味がないと言う顔をしながら、万が一にも夫のある女に恋慕している訳ではあるまいなと、腹立たしさが一瞬で理性を焼くように燃え上がる。
     亜双義は、他人の私的な事情、ましてや情事になどてんで興味が無かったが、その手の不義理は許せないたちであった。不在の理由は違えど、帰らぬ父を気丈に待っていた、あの幼い日の母の姿を思い出す。
     不貞にうつつを抜かすはくだらぬ輩だと、そう烙印を押して見過ごせるのは赤の他人までで、自分が密かに思いを寄せている相手の蛮行となれば、問いたださずにはいられないのが道理だろう。

     その日も例の婦人はいつものように三十分ほどで帰って行ったので、亜双義は待っていたとばかりに応接室に殴り込んだ。器の片付けに入ろうとしたメイド長が脇でぎょっとしているが、知ったことかと乱暴に扉を閉める。
    「……どうした」
     ノックもせず、ずかずかと入っていけばそういう顔にもなるだろう。ソファから立ちあがろうとしていたバンジークス卿は、いつもより眉を上げて、その淡い色の瞳を見開いている。
    「寄付を求めに来ただけの婦人ならば、以前尋ねた折にそう言えば良かっただろう」
     法廷で矛盾を追及する時のような弟子の言葉に、師は何を詰問されているかをすぐに察したらしい。その表情が僅かに厳しくなるのも構わず亜双義は続けた。
    「何故オレに隠した?仲介者だと?慈善事業に貢献することのどこにその後ろめたさがあるというのだ。既婚者の女と会う理由を何故ごまかしたかは知らないが、やましいことがないなら言えたはずだ!」
     烈火の如く怒った弟子が目の前に仁王立ちしているのだから、倫敦一優秀な検事といえど即応できずとも無理はない。しかし、亜双義がそう啖呵を切った時の師の表情には、不本意だという苦々しい表情とは別に、確かにある種の動揺があるようにも見えた。
    「……そなたは何に腹を立てているのだ」
    「我が"尊敬する"師の、誠実とは言えぬ言動にだ」
    「…………」
     詰め寄られたバンジークスは右手で眉間のあたりを押さえ、考え込むように押し黙っている。呆れているようでもあり、困惑しているようでもあるが、それが亜双義にはますます疑わしく見えた。
     今までその手の話を聞いたことは無かったが、師も男ならば、好意を寄せる女くらいいてもおかしくは無い。
    「……貴公は何か勘違いをしている。私と彼女はそのようにやましい関係ではない」
    「勘違いだと言うならば、あの女が何者か言えばいいだけの話だろう。貴公の命を狙う不審な輩もまだまだ絶えない現状、周辺人物の素性を知っておくのは必要なことではないのか」
     とは言え、今や従者でも無く身辺警護を任されたわけでもない亜双義がそう迫るのは筋違いかもしれなかった。客観的に見れば、師が職務上の弟子に対して身近な交友関係を説明しなければならない義理も責任も無いだろう。密かに思いを寄せている相手が"道に反した逢引を重ねている"のではという疑惑は、亜双義から日頃の冷静さを奪っていた。
     しかし、師の方はそんな弟子の都合など知る由もない。
    「怪しまなくとも、彼女の素性は問題ない。私の身を案じてくれることには感謝するが、身元の確かな婦人である以上、私の屋敷で誰に会おうが私の勝手であろう」
    「っ、だが、オレは貴方の弟子なのだ!貴方が尊敬に値する師であるかどうか、知る権利がある」
     師の正論でピシャリとあしらわれ、咄嗟に亜双義の口をついたのは、半分本音で半分取り繕った、いかにもいびつな理屈だった。貴方の周囲に女の影が、しかも謎の既婚者の姿がちらちらするのは我慢ならない、とは言えもせず。ましてや、自分に隠し事などして欲しくないのだとは、子供の理屈ではないのか。
    「……弟子だからと言って、私のプライベートに踏み込んでくる権利はないはずだが。それほど私の言葉は信用ならないのだろうか」
     そう切り返されるのは当然である。何をそんなにムキになっていると、無礼を半ば許すような顔で言われれば、返す言葉もない。
    「……そうですね」
    「カズマ、」
    「分を弁えぬ質問をしたようだ。貴方の言葉を信じよう」
     おそらく額面通りには受け取られないだろう言い方をした、その自覚は亜双義にもあったが、「もういい」と吐き捨てなかっただけマシな方だ。
     何か言いたそうな師を残して退室すると、亜双義はその足で厩舎へと向かった。婦人の身元を割り出すべく策を巡らせるためである。
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    ココノトリ(ノトリ)/はと

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    原作軸、居候弟子→バロ時点の、弟子バロ未満の二人のいざこざ?話です。
    謎の婦人に嫉妬する弟子の話(途中まで) 月に一度、この屋敷を訪れる婦人がある。訪問客が多いとは決して言えないこの場所では、客人というだけで少なからず目立つ。女性であれば尚更である。
     亜双義が師であるバンジークス卿の館に居ついて今月で一年と三ヶ月になるが、この定期的に現れる婦人の用向きが気になり出したのは、数度見かけた後のことだった。
     毎月月末の日曜の午後。慎み深い淑女といった装いで、かの婦人はやって来る。家政婦長に迎えられても挨拶程度で言葉少なく、応接室で半刻ほど師と歓談した後、来た時と同じ顔で帰って行くのだ。
     人並み以上の観察眼を持っていると自負していた亜双義だったが、何度か見かけてもその婦人に関する情報は増えなかった。"淑女を絵に描いたような、控えめだが芯のありそうなご婦人"、というだけである。弁護士を志した頃から一貫して真実を見抜く目を鍛えて来たはずが、それっぽっちのことしか見当がつかない。これは甚だ情けなく、かのご婦人を見掛けるたびに、どうも気にかかるようになっていった。
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    DONE舌を入れたい弟子×色々な鎖に縛られているバンジークス
    前回の続きで、ミリ進展した話。次のえっち話までできたらピクシブにアップ予定。

    ※現代のジェンダー・恋愛・人権意識から見ると違和感のある描写があります
    ※実在の法への言及があります。HAPPYな原作ゲームからするとこんな考慮絶対いらないのですが、やりたいのであえてリアルに寄せて葛藤を強めています。
    【弟子バロ】アラゴナイトの内側、あるいは半年かけて舌を入れる話 中央刑事裁判所の死神は黒鉄でできている。いや、あの冷徹さは流氷から削り出されたというにふさわしい。いやいや私は確かに目撃した。彼は怪我をするたびマダム・ローザイクに修理をしてもらっている蝋人形である。
     仕事で八年前の雑誌を見る機会があった。議員の汚職を告発しようとした記者を探してのことだったが、途中で目に飛び込んできたのが、死神の正体という見出しの低俗な記事だった。
     黒鉄か氷か蝋細工か。
     なんともまあ、愚にもつかない議論である。
     死神と呼ばれた男の最も近くにいる人間として、亜双義はその答えを知っていた。
     ――どんな人間も、その内側は柔らかくて温かくて湿っている。
     それはバロック・バンジークス卿とて例外ではない。初めて口内に舌を侵入させたときに、しっかり確かめた。驚いて閉じられた顎によりちょっぴり血の味もついてきたのは、告白から数か月経った春のことだった。
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