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    現パロ🚬喫茶店員🐯大学生のスモロ(予定)

    ある程度書けたら支部にぶん投げる
    それまで推敲しまくり変更しまくり

    #スモロ
    smorgasbord
    #カウンターの片隅で

    カウンターの片隅で #1 その店を見つけたのは偶然だった。大学のコマがたまたま午前中で終わる日だったし、午後からは予定もなかったので、ふらりといつもは通ることの無い道へと足を向けた。宛もなくぶらつく訪れた事の無い街並みは平日の昼間とはいえ少し寂れていてぶらつくには少々物足りなさを感じるが、それでも目を引くものはあった。
    少し古い本屋に入り、気になる分類の本を物色する。数こそ少ないが少々マニアックな本も置かれていたので幾つか軽く立ち読みをした後レジへと持っていく。会計を済ませ、片手に本の重みを感じながら外へ出ればそういえばまだ昼を食べていなかったと軽く鳴った腹の音で思い出した。
    別に夜まで食べなくとも問題は無いが、集中すると寝食を忘れる悪癖があるのできちんと食べていないのを幼馴染二人にバレると少々長い小言を言われてしまう。
    せめて何処かで軽く…と思いながら周囲を見渡せば建物と建物の間の小さな路地の隅に喫茶店らしい看板が置かれているのを見つけた。
    近づいてみれば、外見は古き良き隠れ家のような喫茶店でコーヒーのいい香りが漂ってくる。こんな所にこんな場所があったんだな、と思いつつ周辺に他に飲食店も無さそうだったのでOPENと書かれた看板が掛けられた扉を開ければ、音質が良いとはお世辞にも言えないがそれでも店の雰囲気にあった洋楽が聞こえてくると同時により強いコーヒーの匂いがした。

    店の中はちらほら他の客が居たが、その中で1番目を引くのはカウンターの中で作業をするどう見ても俺よりもデカい白髪の男で。カラン、と鳴る扉のベルの音で来客に気がついたらしい男がこちらへ目線を向けた時に見えた、そいつの赤みがかった鋭い目がヤケに印象に残った。
    「1人か空いてる席座れ。」
    「あ、あぁ…。」
    接客業としてどうなんだと思わないでもなかったが指示に従って空いていたカウンターの隅の方の席に座れば、先程の白髪の男がカウンターの内側からカウンターテーブルへと水の入ったコップとお手製感の強いメニュー表を置いた。その男の胸元には【スモーカー】と書かれた名札が照明の光にあたってキラリと輝いていて、自然とそれに目線が行く。
    (スモーカー、ね…)
    なんとなく覚えておこう程度にその名を記憶の片隅にしまってメニュー表を手に取り、軽く流し読む。パッと見、普通の喫茶店と変わらない。
    「決まったら呼べ。」
    「あぁ。」
    そう言ってスモーカーは注文の為に店員を呼ぶ客の元へと向かって行った。俺は改めて受け取ったメニュー表のランチメニューを眺める。大抵、喫茶店のランチメニューと言うのはサンドイッチやオムライス、ハンバーグセットなんかだと記憶していたがこの喫茶店ではおにぎりセットもランチメニューとしてあるらしい。中身に梅干しがあるのが気に食わないが一般的なものと考えれば当然ではあった。言えば抜いてくれるだろうか。そう思いながら客の要望に答えるべく作業をしていたスモーカーに声をかけた。
    「すまねぇ、注文いいか」
    「あぁ、少し待て。」
    スモーカーは作業の手を止めオーダー伝票を挟んだ小さいクリップボードを手にこちらへ向かって来る。ここまでの様子を見るにホールにスモーカー以外の店員はいないらしい。
    「待たせた。注文は」
    「ランチメニューのおにぎりセット、梅干しは抜いてくれ。んで、ドリンクにコーヒー、ブラックで。」
    「梅抜きな。んで、豆の種類はどうする。」
    「ブレンドがいい。」
    「分かった。少し待ってろ。」
    オーダー伝票に注文を書き留めて、奥へと引っ込んで行ったと思えばすぐ戻ってきて色々並べてある棚からコーヒー豆の入った瓶を取り出し、中身を一杯分電動ミルに入れ挽き始めた。途端に元々漂っていた匂い以上にコーヒーのいい匂いが漂ってきて、その匂いにほぅ、と息をついた。大抵はインスタントコーヒーだったから挽きたてのコーヒーを飲めるのは悪くない。
    「あんた一人で切り盛りしてんのか」
    「まさか。奥に料理担当が居る。」
    「ふぅん。」
    待っている間、先程買ったばかりの本を読む気にもなれず手際よくドリッパーにフィルターと挽いたばかりの粉をセットしていくスモーカーの横顔を眺めながら疑問をぶつければ簡単に返答が帰ってきた。カウンターに邪魔されて手元の詳細は見えないが俺よりも大きいだろう手でコーヒーが入れられていくのを想像するのは少し楽しかった。
    「ブレンドコーヒーのブラックだ。おにぎりはもう少し待て。」
    「あぁ、ありがとう。」
    カチャリとカップを置かれる音でそれていた意識が引き戻される。湯気を立てるブラックコーヒーからは家で飲む物よりもいい匂いがする気がした。挽きたてだというのもあるのだろうがそれに加えて豆がいいのだろう。舌を火傷しないように少し冷ましてから口に含めばほんの少しの苦味と深いコクが口の中を支配して、思わず感想が口に出た。
    「美味いな…。」
    「そりゃ光栄だな。入れ方を大分厳しく仕込まれた甲斐がある。」
     当然、と言った顔でにやりと笑ったスモーカーの顔に何となく、あの人の面影を見たような気がして直ぐに気のせいだと思考の隅へと追いやった。あの人とは似ても似つかない。奥からスモーカーを呼ぶ声が聞こえてきて奥へと引っ込む背中を眺めながら二口目のコーヒーを口に含んだ。
     再び奥から出てきたスモーカーはおにぎりが三つと沢庵が数切れ乗った長方形の皿を持っていた。それを俺の前のテーブルに置きながら具材の説明をする。しっかり梅干しは抜いてくれたようだ。
    「右から鮭二つに明太子が一つ。梅干しの代わりに鮭が一つ多くなってる。」
    「あぁ、ありがとう。いただきます。」
    「ゆっくり食え。伝票はここに置いておく。」
     伝票が目の前にあった伝票置きに置かれるのを横目に見ながら鮭のおにぎりを頬張る。程よい握り加減で、口に入れると丁度いい塩加減と鮭の味がした。悪くない。腹が減っていたのもあって全てぺろりと食べ終えてしまった。
     それから、残っていたコーヒーを味わいながら店を見渡してみた。店の角にある昔ながらのレトロな卓上のレコードプレーヤーがただの飾りとしてではなく、動いているのを見るに店の中に流れる洋楽はあれで再生しているのだろう。今時そんなものを使っているのは愛好家くらいなものだと思っていたからこんなところで現物を見て、曲を聞けるというのは中々ない経験だと思う。他にも適度に観葉植物が置かれていたりして、古き良き喫茶店と言うべき店だと認識する。これがスモーカーの趣味であるなら中々良い趣味をしているものだと思った。
     昼時だというのもあって、そこそこに混雑していたのであまり長居するのも悪いと思い伝票をもってレジへと向かう。呼出し鈴はよくある押すタイプのものではなく小さなハンドベルな辺り徹底していると感心した。レジ対応もスモーカーだった。
    「○○ベリーだ。」
    「ん、これで頼む。」
    「○○ベリーの返しだ。レシートは要るか?」
    「貰う。美味かった、ごちそうさま。」
     丁度いい数の小銭がなかったので紙幣を一枚出しておつりとレシートを受け取り、美味かったと伝えれば厨房の奴に伝えておく、と言われた。また来る、と店を出ればそまた来い、と優しさがにじみ出る声色が聞こえた。
     多少、店員の言葉のぶっきらぼうさに目を瞑ってもおつりがくる程度には良い店だったと思いかしながら帰路につく。次はいつ行けるだろうか。
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