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    gerkej1006_cp

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    現パロ喫茶店スモロ
    3話目です

    カウンターの片隅で#3 ひょろっとした高身長の男(スモーカー曰く店長)と店の出入口ですれ違ったあの日以降も時間を作っては定期的に喫茶店へと通いつめ、もはや常連と言っても問題ない程になっていた。店長だと言う男と再び会うことは無かったが、喫茶店近くの本屋で本を買って喫茶店でコーヒーを飲みながら読んだり、時間が無い時はコーヒーだけテイクアウトしたりとそれなりに穏やかで楽しい時間を過ごしていた。
    スモーカーとも大分仲が良くなってきたようにも思う。ぶっきらぼうなのは相変わらずで、店の状況によっては世間話すらしていられないほどに忙しい時もあるが、それでも決して少なくはないスモーカーとの会話は、俺の知見を広めるには十分すぎるほどだった。思っていた以上に博識なスモーカーは俺の知らない事を色々知っていてあいつと会話するのは大学のつまらない講義を聞くよりも楽しいものだった。
    今日も大学が早めに終わったので喫茶店に寄ってから帰ろうと講義室を出れば俺を呼び止める声が聞こえた。それは幼馴染のペンギンとシャチだった。
    「あ、いたいたキャプテン」
    「今日こそは付き合って貰いますからね。」
    「あー…お前らか…。」
    「キャプテンただでさえすーぐどっか行っちゃうし最近誘っても遊んでくれないじゃないですか。」
    「そーそー、なに彼女でも出来ました」
    「んなわけあるか、女作ったところでめんどくせぇだけだ。」
    今日こそは逃がさないとばかりに腕を掴まれながら、茶々を入れられる。逃げるつもりはなかったが確かに最近喫茶店に行く為に誘いを断ることの方が多かったなと思い今日くらいはいいかと二人の誘いに乗ることにした。
    「それで、何処に行くんだ」
    「おっ、今日は乗ってくれるんすね」
    「えーっとカラオケも行きたいしゲーセンも行きたいし…。」
    「せめて行きたい所絞っとけよ…。まぁいい。移動しながら決めるぞ。」
    「「アイアイ」」
    三人で電車に乗っていつも遊びに行く方の隣街へと向かう。スモーカーがいる喫茶店のある方の隣町に比べて人の数も店の数も多く常に賑わっている為遊ぶのには丁度いい。視界の端にちらほらと同じ大学の連中も遊びに来ているのが分かる程度には人気のスポットだ。
    電車を降りて駅を出れば平日の夕方とは思えないくらいに人が居て少しばかり驚く。
    「今日やけに人多いなー。」
    「あーあれだ、最近話題の店が新しく出来たって話。」
    「そんなんあんの」
    「大学の食堂で女の子達が話してたの小耳に挟んだの。確かしろくまの…。」
    しろくまという単語に思わずピクリと反応したのを目ざとい幼馴染二人がそれを見逃す筈もなかった。
    「よし行先決定で。」
    「絶対並ぶから急ぎましょキャプテン」
    「あっ、おい」
    いつ調べたのか、真っ直ぐ件の店に向かって人混みを掻き分けて行く二人と逸れない様に必死に着いていけば店のそこかしこにしろくまのグッズが沢山置かれていて、そこそこ人が並んでいる店に辿り着いた。グッズ専門店且つオシャレなカフェ、と言った所で当然ながら客層は大体若い女性達。流石に男三人で入るには少しばかり、否、大分難易度が高い。
    「うーん、想像以上。」
    「どうしますキャプテン。」
    「…。」
    割と詰みかけている現状に苦虫を噛み潰したような顔になる。しろくまグッズは正直欲しいが、だからと言って女性陣の冷ややかな目に晒されるのを耐えろと言うのは中々に厳しいものだ。せめてカップル同士で彼女が来たがったと言うのであればまだ入れるものを。
    今回は諦めて後日イッカクにでも同行を頼むかと踵を返そうとした時、店の窓の隙間からしろくまの白とは違う、けれど見覚えのある白が視界に入った。
    (スモーカー)
    窓から見える範囲でよくよく見ればやはりスモーカーで。なんでこんな所に来ているのか、店はどうしたのかと疑問が湧くが、少なくとも表情を見る限り不本意で来ているのだろう。喫茶店では見た事ない渋い顔をしていた。
    「キャプテン」
    「あぁ、いや、なんでもない。今回は諦めて別の所に行こうか。」
    「ですね。流石にこれは入りずらい。」
    「どっか近くにカラオケ店だとかゲーセンでもねぇか探せ。」
    「「アイアイ」」
    俺が纏う空気が変わったのに気づいたペンギンが俺の顔を覗いてきたのでスモーカーを見ていた事に気づかれないよう話題を変えてペンギンとシャチを先へ行かせる。そして、自分もしろくまの店を後にしようとした時、動いた事によって見る角度が変わったせいでスモーカーの目の前にいる人物が見えてしまう。それはピンク色の長い髪をした、所詮美人と言われる類の女性だった。その女性を見た瞬間ツキンと胸が痛んだ気がした。
    スモーカーとは話が合う気に入りの喫茶店の店員。俺はただの客。ただそれだけの関係の筈なのだがどうしてか妙に胸が締め付けられる様な、嫉妬に駆られる瞬間の様な、そんな感覚を覚えた。例えるなら自分のものを取られた時のような、そんな感じ。別にスモーカーは俺のものでもないというのに何故かそんな感情が頭を支配する。経験上、そういう感情は早めに捨てた方が良い事は頭では理解していたのだが、スモーカーが知らない美人な女と一緒にカフェで物を飲み食いしている、というただそれだけで頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。とても良くない。
    このままではいけないと考える事を辞めない頭の中を振り払う様に急いでペンギンとシャチの後を追った。

    その後ろ姿をスモーカーが見ていたことに気が付かないまま。
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