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    ヒロ・ポン

    支部ないです。ここに全部ある。

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    ヒロ・ポン

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    建設会社門倉組社長 門倉雄大
    やってる事以外はホワイト企業

    ドカタの門倉さん今日も一日が始まる。
    「はい、じゃあ今日も頑張っていきましょう。ご安全に。」
    ご安全に~と気の抜ける語尾で返事が返ってくる。
    直接雇ってるのが7人、派遣が4人、あとは外注さんが4人。
    持ち場に散っていったそれぞれの行き先を目で追って、ホワイトボードと手元の書類とをにらめっこする。
    生コンを積んだミキサー車が時間通りに到着していないのが少々予定を狂わせたが、どのみちこのあたりは住宅街で昼間は静かなものだ。
    防音と防塵のための覆いを隙間から覗き込んでくるのなんて学校帰りのガキか暇な老人かなもので、どのみち資材で中身は見通せない。
    仕事をするにはうってつけの立地だった。

    「お疲れ、雄大クン現場どお?」
    工事現場の入り口付近に立っているとゲートの目隠しパネルを叩かれた。パネルの上、アルミゲートの上から見慣れた顔がのぞいている。
    「何じゃ、休みじゃろ」
    「そこのスーパーで缶コーヒー50円だったからさあ、思わず買い込んだよ。そろそろ10時だし」
    「悪いのお」
    がらがらと音を立てる大量の缶コーヒーを抱え、黒服…いや、社員の一人が差し入れに来た。
    「廃材は何時?」
    「廃材はもう来とるんじゃが、生コンが遅れとる」
    「首都高陥没したらしいけど、それかな」
    「そうそれ。参ったもんよ。派手にやるのはええけどこっちの仕事の事も考えて欲しいわ」
    手近に居た新人にコーヒーがぎっしり詰まった袋を持たせ、腕時計が10時であるのを確認してから「きゅーけーい」と声を張った。

    深く深く、堀った穴には無数の鉄骨が重ねられていて、地中にもう一つビルがあるような様になっている。
    「随分深く掘ったね」
    「地盤が緩いから、ここにしたんよ。深いほうがええし。」

    「あ、雄大君生コン来たよ」
    「おん」
    そんなことを言っていたら飲み損ねた缶コーヒーを上着のポケットに押し込み、腰の冷却ファンの残りバッテリーを確認する。
    今日の気温は随分と上がるらしい。慣れている「社員」には10時と12時、15時以外の休憩も入れるようにとは言っているが、こうも暑くては今日は廃材処分以外の作業ははかどらないだろう。

    「廃材入れて~」
    油圧で傾斜を上げたコンテナが大きな口から中身を吐き出していく。出口の四方から出していたロープを引けば、張られたビニールシートが引っ張られて奥で固まっていた廃材も全部転がり出た。
    廃材を詰めたコンテナがひとつ空になった。今日の気温でも冷気が溢れるほどよく冷えたコンテナを脇に引き、奥からまた別のコンテナが前に出る。
    ごろん ごろん ごろん
    凍った皮膚は堅く、鋼鉄の上をよく転がる。

    「死人は地面に埋めんとなあ」
    どさどさという音すら立てず、暗くなれば先が見えない程深い穴に物が落ちていく。
    この建物は完成すればファミリー向けの分譲マンションになる。
    この地域に多く立つマンションたちと同じく、団らんと人生がこの上に乗るのだ。清々しい事だった。
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    recommended works

    トーナ

    DONE初門梶SSですが、門倉さんあまり出ません。すいません…。

    裏ver書きたい。
    僕の秘密

     門倉さんに秘密にしていることがある。それは門倉さんがいない間に僕が彼のシャツを独り占めしてることだ。僕と門倉さんは恋人同士で今でもどうしてこの関係になったのかもわからない。きっかけはたぶん、プロトポロスでの出来事だろうと踏んでいる。お付き合いしてだいぶ経った頃に彼がある日仕事が長引いてなかなか会えなくて寂しくなった僕は洗濯物に混ざっているシャツを見つけた。シャツから香る門倉さんの匂い。たばこと体臭。最後に嗅いだのはいつだったか。そしてふと思いついて、実行すると寂しさが解消された。
     
     その日も僕はあることを始めた。洗濯せずに取っておいた門倉さんのシャツを抱きしめながら眠る。彼と一緒に暮らすようになって、いつしか彼の存在がそばにあるのが当たり前になっていた。だから、会えない間はそばにいないと僕は胸に穴が開いて落ち着けなくなってしまう。
    「…門倉さん」
    僕より大きいそのシャツから嗅ぎ慣れた匂いがした。その匂いがあるだけで門倉さんがいるんだと錯覚できる。だから、よく眠れるようになる。胸のあたりに顔を埋める。今は薄っぺらいシャツだけの感触しかないけど、ここには彼のたくましく厚い 1001