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    Wayako

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    Wayako

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    嘘ミカが真祖様の愛妾だと知らされた嘘拳が八つ当たりする話。


    ※※注意※※
    軽い暴力描写あり。
    未成年に対する性表現あり。


    長くなったうえに、結局何が書きたいのかわからなくなってしまった…。とりあえずキレてるけど自業自得な拳兄を書きたかったので満足。

    この拳兄さんは一応、拳(→)←ミカの世界の兄さんです。自覚は薄いですが拳兄はミカをそういった意味で愛してます。

    No name「弟のお情けで生き長らえてるくせに」
    今しがたのした三下の吸血鬼が恨みがましく吐き捨てた言葉の意味が分からず、冷ややかな目で見下ろしたまま胸ぐらを掴み引き上げる。薄汚れた貧相な体は日々修羅場をくぐり生き抜くため自然と鍛えられたケンの腕力に対してあまりにも軽く、片手で上げた体は難なく地面から離れて宙で揺れた。
    「何の話だ。」
    「お前の弟、あれはいい『女』だよな。遠目から見たっていい『女』だ。下僕の男ども従えて、帝王ってより女王様って感じでよ。」
    『女』。
    およそ男性に使うには可笑しな言葉が何を揶揄しているかなどすぐわかり、ざわりと心が逆立つ。ケンには二人弟がいるが、内容からして上の弟だろうことは嫌でもわかった。兄弟に似ず、一人端麗な顔をした長弟はチビのころから何かと男共にそういったいやらしさを含む目で見られることが多く、本人もそれを自覚してか嫌がって顔をマスクで隠すことが常になっているのだ。
    家を裏切った際に結果として弟たちを捨てた形になった今でも、ケンはミカエラが何かしらそういった類いの嫌な思いをしていないかと、身勝手ながら心配などしているのでその言葉は男が思うよりもずっと深くケンの逆鱗をざらりと撫で上げた。実際、ここを1人襲撃した理由も年端もいかぬ人間の少年少女を拐って鎖で繋ぎ、吸血鬼相手に血のみでなくそういった行為を『売って』いたのが気にくわなかったからだ。客を装いビル地下にある店に入れば、奥のから響く子供たちの阿鼻叫喚とそれをせせら笑う下卑た笑い声に反吐を吐き、如何様なものをお望みで?と聞いてきた受付の店員らしき男をまず殴り飛ばした。それから奥に並んだ部屋を一つずつ回り、客として来ていた全員を締め上げてやったのだ。
    この男もその内の1人であり、ケンの知っている情報屋であった。昼と夜を行き来する二枚舌でそれ故にどこにも属さぬケンにとって使いやすい奴であったが、その下卑た性格が前々から気に入らぬ奴ではあった。この店の最後の部屋でいそしんでいたこの男を蹴り飛ばし、ケンに気づいた男が恨み言のように吐いたのが冒頭のやりとりである。腹の下に敷かれていた少年は今は壁の隅で丸まって震え怯えており、たっぷりとした黒髪が幼い頃の弟に少し似ていることと白く細い体についた痛々しい青紫の打撲痕に、チッ、と舌を打つ。ケンの明らかなる苛立ちに気を良くした男は釣られた衣服で締まる首の息苦しさに顔を歪めながら下品さを秘めもせずにつらつらと喋り続けた。
    「さぞかし『味』も良いんだろうな。なんてったって、あの竜の大公のお気にいりなんだから。」
    「…あ?」
    「…なんだ?知らねえのかよ!あいつはな、竜の愛妾なんだぜ。俺たちのような噂を売る奴らの間じゃもう常識なんだ。『あのガブリエルの美しい御子息は竜大公に囲われてる』ってな!」
    ギャハハ、と馬鹿にしたように笑う男を呆けた顔で見つめる。心臓が痛いほどに波打ち、じわじわと腹の底から這い上がる何とも言えない不快な息苦しさに呼吸が浅くなっていく。

    ミカエラが、あの大公の爺と?あの高潔高慢な弟が、男と?

    到底信じられぬ、信じたくない噂に全身に嫌な汗が吹き出した。心は嘘だと悲痛な叫びを上げたが、この男はその界隈では意外にも信頼のおける実力者であり、持った情報は確かなものであることをケンは知っている。
    あの弟が、夜の吸血鬼の長たる竜の大公の愛妾であることがまぎれもない事実であるのを嫌でも頭で理解してしまい、込み上げる激しい怒りに締め上げる手が無意識のうちに強まった。低くうめき声を上げた男がにたりと口角をあげ、トドメとばかりに口を開く。

    「夜よりも昼に近いあんたが今、無事なのも、『そういうこと』だろうぜ。弟の股ぐらに感謝するんだな。」

    限界だった。男の皮肉はケンの逆鱗を的確に、正確に、これ以上ないまでに打ち抜いた。
    お気に入りの妾の兄であるから、見逃されている。
    夜を、一族を裏切り、第3勢力とはいえ昼側に近い位置にいるケンに異常なまでに執着しているあの弟ならば、ケンを生かすために体を捧げるなど、確かにやりかねない話かも知れない。もしくはミカエラの意思は関係なく、身内に裏切り者がいるという罰でそういった仕打ちを受けているのかも知れない。
    しかし、どんな意図があろうとも結果としてこの事実は自分は自分の道を行くというケンの覚悟を、生きざまを、自尊心をズタズタに踏みにじるには充分すぎるほど充分であった。

    ふざけるな。
    ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!!

    持ち上げていた体を力の限り地面へと叩きつけ、無様に転がった腹を容赦なく蹴りあげる。2度、3度、4度、5度、6度と蹴り上げ、汚い胃液を吐き出し無様に丸まる男のぐちゃぐちゃに乱れた髪を掴み、顔をあげさせる。
    「『口を開け』」
    目を合わせ、刷り込み、苦痛に食い縛る口を開けさせると指を突っ込み、人差し指と親指で舌をつまみ出す。二枚舌を使い、卑怯にも昼と夜を行き来していた男の商売道具たるそれは、蹴りあげられた時に切れたのか赤く血で染まっていた。食欲も沸かない不味そうなそれが手につくことも厭わず、つまんだ指にさらに力を込める。
    何をされるのかわかった男が、必死に喉奥から不明瞭に叫ぶが、構わず笑いかけてやった。

    「二枚ある舌なら、一枚くらいなくなったって大丈夫だろ?」

    恐怖と苦痛と後悔に染まった男の断末魔の叫びを聞いても、ケンの溜飲は下がることはなかった。

    ※※※※※※
    「どうかした?」
    ふっ、と突然に込み上げた自嘲の笑みを耐えきれずにひっそりと漏らせば、豪勢な寝台に転がった裸体を滑っていた長い指が止まり、顔を覗き込まれる。それが心配などではなく、たんなる興味であることは案外長く続くこの関係性の中で知っているが、こちらの心情をくもうとしてくれる気遣いのようなそれをミカエラは好んでいた。しかし同時に土足で心に入られるような不快感もある。
    愛妾として、いつもの戯れに呼ばれ、ついて早々に躊躇いなく体を預ける己の慣れた醜態が突然とおかしくなって笑ってしまったなど、別に知らせなくてもいいだろう。
    「…何でもありませんよ。」
    言って、両腕をその首に回し引き寄せ、黒い髭に隠された唇に唇を重ねる。閉じた唇に舌を伸ばしノックをすると、もはや興味をなくしたのか何も言わず、促されるまま続きが再開された。絡めあわさせる舌を追いながらミカエラは目を閉じ、己に『催眠』をかける。それは能力に由来するものではなく、なんだったら下等な人間どもでも使える、所謂『思いこむ』という何とも幼稚な催眠だが、そうすることで少しだけ満たされ、救われる心があるのだ。
    唇がはなれ、首筋を通り下へ下へと滑っていく舌の感触を感じながら、ミカエラは心の中で小さく、兄さん、と呟いた。


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