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    chige_huka

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    chige_huka

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    次からえちちだ

    風俗ヒュ2−2最上層へ直行するVIP用のエレベーターは、自慢の速さを活かして地表からどんどん離れていく。
    夜景を一望できるロマンティックなロケーションにも関わらず、ヒューベルトの顔は陰鬱だった。モニカの話を思い出していた。モニカの話を聞きながら動揺している自分がいた。
    フェルディナントにも女性を好きになることがあったのだと。
    女性の美醜にはあまり興味がないヒューベルトだが、神秘の歌姫の美しさが大衆を魅了するものであることはわかる。あれが、古今問わずフェルディナントを魅了する容姿なのだ。
    今は違う、決めた相手がいるという言葉がヒューベルトのいない場所で発せられたのだから彼の気持ちは未だ自分のものだとわかっていてもその事実は自分の胸に細波を立てている。胸を抑えたのは無意識の行動だった、ふと硬い感触があたる。フェルディナントからの招待状代わりのカードキーに触れると心が落ち着いた。暗闇の中だったとはいえ、大胆なアプローチに心は躍った。
    再会して一年が経とうか。その間に2人は俗に言うデートを重ねていた。社長になったエーデルガルトを支えるヒューベルト。エーギルホテルの開業準備に追われていたフェルディナント。互いの時間を作る暇はほぼ無かった。この1年、会って食事をした回数など片手で足りる。人との関係の構築が不得手な自覚はあった。それでもマメにメッセージや電話をくれるフェルディナントのおかげで、関係は成り立っていたのかもしれない。

    その間、フェルディナントに抱かれたことはない。互いの体にあれだけ溺れていたのに、フェルディナントは本気の恋愛を先に進めるにあたって、教科書のように段階を踏む男であった。
    先んじて店を予約し、全てをエスコートするというレディの扱いを徹底していた。それがむず痒くもあった。
    手は触れたし、ふれあい程度のキスもした。その先には、進まなかった。

    彼とはセックスありきの出会いだったから、それが抜きとなるとヒューベルトは後手後手に回っていた。色狂いと思われたくない。彼が望むまでは、静かにしていようと思ったのだ。
    だが、フェルディナントの熱さを、激しさを知った体は軽い触れ合いでは我慢できなくて、彼の声を聞くたび、触れられる度に、ヒューベルトは1人火照る体を慰める羽目になった。今夜だって。
    艶めいた低音が鼓膜を撫でたような気がして、頬が火照る。

    いい加減、限界だ。好いた男に心ゆくまで抱かれたいという渇望が理性を上回ろうとしていた。

    ヒューベルトはもう一度カードに触れる。誘いを受けたのだから、今夜は部屋に2人きりだろう。嫌でも意識することになる。
    今夜のパーティ参加者達には、宿泊の権利が与えられていた。主催からのサービスの一環である。オープンしたばかりのラグジュアリーホテルに世界最速で泊まれるとあって、ほぼ全ての参加者が招待を受けたはずだ。エーデルガルトもその1人である。今夜はモニカと同室で休むことになっている。だから、ヒューベルトはフェルディナントの部屋に向かう事ができた。気が引けるが、ヒューベルトが向かっているのは、フェルディナントが貸し切った最上階のVIPエリアだ。ヒューベルトの主人よりも格上の部屋である。

    エレベーターを降りると、ホールにも負けない絢爛な回廊が出迎えた。貸し切られているフロアにある部屋は一室だけ。フロア丸ごとが部屋と言っても良い。突き当たりの扉から中に入った瞬間、その造りの豪華さに面食らった。
    部屋というよりも家、もっと言うなら豪邸だ。階段で繋がれたリビングと寝室、果てはアイランドキッチンとプレイルーム、シアタールームが完備されているようだ。カーテンで塞がれているが、ガラスに囲まれたリビングからは夜景が綺麗に見えることだろう。ヒューベルトはそのあまりの豪奢さに足を踏み入れることを一瞬、躊躇った。
    ほとんどの人間が、最上階のVIPエリアの部屋をポン、と用意できる人間と自分の立場の差に気後れするのも仕方がないだろう。胸の焦燥の理由を、そう結論づけてヒューベルトは靴を脱いだ。
    部屋の借主が戻るまでまだ時間があるだろう。礼装をくつろげてジャケットをクロゼットにしまい込む。大人数人が寝転べそうなソファに身を沈める。どこからともなく鼻をくすぐる香りが気持ちを和らげてくれる。フェルディナントと同じ香りだ。

    彼の人柄をこよなく愛している。顔が好みのタイプなのは確か。そして、癖のある自分を抱ける人間の希少さ、彼を手離し難いのは事実だ。
    しかし、彼の寵愛を受け、彼にとって特別な夜を共に過ごすのが自分で良いのだろうかという懸念がずっと渦巻いている。
    ドロテアのような美姫に薔薇を贈り、気障な台詞を吐いている姿も様になる。そちらの方が、彼を取り巻く者に対しても示しがつくだろう。彼のことを思い、案じるなら身を引くことも優しさなのではないかと時々思うのだ。
    だが、彼は姿を消したヒューベルトを案じ、探していたことを知り、もう一度関係性を築こうと必死になっている。今夜も持てる力全てを持ってヒューベルトにこの部屋を用意したに違いない。とてつもなく想われている。それを振り払う気概もない。ただ、自分は彼と同じ場所を歩んではいけない気がする。
    こんなことを言ったらフェルディナントはなんと返すだろうか。そんなことを言うな、と怒るだろうか。卑屈になったヒューベルトを優しく抱きしめるのだろうか。
    とくとく、と心臓が高鳴る。高い天井をぼんやり眺めながら、フェルディナントを待っている時間はとても長く思えた。





    「ヒューベルト!」
    バタバタとした足音と、張りのある声が自分を呼ぶ声で意識が浮上した。心地よいソファの弾力と懐かしい匂いがヒューベルトを夢の淵へ誘っていたらしい。飛び起きて玄関の方へ向かうと、フェルディナントが慌てて脱いだ靴を揃えていた。肩越しに振り返った顔がぱあと輝いて見える。ヒューベルトは眠っていた事実を誤魔化すように悠然と微笑んで出迎えた。遊び心を付け加える。
    「お疲れ様でした、フェルディナント殿」
    「む?」
    「さあ、どうぞ、上着をお預かりいたしましょう」
    片眉を上げたフェルディナントの後ろに回り込むと上着を恭しく脱がした。受け取ったジャケットは同じ場所にしまっておく。廊下を一歩下がったところからついてくるヒューベルトに対して、フェルディナントは苦笑まじりに言った。
    「もうそんな関係ではないとわかっていても、そう呼ばれるとあの頃を思い出してしまうよ」
    「おや、お嫌ですか?」
    この接し方は気に障るだろうか。ヒューベルトの予想に反してフェルディナントは、いや?と不敵にほほ笑んで言った。
    「今は私だけの君だ。君の主人が私だと思うと悪くない。ああ、もちろんエーデルガルトは別だよ?」
    ヒューベルトを従えていることへの優越感が勝るのか、フェルディナントはとても満足げだ。「公」はエーデルガルト。「私」はフェルディナントに捧げると以前に嘯いてある。リードされる方が性に合う。公私ともに、良いパートナーと巡り会えた。
    緊張の余韻と疲れで強張っていたフェルディナントの顔は、すっかり緩んでいた。一杯くらい付き合うつもりでいたのだが、リビングに入ったフェルディナントの足はソファには向かなかった。おいで。徐にヒューベルトの手を取った彼は、窓際へと誘っていく。分厚いカーテン越しの景色を、ヒューベルトはまだ見ていない。

    フェルディナントの腕が腰に回る。逞しい体に寄り添う高揚感に息を呑む。高所は嫌いだ。これから起こることにも予想はつく。あつらえられたベタな演出にも関わらず、ヒューベルトの胸は高鳴っていた。
    「真っ先に君に見せたかった」
    フェルディナントの手がカーテンを取り払う。目の前に広がる夜景は、星空を切り取った絵画のようだった。エレベーターから見た街の景色ともまた違う。遥か先に黒い海を見渡し、地平線で交わった空には無数の星がよく見えた。高所はあまり好きではない、と高層の夜景に興味を示さないヒューベルトではあったが、ほう、と息を吐く。
    こんなもので心ときめかせる年でもないし、乙女ではないのだがと冷静に考える自分もいる。しかし、これを自分に1番にみせようと思っていた男のいじらしさがどうしようもなく、心の柔らかな部分を突いてくる。予想していたにも関わらず、目の奥がツンとした。
    「どうかな」
    「ええ、素晴らしいと思いますよ」
    ほほ笑んだヒューベルトを見て、あからさまにフェルディナントの顔がホッとしたものになる。彼なりに苦心して用意したのだろう。ヒューベルトが喜ぶかどうかも気を揉んでいたに違いない。
    「君は美しいものを散々見慣れているだろうから、心配していたんだ」
    「貴方様ともあろう方が随分、弱腰ですな」
    「今夜は、特別な夜にしたかったのだよ。君にお願いをしようというのだからね」
    フェルディナントの緩んでいた表情が再びきゅ、と締まる。オレンジの眼差しが、こちらだけを見ていた。何かを言おうとして口籠るので、ヒューベルトは小さく微笑んだ。緩く笑んだまま瞳を閉じてやる。フェルディナントが小さく笑ったのがわかった。
    さして時間もあけず、唇に柔らかいものが触れる。それはすぐに離れて、もう一度触れた。恋したてのようなキスが、何度も降ってくる。
    「ヒューベルト」
    「はい」
    「君が欲しい」
    「ご存分に」
    触れ合いを楽しんだ後、熱くて濡れた唇がヒューベルトの口唇をつついた。迎え入れた舌が口の中をさらっていく。互いの鼻から抜けていく息がくぐもって、色気を孕んでいた。口付けが貪るものへと変わっていき、荒々しさが増していく。
    こんな深いキスは、久しぶりだ。口の中を嬲り、官能を引き出そうとしてくる。激しさに翻弄されて、ヒューベルトの心には火がついた。フェルディナントの後頭部を掻き抱くと、自ら食いつく。
    「ッ」
    フェルディナントは一瞬怯んだようだが、負けじと張り合ってきた。腰を弄っていた両手が強引にシャツを引き出し、潜り込んでくる。柔肌をなぞる手の熱さがズボンの中に移動していく。ヒューベルトは身を捩らせた。
    尻を鷲掴まれた拍子にたじろぎ、身を引いていた。いつになく押しが強い。下腹を押し付け合うことになり、フェルディナントが前を既に腫らせていることに気づく。スラックス越しに感じた硬さと大きさに息を呑む。ヒューベルトが笑ったのを見てフェルディナントがバツが悪そうに下を向いた。
    「口付けだけでこんなになってしまうとは、恥ずかしいな」
    「こういうところは青臭いままですな」
    フェルディナントは、む、と唇を尖らせた。
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