Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    IulmLk

    @IulmLk

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 13

    IulmLk

    ☆quiet follow

    ふみ慧の部屋の話

     足音が部屋の前で止まった。コンコンと軽いノック音に今夜も来やがったな、と眉間に皺を寄せる。部屋の主人である猿川が応えるより先にふみやがドアを開けて無遠慮に部屋に入る。
    「勝手に入ってくんなって」
     ソファーでスマホを弄りながらくつろいでいた姿勢を変えないままふみやを睨んだ。
    「あぁ、お邪魔します? それじゃあおやすみ」
    「オイッ! 俺より先にベッドに入んな!」
     ふみやが猿川の部屋に訪れ、眠ることは今まで何度もあったが、昨日も一昨日もその前も、今日を含めると一週間連続という事になる。最早勝手知ったる他人の家ならぬ勝手知ったる他人の部屋だ。躊躇なく猿川のベッドに潜り込み、眠る体勢を整えようとモゾモゾと身を捩る。暫くして丁度良いポジションを見つけたのか静かに目を閉じた。
     あとは眠気に従って眠るのみ、と寝る準備万全の姿を見た猿川は舌打ちを一つしてソファーから立ち上がった。床に落ちているCDを踏まないように避けて歩く。ベッドに片膝を乗せるとギシリとスプリングが軋む。
    「もっと端で寝ろ。せめぇんだよ。俺が寝れねえだろ」
    「慧」
     普段以上に眠そうな目を開いたふみやは仰向けだった姿勢を横に、壁にぴたりと背中を付け、空いたスペースに寝転がった猿川をまるで抱き枕にでもするように抱きしめた。
    「重いしあちぃ。離れろ」
    「まあまあまあ。……それにしてもやっぱりベッドはいいな」
    「は? ベッド目当てで来てたのかよ」
    「違うけどたまにはソファー以外で寝たい」
    「大瀬みてえに寝袋買うか理解みてえに布団買え。つかお前どこでも寝れんだろ。リビングでもよく寝てんじゃねぇか」
    「うん。基本どこでも寝れるからソファーでいいよ。ベッドで寝たかったら慧のとこで寝るし」
    「いや買えって。邪魔なんだって」
    「いいじゃん。そんくらい。慧と俺の関係って何? 付き合ってるよね?」
     ジトっとした半目で見つめてくるふみやに猿川は呆れて鼻で笑った。
    「メンヘラの女か? それか眠いとぐずるガキか?」
    「違うけど」
    「ガキはあってんだろ」
     首をふみやの方へ傾けて鼻先が触れ合いそうなほど距離を詰めた。唇と唇がそっと触れ合う。ふみやがよくする宥める為の誤魔化しのキスを猿川は真似していた。唇が離れていく。違うシャンプーの香りが混ざり合い、ついキスの先を欲してしまう。
    「慧。ねぇ、」
    「オラッ!」
     額同士がゴツと鈍い音をたてる。
     抱きしめていた腕を離したふみやは額に手を当てて目を丸くした。
    「え、何? なんで?」
    「なんとなく。頭突きしてぇ気分だったから。これが嫌ならもう寝にくんな」
     得意気に笑みを浮かべて言い放ち、寝るから話しかけるなというオーラを出しながらふみやに背を向ける。
     徐々に呼吸が寝息に変化していく身体をぎゅっと抱き寄せた。
    「どこでも寝れてたのに抱き枕がないと寝れなくなったりして」
     ハハと他人事みたいに笑ってまぶたを閉じた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    IulmLk

    MOURNINGお部屋公開で没にした軟禁するふみ慧(推敲どころか完成してません。ちょい長めの妄想ツイだと思っていただければ)
    「俺の部屋から出ていって」
     ここ一ヶ月で何度も聞くこととなったその言葉の本質は何を意味しているのだろうか。
     始まりは一ヶ月前の夜だった。理解が決めた門限を過ぎても帰ってくる兆しのない猿川以外は皆夕食と入浴を済ませてリビングで寛いでいた時、ガチャッと玄関のドアが開く音が聞こえた、と思ったすぐ後にバタッと何かが倒れる音が聞こえた。何事かと依央利、理解、テラの三人が見に行くと血を流して倒れている猿川がいた。救急車を呼ぶか警察を呼ぶかと慌てふためく声に集まった天彦と大瀬を含めた住人たちを制してふみやは淡々と指示をだした。
     理解に救急車や警察への電話を止めさせ、依央利に止血用のタオルと水の用意、大瀬とテラに血で汚れた玄関の掃除、そして天彦に猿川を猿川本人の部屋ではなくふみやの部屋へと運ぶように頼んだ。一階の猿川の部屋ではなく何故わざわざ二階のふみやの部屋なのかという当然の疑問に誰も気が付かないまま、天彦によって運び込まれた猿川がそっとベッドに寝かせられる。呼吸と脈を確認して、所々切り裂かれている服を捲りあげる。無数の打撲創や切創はあるものの額からの出血がほとんどのようだった。額は傷口が浅くとも大袈裟な程に出血をする。
    3831

    recommended works