お題『おやすみ』「おやすみ、KK」
『おう、おやすみ』
眠ることがない幽霊となった相棒に対しても、暁人は必ず「おやすみ」と声をかけることにしていた。
それにこだわりがあるのをKKも何となく察していてKKも必ず「おやすみ」と返した。
眠りについた暁人を見守りながら、KKは夜が明けるのを待つ。暁人が悪夢に魘されればその原因を断つために夢に入り込むが、何も起きないに越したことはない。
人の姿をとり、暁人の横に寝転がるようにする。長い睫毛に健康的な肌、血色の良い唇をまじまじと眺める。一通り眺めたあとは半透明の手を暁人の頬にそっと添える。
『…こんな綺麗な顔してんだ。オレが戻ってこなかったら、今頃奥さんも子供もいたんだろうな』
暁人が聞いたら怒りそうなことを呟き、呟いてしまった傍から口にしたことを後悔した。
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